大海原の階層
Side・エドワード
俺達ウイング・クレストは、昨日からクラテル迷宮に入っている。
大和達が第1階層と第2階層の調査をあらかた終わらせ、第3階層と第4階層にまで踏み込んでるためか、ハンターには情報が共有されていて、それなりにハンターの数が多かったな。
それでもクラテルのハンターズギルドで聞いた話じゃ、第3階層に入るハンターは少ないらしいが。
まあアマゾネス・クイーンなんて、合金使ってるハイクラスでも敬遠する相手だわな。
その代わりって訳じゃないが、第2階層のサウルス種は、連合軍に参加したハイハンターなら倒せるようで、それなりの数が討伐されてるらしい。
今回俺達は、ちゃんと調査もするが、目的は高ランクモンスターの素材だ。
入る前にラインハルト陛下から、宝冠や王権には
ウイング・クレストは好き放題使ってるが、これは大和が提案して俺が開発したから、いわゆる開発者特権ってやつになる。
製法はクラフターズギルド総本部が秘匿しているため、総本部であっても作れるクラフターは一握りもいない。
さらに製作前に
ただ
だが
というか産出量が少ないだけで、
ああ、アミスターにある
元々は鉄鉱山なんだが、5年ぐらい前に新しく掘った坑道から
まあ鉄1トンに対して、
それはともかくとしてだ、
特にアミスターとトラレンシア、グランレーヴェ橋公国っていう新国家は星球儀を希望してるみたいだから、魔石だって必要だからな。
だから俺達は、第3階層まではスルーして、第4階層を探索中だ。
「……な~んにも見えないね」
「見えないですねぇ」
探索中って言っても、まだセーフ・エリアからは出てねえんだけどな。
なにせ第4階層は、大和達が言ってたようにマジで海で、しかも第3階層からの階動陣があった島以外、陸地が一切見当たらねえ。
「セーフ・エリアでさえ陸地は無かったもんね。まさか海の上まで伸びてる柱みたいなのが起点になってセーフ・エリアを形成してたなんて、さすがに思わなかったわ」
「同感だな」
昨夜は第4階層のセーフ・エリアで一夜明かしたんだが、真子の言う通り陸地なんてものは一切なく、海の中から直系3メートル程の柱が伸びてて、それを中心に、だいたい直系100メートル程の真円状のセーフ・エリアが作られてやがった。
大和とフラムが潜ってみたが、20メートルぐらい潜っても底は見えなかったとも言ってたぞ。
「『マッピング』。一応半分近くは埋まってるな」
「ホントね。というかこの階層、やけに広くない?」
「広いですね。幸いというか、太陽は南にあるようですから、本当に当てもなく彷徨う事にならなくて済んでますけど、下手をしたらこの階層を越えるだけで何日掛かるか分かりませんよ?」
俺も大和のマッピングは見せてもらったが、どうやら第3階層からの階動陣は北側にあったらしい。
俺達はそこから南東側に進み、南東に1ヶ所と南に1ヶ所セーフ・エリアを見つけたんだが、まだ西側や中央付近には行っていない。
本来船に乗るなら、方角を知るために星を読む必要がある。
だが船に関しては素人の俺達が星を読むなんて真似は、当たり前だが出来る訳がねえ。
なのに迷わずに進めた理由は、太陽が真南から動かねえからだ。
当たり前だが、太陽は東から登って西に沈む。
だが
一応外の時間と連動してるようで、夕方になると光が弱くなり、夜になると完全に消え、朝になるとまた光だし、昼間が一番強くなる。
これは月や星も同じだが、こっちは太陽とは逆に夜になると光り出すな。
固定されてる位置は、階層によって微妙に異なるみてえだ。
この第4階層の太陽は真南にあるから、太陽の位置をしっかりと把握しておけば、素人でも何とかなるもんだと思ったよ。
「第5階層への階動陣が判明すれば、狩りをするハンター以外はスルーされるだろうな」
「狩りをするハンターって少なさそうだけどね」
「違いない」
なんてことを大和とマリーナが言ってるが、海に潜って狩りをするなんて、ハイウンディーネや水竜のハイドラゴニュート、ハイドラゴニアンでも滅多にやらないって話だからな。
しかもここに出てくるのはGランクモンスターが多いから、主力となるそいつらがいなかったらスルー推奨になってもおかしくねえ。
「魔物が偏ってるから、下の階層によってはあたし達もスルーでしょうね」
「だね。大和や真子でも、30分潜ったらしばらくは控えないといけないんだから、フラムの負担が大きすぎるよ」
その問題もあったな。
大和や真子が水中戦に使ってるオゾン・ボールっていう刻印術は、長時間使うと死ぬ危険性があるらしく、最長でも30分、無理をしても40分が限界らしい。
しかも再使用には1時間や2時間は空けなきゃいけないらしく、こんな階層じゃ使い勝手が悪いとも口にしていた。
だがフラムはエンシェントウンディーネだから、人化魔法を解けば水の中でも呼吸が可能になるし、大和達と違って限界時間もない。
だからここはフラムの独壇場に近いんだが、その分フラムには負担を強いてるから、ここで狩りをし続けるのは問題だ。
フラム1人じゃ対処しきれない魔物が出てきたりしても、援護もままならねえからな。
「階動陣がどうなってるかは分からないが、さすがに中央にあるって事は無いんじゃないか?」
「無いでしょうね。かといって北側にあるとも考えにくいから、やっぱり南西かしら?」
「それが一番可能性が高いですよね」
朝飯も終わったし、これから先に進もうってとこなんだが、階動陣がどこにあるか分からない以上、予想を立てて動くしかない。
他の階層でも同じなんだが、ここは海って事もあるからより慎重に行かねえと、
「海だから目印は無いけど、とりあえずは南東にあったセーフ・エリアと対照的な位置になる場所を目指してみる?」
「それが無難ですね」
「そうね。もしかしたら見当違いのとこにあるかもしれないけど、最初の目的地を決めないと動けないわ」
そうなるよな。
指針も決まった事だし、そろそろ行くとするか。
ハイドロ・エンジンを起動させ、船体を真子が言った、南東のセーフ・エリアの対になる地点に向かって進める。
海だけあって魔物との遭遇率は高くないが、GランクはもちろんPランクも出てくるようになってやがるようで、討伐難易度はかなり高い。
これもこの階層が敬遠される理由になるだろうな。
「南東のセーフ・エリアから野営したセーフ・エリアまでは2時間少々。目的地までもそれぐらいはかかるだろうから、しばらくは大変ね」
「海の中は警戒しようもないからな」
確かに何時間も全方位はもちろん、海の中まで警戒となると神経がすり減って仕方がねえ。
「来たわよ。あれは……キラー・ホエールか」
「またかよ」
面倒くさそうに言う大和だが、確かにキラー・ホエールは昨日も6匹狩ってるから、いらんって訳じゃないが特に必要って訳でもない。
「面倒だけど、船には上げられないし、とっとと狩るわよ」
「そうですね」
「では私が行きます」
今度はリディアが行くか。
エンシェントクラスに進化した事で、リディアは
さらに
実際適正のある
確か
氷、土、水複合だからなのか知らんが、リディアは左右両方の剣で使ってやがったから、P-Rランクのキラー・ホエールが可哀そうになるぐらいあっさり仕留められてやがる。
「終わりました」
「じゃあ回収しますね」
ミーナが念動魔法を使って、インベントリに収納した。
ああ、インベントリには自分のストレージを経由しなきゃ収納出来ないが、狩った魔物やユニオン共有資産なんかはすぐにインベントリに入れるようにっていうルールを作ったから、俺達の間じゃこれで通ってるし、他のレイドとかもそんな感じで使ってる。
入れたかどうかはステータリングを見れば確認出来るから誤魔化しも効かないし、する意味もないしな。
「この階層ってGランクが多いけど、Pランクもけっこう出てくるわね」
「しかも異常種も多いです。一面が海という戦いにくい階層ですから、陸に上げるっていう手段も使えませんね」
だな。
海に限らず、水棲の魔物は陸に上げてしまえば1つ下のランク相当になると言われている。
だがこの階層の陸地は、確認した限りでは第3階層からの階動陣がある小島のみで、しかもセーフ・エリアだから、実質的には無い。
船の上に上げてしまってもいいんだが、何十メートルもある大型の魔物も多いから、そんな事をしたら船が沈むだけだ。
だから、ランク以上に手強く感じるだろうな。
「今回もシー・サーペントやグレートブレード・フィッシュを狩りましたし、エラスモサウルスまで出てきましたよね」
ああ、2匹だけだがいたな。
エラスモサウルスはプリオサウルスっていうサウルス種の異常種で、フラムが挙げた魔物と同じP-Iランクになる。
体長は10メートルもないんだが、動きが素早い上にヒレが刃みたいになってるし、長い首や尻尾を鞭みたいにしてきやがる。
さらに水属性のブレスまで吐いてきやがったから、生半可な実力じゃ倒すどころか逃げる事も難しい。
他にも新顔の魔物はいたが、Pランク以上の魔物はこれらだけだったな。
「第3階層じゃアマゾネス・クイーンがいたが、第4階層にはいないのかもしれないな」
「かもしれないわね。もう少し滞在してればフォートレス・ホエールぐらいは出てくるかもしれないけど」
ああ、M-Iランクのあいつか。
ソルプレッサ迷宮で大和とプリムがあっさり狩ってやがったから印象が薄いが、ファング・ホエールの異常種でMランクだったんだよな。
この多機能獣車にも幌として使われてるが、すっかり忘れてたぜ。
100メートル近い、バカでかいクジラだったか?
そのフォートレス・ホエールは出て来なかったが、その後も数匹の魔物を狩り、目的地に到着した。
そこは予想通りセーフ・エリアになってたが、驚いた事に小島でもあった。
中央には階動陣もあったから、ここが第5階層への入口だろう。
1日ぶりに船を下りた俺達は、少し休憩をしてから第5階層へと足を踏み入れる事にした。
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