予定と研究
天樹城でラインハルト陛下に、ガグン迷宮、ラオフェン迷宮の氾濫について報告中、レックスさん達オーダーがシュライエンの領主を捕らえて戻ってきた。
無駄な事に抵抗を試みたらしいが、奥さんのローズマリーさん、ミューズさん、サヤさんも同行してたから、当然のようにすぐに鎮圧して、まとめてひっ捕らえてきたらしい。
場所的にソルジャーズギルドの管轄のような気もするんだが、オーダーズギルドはソルジャーズギルドを含む他のリッターズギルドの上に立つギルドでもあるし、グランド・オーダーズマスターは頂点でもあるから、グランド・ソルジャーズマスター デルフィナさんも特に気にしていない。
ソルジャーズギルドは旧ソレムネだけじゃなくリベルター地方も管轄だから、人手不足だっていう理由もあるみたいだが。
今回のアライアンスに参加してくれたホーリー・グレイブ、ファルコンズ・ビーク、グレイシャス・リンクス、ブラック・アーミー、ワイズ・レインボー、スノー・ブロッサム、セイクリッド・バードには、褒賞金は規定通りの額になってしまったが、追加でPランク以上の魔物素材に光絹布を渡している。
光絹布はエンシェントクラスに1人1反となってしまったのが申し訳ないが、1反でも幅40センチ、長さ30メートルあるから、下着については問題無いし、普段着も2着ぐらいは仕立てられるだろう。
グランシルク・クロウラーを含むクロウラー種は、災害種インペリアル・クロウラーこそ1メートル近い大きさだが、それ以外は50センチぐらいの大きさで、1匹で上記の反物が作れるぐらいの糸が採れるから、知った時は驚いたな。
ちなみにロイヤル・クロウラーの糸で作られる王絹布は幅は同じだが、長さは40メートル、インペリアル・クロウラーの糸で作られる帝絹布は幅50センチ、長さ50メートルになる。
あと追加って訳じゃないが、エンシェントクラスに進化した人達にはマルチ・エッジによるアシスト付きで、トラベリングの習得を手伝う事も約束したら、光絹布と合わせてすげえ喜ばれた。
だからって訳でもないが、マイライト山脈のオーク狩りの指名依頼を出すことも伝えたんだが、1週間後に決行する事も決まったな。
それだけあれば休養には十分だし、光絹布を使った普段着や下着なんかも十分仕上がるから、活動しやすくなるはずだ。
「という訳で私とエリス、シエルも参加する事になった。よろしく頼む」
ところがラインハルト陛下が、突然そんな事を言いだしましたよ。
何が、という訳で、なのか問い詰めたくて仕方がない。
「あのねお兄様。何が、という訳で、よ。いきなり意味不明な事言わないでよね」
そう思ってたのは俺だけじゃなく、代表してマナが兄帝にツッコんだ。
「いや、最近は狩りに行ってないから、マルカからそろそろ行ってこいとせっつかれているんだ」
ああ、そういう事か。
マルカ妃殿下は現在妊娠8ヶ月だったはずで、お腹もけっこう大きくなってきている。
なので当然狩りは禁止なんだが、そのためにラインハルト陛下やエリス妃殿下、シエル妃殿下も狩りを自粛中だ。
だがマルカ妃殿下の妊娠が発覚してからというもの、陛下達はロクに狩りに行っていないため、マルカ妃殿下からも勘を鈍らせないようにしろと何度も言われていたらしい。
エリス妃殿下が妊娠してた際も、トライアル・ハーツに同行して月に一度程度の頻度で狩りには行ってたそうだから、今回もそうしろって事みたいだ。
「そういう事なら仕方ないか。腕や勘を鈍らせたりなんかしたら、いくらエンシェントクラスでも普通に死ぬしね」
「じゃあ陛下達は、俺達と一緒って事で?」
「すまないがそうさせてもらおう」
まあ陛下が狩りに行くのはいつもの事だし、エンシェントエルフでもあるから、純粋に戦力として頼りにさせてもらうとしますか。
「そっちはそれでいいとして、大和君」
「何でしょう?」
エリス妃殿下が何か聞きたそうな顔をしているが、何となく予想はつく。
「何でしょうじゃなくて、エレメントクラスに進化したんでしょう?」
やっぱりか。
まあ、エンシェントクラスの上があるなんて、今まで誰も考えてなかったし、そもそも進化条件と思われるレベル100オーバーに到達した人もいなかったから、興味があるのは仕方ないか。
「ええ。ルーカスに簡単に報告を頼んでたんで、ある程度はご存知ですよね?」
「後天的な翼族っていう説明がピッタリだって話は聞いてるわ。今の所、装備には支障が無さそうだって事も含めて」
確かにエレメントクラスは、プリムから話を聞いた限りだと、後天的な翼族っていう表現になる。
翼を出して魔力を流すだけで、フィジカリングもマナリングも今まで以上の強度になったし、ウイング・バーストも使えた。
ウイング・バーストは翼の数が増えるんじゃなく、一回り大きくなって、強化の度合いがさらに強くなる形だったな。
進化した事で当然魔力も増えてるし、後は実戦で慣れていけばいいだろう。
装備についても、現時点では魔力が淀むような事はないから、エレメントクラスでも合金や高ランクモンスターの素材は問題なく使えるって事になる。
もちろん絶対っていう保証は無いし、検証も必要だから、今度時間を作って、エド達にも協力を頼むつもりだ。
「進化して何が怖いかっていうと、やっぱり装備ですからね」
「そうだな。私もハイクラスに進化した時に、それを痛感したよ。だが大和君とエドが合金を開発してくれたおかげで、ハイクラスやエンシェントクラスはそこまで心配しなくてもよくなったが、エレメントクラスは全くの未知数だから、しっかりと検証しておくべきだろう」
俺がヘリオスオーブに転移してくる前に、ラインハルト陛下はハイエルフに進化してたから、武器に関しては本当に難儀していたんだよな。
今陛下が使ってるのは
「俺の予想でしかないんですけど、金属に関しては強度、硬度、魔力伝達率のいずれかが5以下だと、ハイクラス以上の魔力に耐えられないんじゃないかと思ってます。ただ真子さんやエドは、また違った考えみたいですけど」
「ほう。それは興味深いな」
俺がそう考えた理由は、武器に使う代表的な金属である鉄、
だけどエドは総合値じゃないかと思ってるし、真子さんに至っては平均値じゃないかっていう考えを持ってるから、俺達の間でも結論は出ていない。
ちゃんと検証すれば答えは出るだろうから、ちゃんと時間作らないとな。
出来れば
確か
「なかなか面倒そうだが、スカラーズギルドにとっても興味深い研究対象になりそうだな」
「そういやそうですね」
確かに研究って事になるから、スカラーズギルドに投げるってのもアリかもしれない。
いや、検証となるとハイクラスどころかエンシェントクラスも必要になるし、エレメントクラスだとどうかっていうのも調べないとだから、俺達がやるしかないか。
「大和君が関わらないといけないですから、私達がやるしかないんですけどね」
真子さんの言う通りですな。
「そっちは頑張ってくれ、としか言えないな」
「ええ。話を戻しますけど、山狩りは来週の予定です。予定って空けられるんですか?」
幸いにも依頼したユニオンは全て受けてくれたし、日取りも決まってるから、いくら陛下が参加希望でも、今更予定は変えられない。
「大丈夫だ。幸い旧ソレムネは安定してきているし、捕らえたシュライエンの領主も処罰を科す事は決まっていたからな。それでも私達は、参加するとしても3日が限度だが」
まあ、それは仕方ないよな。
今回の山狩りは1週間ほどので、マイライトの端から端まで隈なく捜索する予定だ。
今回進化した人はこれから覚えてもらうが、それ以外のエンシェントクラスは全員トラベリングを習得してるから、夜はフィールに戻り、宿泊はアルカの客殿を予定している。
移動に関しても、最初はアテナかエオスの運ぶ獣車で予定地点まで送って、後は
だから1週間でも、かなりの範囲を調べられると思う。
だけど陛下達は執務もあるから、さすがに1週間フルの参加は難しい。
旧ソレムネ地方が安定してきてるのは良い事だが、だからといって書類の数が減る訳でもないし、他の
それでも陛下はエンシェントエルフだから、3日だけであっても手伝ってくれるのは助かる。
ハンターだから報酬は必要だが、他のレイドと同じ物を用意しておくか。
陛下だからって理由で報酬無しはあり得ないしな。
そして2週間後、無事にマイライトの山狩りは終了した。
さすがに終焉種はいなかったが、それでもキング43匹、クイーン59匹、プリンス102匹、プリンセス89匹、ジャイアント・オーク414匹、グラン・オーク794匹、オーク2,043匹と、とんでもない数になってやがった。
異常種や災害種は全部が個別に集落を作ってた訳じゃなく、中には複数が生息してた集落も少なくなかったが、潰した集落の数は100近いから、マジでフィールどころかアミスターや反対側のリヒトシュテルンが危ない所だったな。
オークの数が多過ぎたから全部を見て回ることはできなかったが、一度にこれほどの数のオークが減った訳だから、しばらくはマイライトも落ち着くだろうし、定期的に様子を確認すれば大丈夫じゃないかと思う。
オークだけでこんな状態だから、参加者はほとんどがハイクラスに進化したし、エンシェントクラスへ進化した人も出た。
エリス妃殿下もそうでレベル63のエンシェントエルフに進化できたし、ウイング・クレストのルーカスとライラもそれぞれレベル65のエンシェントタイガリー、エンシェントハーピーに進化したぞ。
戦利品となる魔石は、さすがに数が数だから、ほとんど捨て値近くになってしまった。
アミスターは山が多いからなのかオークが多数生息してるし、今回の山狩りで完全に供給過多になってしまったから、これは仕方がない。
オークみたいな亜人は魔石しか素材が取れないし、だからといって放置は危険だから、頭の痛い問題になりそうだ。
他の魔物も狩ってるが、その中でも一番の大物はワイズ・レインボーが仕留めたP-Cランクのデモンズ・ドレイク、セイクリッド・バードが仕留めたP-Iランクのストーム・ファルコンだな。
ドレイクの災害種にウインド・ロックの異常種って事で討伐優先度も高いが、どちらもPランクだからエンシェントクラスが使っても問題ないから、どちらのレイドもホクホク顔だった。
そのウインド・ロックだが、ウインガー・ドレイクに襲われていた個体をアリアが助けたんだが、やたらと懐かれてしまったため、従魔契約を結ぶ事になった。
ウインド・ロックはマナが召喚契約をしているアイス・ロック、今は進化してフロスト・バードになってるが、それの亜種になるし、体長も似通っている。
そのウインド・ロック、名前はフェルクと名付けられてたな。
同族に近いからなのか、フェルクはマナの召喚獣フロスト・バードのシリウスと仲良くなってるぞ。
フェルクを見て、リディアとルディアが従魔契約への熱を再燃させた気がするが、こればっかりは相性の問題ばかりか運も絡むから、何とも言えない。
まあ、とりあえずエスメラルダ天爵領の懸念は結構払拭出来たと思うし、安全になってきたんじゃないかと思う。
しばらくはエスメラルダ天爵領だけじゃなくアマティスタ侯爵領の開発に、妊娠してるマナのために小旅行に行くのも悪くないと思ってる。
妊娠5ヶ月って事で、マナのお腹も目立ってきている。
順調に行けば年が明けてすぐが予定日になるのか?
実感が沸かないが、同時に今から緊張してきてるのが分かる。
ちゃんとした父親になれるかは分からないが、今から頑張って勉強しておこう。
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