多機能獣車改装計画
飛空艇の試験飛行は無事に終わった。
ラインハルト陛下達からも、内装が弱い以外の指摘は特になかったから、フィールに到着してからすぐにクラフターズギルドで登録もしたし、天樹製多機能獣車用の飛空艇筐体の製作依頼も出している。
クラフターズギルドでも試作は作る必要があるから、完成までにどれぐらいかかるかは分からないが、急いでる訳じゃないし、しっかりとした物を作ってくれればそれでいい。
ラインハルト陛下達をフロートに送るついでに総本部にも報告してるから、そっちでも飛空艇が作られるんじゃないかと思う。
飛空艇に関しては、ほとんどクラフターズギルドに丸投げ状態になってきたが、できることはまだあるから、定期的に顔を出すつもりでもいる。
素材とかの問題があるからな。
空を飛ぶんだから船以上に素材は厳選しないといけないし、安全にも気を配らないといけないから、金属材は最低でも
俺達なら
あ、ウイング・クレスト用の飛空艇筐体は、金属材は
多分天帝家をはじめとした王家専用艇もそうなると思うが、そっちは依頼がきたらって感じだな。
「それなんだけどさ、天樹製の獣車って
飛空艇の試乗を終えた日の夜、本殿のリビングで突然マリーナにそんなことを言われたが、なんでまた急にそんなことを言い出した?
「急に感じるかもしれないですけど、
「マジで?」
「はい。ああ、天爵家の獣車は桜樹と
フィーナが理由を説明してくれたが、まさか天樹製多機能獣車がそんなことになってるとは思わなかった。
確かに
そしたら
「あれ?でも
「うん。お義父さんが
プリムの疑問に答えたルディアだが、だからこそ父さんはエニグマ島のニーズヘッグを倒し、
なのに
「桜樹はアーククラスの魔力も余裕を持って受け止めてくれてるし、
「そうなの?」
「詳しく調べたワケじゃないけど、素材の相性が良いとこういう事もあるよ」
それは知らなかったが、だからこそ父さんや母さんを乗せても問題無かったってことなのか。
マリーナ曰く、これはGランククラフターへの昇格試験に必ず出る内容らしいんだが、俺や真子さん、フラムにルディアはMARSや飛空艇の製作に合金の提案、多機能獣車や新魔法奏上なんかの功績があるから、Pランクまでは試験免除が決まっていて、試験勉強なんかもしていない。
だから全く知らんかったぞ。
「試験免除で昇格できるからって、勉強を疎かにしちゃダメってことね。これは私も反省しなきゃだわ」
「あたしもだなぁ」
「私もです」
俺も大いに反省しなきゃだ。
もちろん該当ランクで覚えられる技術とか技能とかは勉強してるが、それだって使いこなせる知識がなきゃ意味がないんだからな。
「で、マリーナ。
「金属材もけっこう使ってるから、全部交換ってことになると、しばらくは使えなくなるね。だけどいずれは交換しないといけないし、時間が経てば経つほど作業が大変になるから、今のうちにやっとくべきだよ」
天樹製多機能獣車に使われている
それを全部交換となると、時間がかかるっていうのはわかる話なんだが、その間使えないっていうのは厳しいな。
だけど劣化材を交換する場合、劣化具合が激しいと交換作業に支障が出るって言われてしまったら、それぐらいは我慢するしかないか。
「
「そっちの方が望ましいですけど、
「ああ、
「はい。それに
「それぐらいかなぁ」
「頑張れば30本ぐらいはいけると思いますけど、無理をすると魔力が枯渇すると思います」
エレメントクラスでも、
今のところ枯渇するまで魔力を使ったことはないが、魔力枯渇してしまうと体調を崩す原因になるし、意識を失うこともある。
特に妊婦の魔力が枯渇してしまった場合、最悪の場合流産どころか妊婦本人の命すら危ぶまれるから、臨月を迎えてるフラムに限界まで魔力を使わせるなんて、そんなことはさせられる訳がない。
「それじゃあ
「少なくとも、あたし達だけで全部できるようにならないとね」
だな。
それでも知ってる人は知ってるし、いずれは
ノーマルクラフターじゃ、魔力枯渇を覚悟して1本作れるかどうかだから、需要があっても供給が追い付かず、とんでもない高値になると思うけどな。
だからって訳じゃないが、飛空艇の筐体は
「クラフターズランクが上がってるとはいえ、経験は不足してるからな。だからこそ、お前ら4人ともP-Gランクから昇格できてねえ訳だし」
「自覚してるよ。まあ、桜樹と
「みんな忙しいしね。ああ、だから筐体の製作依頼出したのか」
マリーナの言う通りだよ。
最初は自分達で作ろうと思ってたんだが、俺は領主代理としての仕事もあるし、トラベリングも使えるから特に急いでる訳じゃない。
それに飛空艇の運航は王家からトレーダーズギルドに委託されることになると思うが、作るのはクラフターズギルドだから、第1号を俺達が使うっていうのは悪くないと思う。
いずれは
「あとは中庭ですけど、進化して大きくなった仔達も多いですし、ミラープールもありますから、かなり手狭になってきていますね」
「それなんだが、
天樹製多機能獣車のミラースペースは、俺がミラーリング50倍付与したことで、総面積は1,500平米あり、うち中庭は400平米となっている。
ただこれだと、進化したり新しく増えたりした従魔達にはかなり手狭になってきてるし、移動時の訓練にも使えない。
だからエレメントクラスの限界値になる80倍付与をして、中庭を一気に広くしておきたいと考えている。
それにルーカス達の寝室も無いから、こっちも用意したいな。
ただ問題もあって、それだと全体的に広くなるから、内装や区分けも見直す必要もでてきてしまう。
しかもミラーリングを付与し直すとなると、一度内装を全撤去しなきゃいけないから、本格的な改装になってしまい、その分時間も掛かるんだよな。
「ミラーリングの付与し直しか。面倒ではあるが、従魔の事を考えるとそうするしかないよね」
「だな。幸い、と言っていいかはわからねえが、今は天爵家の獣車もあるからな。本格的に大改装しとくのも悪くねえ」
「この際いくつかの区画に分けて、その区画ごとに付与しておいた方が良さそうですね」
「ああ、その方が良いね」
あ~、確かにそうしといた方がいいか。
ミラーリングは空間を拡張する魔法だが、普通は1つの空間にしか使わない。
その理由は費用的な問題が大きいからで、技術的にはそんなに難しいものじゃなく、実際多機能獣車も使われている。
注意すべきはミラースペース同士の干渉による空間破裂だが、しっかりと区画が仕切られていれば大丈夫だし、空間は扉でつなげられるから、付与時に細心の注意を払っておけば避けられる。
しかもミラースペースを個別で確保しておけば、今回みたいに改装を行う場合でも、そのミラースペースだけで済むっていうメリットもあるな。
「メリットも大きいし、後々何か手を加えないとは言い切れないから、そうしといた方が良さそうね」
「ええ。今日は時間が時間だし、図面とかは明日考えましょう」
「それはやっとくよ。あたしも真子も、明日は特に予定ないからね」
「それを言ったらあたしもだよ」
「じゃあ悪いけど、任せるよ」
本当ならすぐにでも考えたいんだが、既に夕食も終わってるし、明日はデセオでヒルデの補佐の予定だから、重要とはいえ獣車ばかりにかまけてる訳にはいかない。
だから図面は、ルディア、真子さん、マリーナに任せることにしよう。
「あ、大和さん。船体を飛空艇に変えるということは、天魔石もですよね?」
「うおう、忘れてた」
これで話はまとまったと思ってたが、大事なものが残ってたじゃないか。
フィアナが気付いてくれなかったら、ギリギリまで気が付かなかったかもしれない。
「おいおい、魔石は預けてこなかったのかよ?」
「完全に頭から抜けてたからな。明日……は無理だから、明後日にでも行ってくるよ」
「それなら私が行くわ。ヒーラーズギルドにも行こうと思ってたから、ついでにね」
「あ、じゃあお願いします」
申し訳なく思うが、ヒーラーズギルドに用事がある真子さんにお願いしよう。
ベストはディザスト・ドラグーンだが、さすがにそれは持ってないから、コバルディア事変で倒したA-Cランクのオーシャンハウル・グランドの魔石を使えばいいだろう。
あいつ、
それじゃあ時間も時間だし、今日はこのままお開きにしましょうかね。
明日からしばらくは天樹製多機能獣車が使えなくなるが、遠征する予定はないし、俺も時間ができたら手伝うつもりでいる。
ああ、あと試作飛空艇も改造しといた方がいいから、そっちもだ。
だけどそっちも大事だけど、数日中にプリムとフラムが出産予定だし、2週間後にはヒルデが退位するから、そっちにもしっかりと備えておかないとな。
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