メジャーリングの項目
Side・ルディア
マルカ妃殿下がレジーナ皇女殿下をご出産されてから2日、ウイング・クレストのクラフターが工芸殿に集まった。
といってもMARSや通信機が完成したとかじゃなくて、魔力と素材についての検証を行うためなんだけど。
今まではみんなの都合や予定がつかなかったから個人個人で簡単にしかできなかったんだけど、やっと今日全員の都合がついたから、本格的に検証をする事にしたんだ。
大和がエレメントヒューマンに進化してから1ヶ月以上経ってるけど、幸い装備に問題は無いみたいだから、緊急っていうワケじゃなかったのも、検証が遅れた理由かな。
「やっぱり魔力強度、硬度、魔力伝達率のいずれかが5以下だと、ハイクラスの魔力には耐えられなくなるんだと思う」
「合計値や平均値だと、境界線が曖昧になるし、最低ラインっていう意味はそっちの方が分かりやすいか」
「だけど合計値や平均値でも、判断が出来ないワケじゃないよ?」
「そうですよね。魔力強度や硬度、魔力伝達率の数値は知らない方も多いですから、逆に合計値や平均値の方が分かりやすい気もします」
「確かに一覧表とかにするなら、そっちの方がいいか。だけど小数点以下って、切り捨てられる事が多いんじゃなかったか?」
「そうなんだよねぇ……」
さっきからこんな感じで、頭の痛い議論が続けられている。
あたしもチンプンカンプンだし、フィアナとレイナはさっきから目を白黒させてるよ。
意外、って言ったら失礼だけど、フラムとクララはちゃんと勉強してるから、しっかりと話についていけてる。
別の意味で意外なのはチーフ・クラフターのエドで、数字に弱いっていうクラフターとして致命的に近い弱点があるから、時々逃げたそうな顔をしてるんだよね。
「小数点以下が切り捨てられるんなら、10倍とか100倍とかにすれば、解決しないんですか?」
「それならいっそのこと、専用の数式でも作った方が早いかもしれないわね」
「数式って言ったって、簡単に作れるようなもんじゃないでしょう?」
「簡単な、それこそ素材の魔力数値を見るだけのものにしておけば、混乱する事もないと思うわよ」
なんか真子が、難しいこと言ってるなぁ。
確かにクラフターにとっても数字は大事だし、建物とか獣車とか船とかを作る際は数式が必須なんだけど、熟練のGランククラフターだって、専攻してなかったらチンプンカンプンな代物だ。
なのにその数式を作るって……。
「簡単よ。平均値を10倍にするだけで……ほら」
「お、少数点が消えたな」
小数点が消えると、確かにスッキリしたように見える。
あ、忘れてたけど、今回あたし達が用意した金属は、平均値でまとめるとこんな感じだよ。
鉄:5
ただこれぐらいなら配分比を調整すれば、
実物が欲しかったのは間違いないけどね。
「ただ、これだと大雑把すぎるし、ハイクラスとエンシェントクラスの境も分からないのよ」
「確かに見やすくはなったけど、これじゃ7未満がハイクラスの魔力に耐えられないって事ぐらいしか分からないね」
「エレメントクラスまで加わると、さらにワケが分からなくなりますよ」
真子が悩まし気な顔をして、マリーナとフラムも追従しているけど、確かにそうかも。
合金はハイクラスどころかエンシェントクラスでも普通に使える金属だけど、平均値を見る限りじゃどこからどこまでがエンシェントクラスでも耐えられるのかとか、エレメントクラスはどうなのかとか、そういった予想が立てにくい。
それなら大和が言ってるように、3つの数値のいずれかが5以下だと、ハイクラスの魔力に耐えられないっていう方が分かりやすいよ。
「魔力耐久値については、私も大和さんに賛成ですけど、それだとダメなんですか?」
「ダメって事は無いけど、それだと魔力耐久値っていう項目が……あっ!」
「うわ……なんで気が付かなかったんだろ……」
「そうだよな。
クララの素朴な疑問に、真子、マリーナ、大和がやってしまったっていう顔をした。
あたしは何のことか分からなかったけど、大和の説明で理解出来たよ。
元々
だから武器はもちろん防具も、長くても数ヶ月、短ければ戦闘中に壊れる事が珍しくなかったし、そのせいで大量に予備の武具をストレージに収納しなきゃいけなかった。
今は合金があるからそこまでシビアじゃないけど、合金開発以前はそれが常識だったから、ハイクラスに進化すると武具の問題はすごく深刻だったって聞く。
大和やプリムも同じ理由で困ってたから、エドを巻き込んで合金を開発して、実用化にこぎつけたぐらいだ。
つまりハイクラスに進化するということは、
だから今まで、誰も魔力耐久値なんて気にした事が無かったんだ。
「えっと、もしかしてメジャーリングには、魔力耐久値っていう項目もあるって事なんですか?」
「それは見てみないと分からんが、あってもおかしくはないと思う」
「だな。早速やってみるか」
フィアナに答えた大和とエドが、早速目の前にある
メジャーリングを金属材に使う場合、調べるのは魔力強度、硬度、魔力伝達率の3つで、稀に重さが加わるぐらいかな。
必要ない項目は表示しない事も出来るから、もし魔力耐久値っていう項目があるんなら、意識すれば表示されるようになるはずだよ。
「魔力強度に硬度、魔力伝達率だけじゃなく、重量に大きさ、靭性、沸点に融点まであるのか」
「全部で10項目もあるとか、さすがに思わなかったな」
「そ、そんなにあったんですか?」
大和もエドも、項目を全て開いたみたいだけど、まさか全部で10項目もあったとは思わなかった。
「この魔力耐久値と魔力蓄積率っていうのが、関係ある気がするな」
「だな。字面から判断すれば、魔力耐久値ってのはそのまま魔力への耐久値で、魔力蓄積率ってのが魔力を蓄える数値ってとこだろう」
そうなるだろうね。
今見てるのは
もっと高いと思ってたから、ちょっとビックリだよ。
「
「合金にすると、最低でも7になるんですね。ここまで変わるんなら、金属は合金にする事が前提になってる気もします」
真子とフラムも、メジャーリングを使って確認してるけど、確かに合金は凄いよね。
魔力耐久値と魔力蓄積率は、
元々合金っていうのはそういう物だって大和は言ってたけど、それでもここまで変わるとなると、フラムの言う通り、合金にするのが正しい使い方のような気がする。
「それはそうだろうが、逆に面倒な事になってきたな」
「なんでですか?」
「魔力耐久値が低いとハイクラスの魔力に耐えられないって事だと思ってたんだが、
「あ、そっか!」
確かにそれは、すごく面倒だよね。
本当に魔力耐久値っていう項目があるとは思わなかったけど、あった以上はこれが関係してるんじゃないかとあたし達は思った。
だけど
もっと低いと思ってたんだけどなぁ。
「……よし!」
ところが、さっきから黙ってた真子が、軽くガッツポーズをとった。
いや、何してるのさ?
「これを見て。魔力強度、硬度、魔力伝達率、魔力耐久値、魔力蓄積率の合計値よ。これを2倍にするとこうなるの」
真子が紙に書き記した表を見せてもらうと、そこには
鉄:40
「なんか分かりやすい数値になってるな」
「そうなの。全ての項目を10にすると、この計算だと100になるから、目安としても使いやすいんじゃないかと思うわ」
短時間でそこまで考えてたなんて、どんな頭してるのさ。
だけどエドの言う通り、確かに分かりやすくなってるね。
「この数値で判断するなら、60以下だとハイクラスの魔力に耐えられないって事か」
「革素材や木材なんかもありますから一概には言えないですけど、とりあえずはそうなりますね」
「という事は、この数値を基準にして、ハイクラスやエンシェントクラス、エレメントクラスが使った場合はどうなるかってのを調べるって事?」
「基準も分かりやすいし、そうなるな」
ああ、そうやって調べてみるつもりなんだ。
「
「フィアナの言いたい事も分かるけど、無いものは仕方がないだろう」
「だな。それに多分、
いずれ手に入れる事が出来たら、その時にしっかりと検証してみよう。
その後あたし達は、真子の作った表を基に、金属材の検証を行った。
その結果、
数値で見ると、80がエンシェントクラスとエレメントクラスの境って事になるみたいだ。
だからハイクラスとエンシェントクラスの境は、70って事になるんだと思う。
「またビックリな結果になったな」
「ああ。
今回試した金属材の中で、
大和はウイングビット・リベレーターを新しく生成出来るようになったし、そのウイングビットも手で持つ事が出来るらしいけど、瑠璃銀刀・薄緑の方が使い慣れてるから、いざって時は使いにくいみたい。
だからこのまま
「とはいえ、この検証で確定出来た訳でもねえし、万が一が無いとも言い切れねえ。もし
「あ、それ面白そうだね!」
確かにエドの言う通り、未だ絶対に大丈夫だって分かったワケじゃない。
だから
声を上げたレイナだけじゃなく、マリーナやフィーナ、フィアナも乗り気だね。
とはいえレイナは、ハンター活動を優先してるから、クラフターズランクはCのままなんだよね。
来年開校予定のメモリア総合学校に入学させるか、それとも今のままでいくか、大和もエドもラウスも、すっごく迷ってるし。
そっちはまた今度考えるとして、
だからあたしも、
だけどその前に、
こっちも上手く行けば性能を上げる事が出来るし、もしかしたらエレメントクラスでも使えるようになるかもしれないからね。
もっともエレメントクラスに進化出来る人が、どれだけいるのかっていう話なんだけどさ。
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