披露宴の衣装
本日6月10日は、俺達の結婚披露宴の日だ。
主役は俺、エド、ルーカス、ラインハルト陛下、レックスさん、ダート、アイゼンさん、ヴォルフさんだが、ラウスも婚約披露って事になっている。
男でもめかし込む必要はあるんだが、俺を含むオーダーはアーク・オーダーズコートかエメラルド・オーダーズコートで済んでいる。
対照的にアイゼンさんとヴォルフさんは、この日のために仕立てたジャケットを着用だ。
天帝のラインハルト陛下は天帝っぽい衣装だし、ラウスはエメラルド・オーダーズコートを纏っているぞ。
そして当然、女性陣もめかし込んでいる。
というより、ものすごい気合の入りようだ。
俺の嫁さん達、プリム、マナ、ユーリ、ヒルデ、リカさん、ミーナ、フラム、リディア、ルディア、アテナ、アリア、真子さんは、色やデザインこそ違うが和服を意識した、いわゆる和ドレスだ。
振袖並みに袖も長く、スカートも足先まであるから歩きにくそうなんだが、それぐらいは貴族なら当たり前らしい。
素材は王絹、デザインと仕立てはサユリ様に依頼していて、この日のために丁寧に仕上げてくれたそうだ。
エドの嫁さん達、マリーナ、フィーナ、フィアナ、カメリアは、何故かチャイナドレスをチョイスしている。
確かにゲームの衣装にそんなデザインもあったが、まさかこれを選んでるとは思わなかったから驚いた。
だがそのチャイナドレス、スリットはなく、細いスカートがしっかりと足先まで伸びていたりする。
全体的にほっそりとしたデザインになってるな。
こちらは素材こそ王絹だが、仕立てたのはフィーナだったりする。
チャイナドレスはサユリ様も仕立ててなかったから、かなりの高評価をもらってたな。
ラウスの婚約者達、レベッカ、キャロル、レイナ、セラスは婚約披露って事で、ロングのワンピースドレスだ。
装飾の少ないシンプルなデザインで、胸元に花があしらわれているのが特徴か。
確かフィールのクラフターズギルドに、製作依頼を出したと言ってたな。
王絹を持ち込んだらしいが、そしたらクラフターズマスター ラベルナさんが名乗りを上げて、嬉々として仕立ててくれたんだとか。
ルーカスの嫁、ライラとクララは、ヘリオスオーブで標準的なドレスを身に纏っている。
デザインも標準的ではあるが、貴族が普段着にしてもおかしくない仕上がりらしい。
これも素材は王絹で、クララが頑張って仕立てている。
王絹なんかが使えるとは思ってなかったから、神経を擦り減らしながらの作業だったらしいが。
着替えも済み、俺達は本殿1階のロビーで待機中だ。
まだ陛下達の準備が終わってないからだが、全員揃えば中庭で披露宴という流れになっている。
だから身内や招待客は、中庭で談笑中だ。
「こういう時、男は楽だよね」
「だよねぇ」
普段ドレスなんか着る事が無いライラとルディアが、窮屈そうにしている。
何人かは同意見のようだが、慣れている王侯貴族組も同じみたいだな。
「そう言われても、としか言えないぞ」
「だよな。それにこれからも着る機会は増えるんだから、少しは慣れた方が良いんじゃないか?」
ルーカスと2人で、苦笑しながら嫁さんに応える。
地球でもそうだが、お洒落も美容も、女性の方が圧倒的にこだわるからな。
「分かってるけどさ」
王絹で仕立てられたみんなのドレスは、普段使いは無理でも、要所要所で使っていく事になる。
だからこそ王絹を使ったんだが、未成年組はサイズの微調整どころか新しく仕立て直した方が早くなるだろう。
何人かはハイクラスに進化した事で成長速度は遅くなっているが、それはそれだ。
「済まない、待たせたね」
そう言ってやって来たのは、俺と同じアーク・オーダーズコートを纏ったレックスさんと、袖の短い和ドレスを纏ったローズマリーさん、ミューズさん、サヤさんだ。
おっと、アイゼンさんとヴォルフさんも、奥さんと一緒にやってきたか。
「ウイング・クレストのドレスは派手だな。大和や真子の世界のか?」
「ええ、そうです」
とはいうが、アイゼンさんとヴォルフさんの奥さんも、プリム達より袖もスカートも短いが、似たような感じの和ドレスだったりする。
サユリ様が好んでることもあってか、アミスターだと一般的なんだよな、和ドレスって。
「袖が長いといけないって聞いてたんだけど、そんな事はないのかしら?」
「私達の国だと、袖が長い女性は独身で、結婚したら袖を詰めるのが習わしなのよ。だけど袖は長い方が派手だし綺麗だし、何よりここはヘリオスオーブだから、そこまで気にしなくてもいいかなと思ってね」
ローズマリーさんとミューズさんのドレスはサヤさんが仕立てたそうだが、サユリ様に見てもらいたかったそうで、相談はしなかったようだ。
俺も最初は留袖になると思ってたんだが、真子さんの言い分は理解できるし、ここは日本じゃないから、サユリ様もその方が良いと考えてくれたみたいだな。
「だからうちの嫁さん達やサヤ達とは、袖の長さが違うのか」
「さすがに慣習を無視しているとは、思いもしなかったわよ。私も袖を長くしたかったのに」
「ですがこちらの方が、動きやすいですよ」
「あそこまで袖が長いと、食事もしにくそうだしな」
サヤさんをフォローするローズマリーさんとミューズさんだが、それは俺も思う。
特に今回は立食パーティーだから、長い袖はそれだけで邪魔になりかねないんじゃないか?
「それは覚悟の上だし、少しぐらいなら汚れてもクリーニングで落とせるからね」
「袖の長さをどうするかは、かなり話し合ったものね」
普通の生活をしていてもたまにあるから、魔物を狩るハンターに戦闘訓練があるリッターにとっては言わずもがな。
だからクリーニングは、ハンターにとってもリッターにとっても使うのが当たり前の魔法になっている。
さらに真子さん達とアイゼンさんとヴォルフさんの奥さん達の和ドレスは、帯の部分に念動魔法を付与させた天魔石があしらわれているから、少々の事で袖が動いたりしないようにするのはもちろん、逆に袖が邪魔にならないように動かすこともできるようになっていたりする。
金かかってるが、俺達もアイゼンさん達もそれぐらいは何の問題もないぐらい稼いでいるし、逆にもっと使わないと経済的によろしくなかったりもするから、遠慮なく使った次第だ。
「あー、その手があったかぁ」
「サヤも今後も使う機会があるんだから、新しく仕立てたらいいだろう?」
「そうなんだけど……いい?」
「構わないよ」
上目遣いでおねだりするサヤさんに、快く許可を出すレックスさん。
まさにいい男の見本だな。
さりげなくローズマリーさんとミューズさんも喜んでるな。
資金はグランド・オーダーズマスターの俸禄もあるし、エンシェントクラスならイデアル連山に入れば簡単に稼げるか。
値崩れしてきたとはいえ、フェザー・ドレイクもシェル・グリズリーもまだまだ人気だしな。
「あ、大和君。ありがとう」
「何がですか?」
レックスさんから許可をもらったサヤさんが、突然お礼の言葉を口にした。
何のことか見当がつかないが、お礼を言われるような事って何かあったっけかな?
「
ああ、
レックスさんと結婚したって事は俺の義理の姉になる訳だし、レックスさん、ローズマリーさん、ミューズさんには
槍かインゴットかは悩んだからサユリ様に相談したが、サヤさんなら問題ないとお墨付きが出たから、今回はインゴットのままにさせてもらったんだよな。
「それがサヤさんの打った槍ですか」
「ええ。まあ、デザインは行軍中に大和君に見せてもらったやつだけどね。だから気合入れて作ったの」
サヤさんが槍をストレージから取り出して見せてくれたが、サヤさんの新しい槍はいわゆるトライデントだ。
だが中央の穂先は長く鋭く、両側の穂先はそれぞれ斧だったり鎌だったりと、ハルバードの要素も取り入れられている。
基本形がトライデントだから、両の穂先もしっかりと刺突に使えるぞ。
銘はバスター・トライデントというらしい。
カッコいいが、もうちょい女性っぽい銘にしても良かったんじゃないかと思わなくもない。
「あたしのスカーレット・ウイングに、ちょっと似てるわね」
「本当ね。でも鎌としても斧としても使えるワケだから、スカーレット・ウイングより使うのが難しそうだわ」
「そこは慣れですね」
既に試し斬りどころか、本格的な狩りもして使い勝手を確かめているそうだ。
もう少し慣れは必要だが、今まで使っていたのは普通のスピアと呼ばれる槍だから、出来る事が増えたってサヤさんはご機嫌だな。
「それがサヤの新しい槍か。面白い形状だな」
サヤさんの槍を見せてもらっていると、ラインハルト陛下達もやってきた。
シエル妃殿下のみならず、エリス妃殿下とマルカ妃殿下も一緒だ。
「お兄様も準備が出来たのね」
「ああ。マルカはお腹が目立ってきているから、出来れば大人しくしておいて欲しかったんだがな」
「こんな楽しそうな催しに参加出来ないなんて、そっちの方がストレス溜まるからね」
マルカ妃殿下は、妊娠6ヶ月になる。
だからお腹も分かるほど大きくなってるし、ドレスも妊婦用の非常にゆったりしたデザインのものを着てるんだが、それでもこんな催しには出席ないでほしかったっていうのは俺達も同意だ。
だけどストレスは母体にも悪影響しか及ぼさないから、マルカ妃殿下のために本殿近くに席を設け、体調が優れないようならすぐに退場出来る手筈を整えている。
「今回はシエルが主役だから、マルカの事は私が見ておくわ」
皇妃としての正装に身を包んだエリス妃殿下が、マルカ妃殿下の世話を請け負ってくれた。
とはいえ、さすがにエリス妃殿下に全部任せる訳にはいかないから、うちからもエオスとルミナさんを付ける事になっている。
ルミナさんは皇妃殿下のお世話を専属でする事に驚いていたが、既に面識はあるし、マルカ妃殿下もルミナさんもハンターだから、多分大丈夫だろう。
あ、皇妃の正装は、サユリ様がデザインした豪華な和ドレスだぞ。
ラインハルト陛下も含めて王絹を使って仕立ててるし、袖も振袖並みに長い。
上半身は振袖で、下半身がドレスっていう感じが近いか。
「凄く緊張してきました……」
「内輪の披露宴みたいなものだから、力を抜いて楽しめば良いさ」
エリス妃殿下と同じく皇妃の正装に身を包んだシエル妃殿下が、ガチガチに緊張している。
シエル妃殿下はリヒトシュテルン大公家の公女だから、この手の催しは慣れてると思ってたんだが、結婚披露だから緊張してるらしい。
まあ、内輪といっても各国の王族が参列してるから、気持ちは俺もよく分かる。
実際、何人かはガチガチだし、巻き込まれたようなもんのアイゼンさんとヴォルフさんの奥さんは、今にも倒れそうだからな。
「今後、これほどの規模の結婚披露宴は無いだろう。まさに、一生に一度だな」
「ホントね。あ、大和。MARSは?」
「ストレージに入れてある。ただ中庭じゃ狭いから、やるなら日ノ本屋敷の外でだな」
「それもそうね」
今回の結婚披露宴では、俺達が開発中のMARSも目玉の1つになっている。
高ランクハンターでもそうそうお目にかかれないような高ランクモンスターを、幻影とはいえ見られるという事で、楽しみにしてる人達も多い。
だが高ランクモンスターは図体のデカいのも多いから、広い日ノ本屋敷の中庭といえど、さすがに厳しいものがある。
だから日ノ本屋敷の前に広がっている広場で、お披露目を行う予定だ。
とはいえまだ未完成だから、早く完成できるように頑張らないとだが。
「いつまでもここにいても仕方がない。そろそろ行こうか」
「そうですね」
MARSもだが、今日は俺達の結婚披露宴だからな。
出て行く順番は、ここの主が俺だからって事で、俺が最初になる。
その後でエド、ラウス、ルーカス、アイゼンさん、ヴォルフさん、ダート、レックスさんと続いて、最後にラインハルト陛下だ。
レックスさんはもう少し早くても良いと思うんだが、こういう場合は主催者を除くと身分が高い人は後になるそうだ。
ウイング・クレストは主催兼会場提供って事で一番最初、その次がハンターのリリー・ウィッシュ、そしてサブ・オーダーズマスターにグランド・オーダーズマスター、最後が天帝になるんだと。
俺的には、一番最初はラインハルト陛下だと思ってたのに、まさかの俺が先頭って事だから、ちょっと緊張してきた。
だけど俺が行かないと始まらないから、覚悟を決めて本殿入口に向かう事にした。
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