披露宴前日
Side・マナ
本日は6月9日。
明日の披露宴を控えて、アルカにある日ノ本屋敷には続々と招待客が集まっている。
ここまで長かったわね。
大和とプリムが結婚したのは去年の7月23日で、丁度1ヶ月後の8月23日に私とミーナ、フラムが結婚したから、披露宴を催すまで1年近くもかかった事になるわ。
最初は私達との結婚後に行う予定だったんだけど、
その間にリカ、ヒルデ姉様、リディア、ルディア、真子も正式に結婚したし、8月にはアテナも結婚するから、この時期っていうのは悪くないんだけど、それでも時間が掛かったのは間違いない。
ウイング・クレストのメンバーでチーフ・クラフターとなっているエドも、幼馴染のマリーナ、元奴隷のフィーナ、リベルター期待のルーキー・ハンター カメリアと結婚し、フィーナの妹フィアナとも婚約している。
ノーブル・オーダーとなったルーカスも、ミーナと同期のオーダー ライラと結婚したし、プラダ村出身のクラフター クララとも婚約したわね。
ラウスはまだ未成年だから、今回は婚約披露宴という形になるわ。
さらにお兄様も天帝として即位すると同時にシエルお義姉様と結婚し、レックスもグランド・オーダーズマスターに就任してローズマリー、ミューズ、サヤとも結婚したから、せっかくだからって事で合同で披露宴を催す事になった。
サヤはリリー・ウィッシュのリーダーだったけど、レックスと結婚した事で脱退しているわ。
レックスはそのまま在籍する事を薦めていたんだけど、グランド・オーダーズマスターが特定のレイドと親密になるのは問題だからって、サヤはリリー・ウィッシュのメンバーを説き伏せたそうよ。
だからってワケじゃないけど、リリー・ウィッシュの新リーダーとなったエンシェントドワーフのアイゼンと、同じくリリー・ウィッシュのメンバーでハイウルフィーのヴォルフも新婚だから、披露宴に参加が決まったわ。
そしてメモリアからも、サブ・オーダーズマスターのダートが、新婚という事で参加する。
去年の夏に行われた、マイライトのオーク集落掃討戦に参加した縁もあるけど、メモリアはリカが治めているアマティスタ侯爵領領都でもあるから、領主との関係が良好である事を示す意味もあるわ。
「バトラーを緊急で雇ったが、正解だったな」
「本当にね。前日から来る人がいるのは分かってたけど、それでもとんでもない人数だもの。さすがにホムンクルスを含めても、16人じゃ足りないわ」
ウイング・クレストが正式に契約しているバトラーは、アルカを管理する7人のホムンクルスやヒルデ姉様付きのミレイを含めても16人だから、今回の招待客をもてなすには人数が足りない。
お兄様もそれを理解していたから、フロートのバトラーを手配してくれたんだけど、それでも契約出来たバトラーは30人程だから、これでも不足している。
だから昨日、フィールやメモリアはもちろん、ベスティアやドラグニア、グラシオンにまで足を運んで、追加で50人以上と契約して派遣してもらったの。
「客殿は大丈夫なの?」
「ああ。小峰殿はマリサさんが、金烏殿はルミナさんが指示を出してくれてる。エオスは本殿だな」
小峰殿は西の、金烏殿は東の客殿で、それぞれ3階建て。
部屋はいくつか種類があって、2棟合わせて60部屋あるんだけど、それでも全ての部屋が埋まるとは思わなかったわ。
招待客は厳選したとはいえ、どうしても招待しなきゃいけない人達も多いから、選別は大変だったわね。
本殿は、私達が招待した人達にリリー・ウィッシュ、アミスター、トラレンシア、バレンティア、アレグリアの王族が宿泊している。
本殿2階にある客室は、この日のためにペントハウスへと改装したから、部屋数が減っているのよね。
宿泊は客殿があるけど、天帝と三王が同時に宿泊出来るように用意したわ。
絶対に天帝や三王しか泊めないワケじゃないけどさ。
客殿にも10部屋ずつ用意したんだけど、そのせいで部屋数が減ってるのが問題ね。
まあ、今後こんな数の人を招待する事はないだろうけど。
「ただいま」
「おかえり、プリム。ライアー大公は?」
「予定通り案内したわよ」
「分かった、ありがとう」
ライアー大公も到着か。
という事は、これで宿泊予定の招待客は揃ったわね。
各国の王族は、全てが前日入りしている。
とはいえトラレンシアは女王のヒルデ姉様が主役側だから、客室を使ってるのは妹のヒルドだし、ヴァルトもネージュ様が大和の子を産むから、今回客室は使われていないけど。
ちなみに天帝用に用意した部屋には、お父様とお母様達が宿泊していたりする。
同じく主役側になるリリー・ウィッシュは、本殿1階の客間を使ってもらってるわ。
アイゼンとヴォルフは、奥さんと一緒に2階の部屋ね。
レックス達とダート達はまだ来てないけど、オーダーの仕事があるから仕方がない。
終わったら迎えに行くけど、こちらも新婚だから、本殿3階の部屋に泊まってもらう予定よ。
「後はみんなの家族だけど、そっちはどうなの?」
「エド達の家族は深志殿、ルーカス達の家族は白鷺殿でのんびりしてしてるよ。アルフレッドさん達は、工芸殿に籠ってるけどな」
あー、グランド・クラフターズマスター アルフレッド殿かぁ。
奥方のエアリス殿、キャサリン殿もクラフターだし、工芸殿の設備はフロートのクラフターズギルド総本部を超えてるから、目の色ぐらいは変えてもおかしくないわね。
大和が金に糸目を付けず、設備を整えたっていう理由もあるけども。
「大公家は、金鯱殿だったわよね?」
「ラウス君の事があるからね」
リヒトシュテルン大公家は、シエルお義姉様がお兄様と結婚し、セラスがラウスと婚約した事もあって、今回は招待側じゃなく接待側になる。
だから客殿じゃなく、ラウス達が暮らしている金鯱殿の一室が割り振られているわ。
「あと、湯殿が大人気だな。特に女性客から、定期的に開放してくれないかっていう嘆願が来てる」
「ああ、でしょうね」
客殿にはお風呂がないから、宿泊している人達は必然的に湯殿を利用する。
その湯殿は、大和と真子の故郷を模した露天風呂になってるし、滝風呂やジャグジーなんかもあって、泉質も美肌効果があるから、女性ならいつでも入りたい。
「とはいえ、開放するつもりはないんだよな。そんな事したら、アルカが避暑地どころか観光地になって、常に人で溢れちまう」
「ウイング・クレストの拠点だし、変な輩が紛れ込む可能性も高くなるしね」
アルカは一般開放しない。
これはここを拠点にした時に決めている。
アルカは私達ウイング・クレストの拠点だけど、同時にヘリオスオーブにはない物もいくつか存在しているから、それを狙って有象無象が入り込むと、非常に面倒な事になりかねないから。
特にゲート・クリスタルやゲート・ストーンは、悪人の手に渡すワケにはいかないわ。
「今回は、招待客全員の身元がしっかりしてるからな。だからアルカで披露宴っていう手が取れたんだ」
「そうよね。避暑地とか観光地とかになったら、不特定多数が来る事になるわ。しかもアルカには隠れられる所も多いから、良からぬ事を企む連中が入り込んでも、こっちは気づけない可能性も出てくる。一般開放は無理ね」
王族貴族でも、王族はともかく貴族は私達を快く思っていない所もあるから、そういった貴族は招待するつもりもないわね。
「なら、改めて明日、そう伝えた方が良いわね。あと湯殿が気に入ってるワケだから、フィールかプラダ村にそういった施設でも作ってもいいかもしれないわね」
「それはアリだな」
ヘリオスオーブにも温泉街はあるから、湯殿に入れない事を残念がるぐらいで済むでしょう。
それよりも、フィールには貴族の別邸があるから、フィールかプラダ村に湯殿みたいな感じの大浴場でも建設して、泉質を変える魔導具を設置すれば、エスメラルダ天爵領の収入になるんじゃないかしら?
貴族なら自分の屋敷とかに作れるけど、旅先だとまた違った感じになるから、そこは大丈夫だと思いたいわ。
「それにしても、ここまでアルカが賑やかになったのは初めてね」
「あー、確かに。普段は俺達しかいないからな」
確かにそうね。
アルカは広いけど、使っているのはウイング・クレストだけだから、普段は30人ぐらいしかいない。
なのに今夜は、明日の披露宴に招待した人達が宿泊しているわ。
「本殿にアイヴァー様ご夫妻、ブリュンヒルド殿下とアルベルトさん一家、バレンティア竜王家にアレグリア獣王家」
「小峰殿は獣公家とアミスター公爵家、グランド・マスターね」
「金烏殿に橋公家とグランド・リッターズマスター方ですか。ペントハウスは、もう少し用意しても良かったかもしれませんね」
「だなぁ」
客殿のペントハウスに宿泊しているのは、ヴァルトを除く4つの獣公家と8つの橋公家、アミスターの2つの公爵家だから、6部屋余ってはいる。
だからってワケじゃないけど、その6部屋には、ハンター、トレーダー、ヒーラー、プリスターのグランド・マスターに泊っていただく事にした。
ウィルネス山から招待したガイア様にも、この部屋を使っていただいているわ。
残り1部屋だけど、ここにはソレムネでヒルデ姉様の補佐を務めているヴィンセント・ゴルトシュティアを家族で招待している。
グランド・リッターズマスター達には、金烏殿3階に用意した部屋に入ってもらったわ。
「アライアンスに参加したハンターとかエド達の友人とかも客殿だけど、そっちは大丈夫なの?」
「ハンターはお偉いさんと会う事も多いから、問題ないみたいだな。エドやルーカスの友達達は、緊張してるみたいだが」
「そりゃそうでしょ」
それは仕方ないわよね。
とはいえ、王族の参加者が増えたからって友人枠を減らすワケにはいかないし、その点は悪いことをしたと思うわ。
だけど宿泊のための客殿だから、王族だろうと一般人だろうと、纏めて客殿に泊ってもらうしかないのよ。
本殿にはいくつかペントハウスを用意したけど、それだって客殿が足りなくなるかもしれなかったから、そのために改装しただけなんだしね。
「今夜と明日だけなんだし、我慢してもらいましょう」
「だな」
明日はお酒も振る舞われるから、どうしても帰らなきゃならない人以外はもう1泊する予定。
リッターはほとんど帰るけど、王族は泊まるっていう人が多いわね。
連邦天帝国建国から2ヶ月近く経つから、今まで忙しかった分の休暇も兼ねてるのよ。
緊急事態に備えるために、首都のヘッド・バトラーズマスターにゲート・クリスタルを貸しているから、何かあったらバトラーズマスターがやってくる手筈になってるわ。
「料理の方は、どうなっているんですか?」
「そっちも大丈夫だ。PランクとかMランクの調理師が派遣されてきてるし、Aランクも2人いるからな。さっき厨房を覗いてみたが、高ランクモンスターの食材が多いから、みんなテンション上がってたぞ」
自分で狩ってきたからっていう理由もあるけど、私達はほとんど毎日、高ランクモンスターの食材で作られた料理を食べている。
だから感覚が麻痺してきてたんだけど、普通ならSランクモンスターの食材でも高級品。
いえ、最近はSランクは普通に狩られだしたし、Gランクも多くなってきたらしいから、値下がりはしているみたいね。
それでもPランクモンスターは簡単に狩れないから、市場にはほとんど流通していない。
なのにアルカには山のようにあるから、高級食材を使いたい調理師からしたら夢のような環境よね。
「うちに雇われたいって人もいたけど、店があるからな。報酬にいくつか食材を渡す事で勘弁してもらってるよ」
「それも元々の契約だしね」
何度か延期された披露宴だから、バトラーも調理師も、依頼料は2割程割増になっている。
やむを得なかったとはいえ、こちらの都合で振り回していたのも間違いないから、今回の依頼は提示された依頼料の他に、高ランクモンスターの食材と上絹布を用意した。
自分達で使うにしろ売るにしろ、追加報酬としては破格だから、かなり喜ばれたわ。
食材に関しては、調理師は自分達で使う気満々だったけど。
だから明日の料理は、調理師達が気合を入れて準備してくれているのよ。
私達も楽しみにしているわ。
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