第3回国際会議

Side・ヒルデ


 本日は3回目の国際会議サミットの日です。

 ウイング・クレストの皆さんは、全員でクラテル迷宮に行かれていますから、今回は不参加です。

 ラウス君やレベッカちゃんはレベルが上がってしまうとエンシェントクラスに進化してしまう可能性が高いのですが、それでもクラテル迷宮は見てみたいと言っていましたし、エドワードさん達も珍しい魔物素材が手に入るからという事で、参加を希望されていました。

 加入したばかりのリヒトシュテルン大公令嬢セラス様が青い顔をされていましたが、お気持ちはわたくしもよく分かります。

 わたくしはソレムネの統治もありますし、本日の国際会議サミットに参加しないワケには参りませんから、残念ですがリカ侯爵とともにアルカでお留守番となっております。

 リカ侯爵は領代としてフィールに詰めておられますから、国際会議サミットへの参加予定はないのですが。


 今回の国際会議サミットに参加される主だった方々は、このようになっています。


 アミスター王国

  国王 ラインハルト・レイ・アミスター

  宰相 ラライナ・ペルレール

  公爵 セシリア・テュルキス

  公爵 アルジャン・モントシュタイン


 トラレンシア妖王国

  妖女王 ヒルデガルド・ミナト・トラレンシア

  王太子 ブリュンヒルド・ミナト・トラレンシア

  宰相 エルバ・ヴェルデ


 バレンティア竜国

  竜王 フォリアス・ドラグール・バレンティア

  公爵 ブリッツ・ウロボロス

  公爵 ヘルトライヒ・リンドヴルム


 アレグリア公国

  公王 グレイス・アレグリア

  王太子 グリシナ・アレグリア

  宰相 リモーネ・アルジェント


 バリエンテ連合王国

  獣王 ギムノス・バジリウス・バリエンテ

  王子 ティグル・バジリウス・バリエンテ

  王爵 ネージュ・オヴェスト

  王爵 リヴィエール・ロッドピース

  公爵 ベラノ・アルディリア

  公爵 ポラリス・グランシャリオ


 リベルター連邦

  大公 ライアー・リヒトシュテルン

  大公子 アドライン・リヒトシュテルン

  デネブライト代表 ウルス・デネブライト

  ヴァーゲンバッハ代表 カタリーナ・ヴァーゲンバッハ

  グランレーヴェ代表 アイスリヒト・グランレーヴェ

  パルセノス代表 ミナス・パルセノス

  ペイシェス代表 ニコラス・ペイシェス

  アクアーリオ代表 イザベラ・アクアーリオ

  ジェミオス代表 リンゼ・ジェミオス


 他にも書記を務める文官や護衛の武官も多数来訪していますし、グランド・マスター方もお越しになられていますから、警備をしているオーダーを合わせますと、大会議室には100名近い数の人で溢れかえりそうになっています。


「では始めさせてもらおう。既に独立する国名や王位については伝わっていると思う。これで決定しても構わないのかを、特に王位に就かれる方々には改めて伺いたい」


 まずは独立するリベルター方面の8ヶ国とバリエンテ方面の5ヶ国からですか。

 いえ、国名もですが、王位についても無視は出来ない問題ですし、その王位に就かれる方が全員おられるのですから、この機会に確認しておく事は当然ですね。


「誰からも問題無しという事なので、国名、並びに王位は決定とする。独立は私の戴冠式に合わせてとなるが、そちらについては?」

「さすがに天帝陛下と同じ日に戴冠は問題ですから、日を改めた方がよろしいでしょう」

「そうですね。ですが早い方が良いですから、陛下の戴冠式から1週間を目途に、各々が質素な戴冠式を行う形が望ましいかと」


 ライアー大公とネージュ王爵の意見は、至極もっともですね。

 王位を示す宝冠については、クラフターズギルド総本部が用意し、プリスターズギルド総本部が祝福を施し、その上で各国の首都となる都市にあるプリスターズギルドのヘッド・プリスターズマスターが戴冠を行うべきでしょう。

 その際にトラレンシア、バレンティア、アレグリアの王冠も、新しくなる予定です。

 わたくしとしては妹のヒルドに戴冠してもらいたいのですが、トラレンシアの女王はわたくしですから、冠を頂く期間が短かろうと、その時はわたくしもベスティアに帰還し、簡素な戴冠式を執り行わなければならないのです。


「既にクラフターズギルド総本部は総力を挙げて、帝冠、王冠、宝冠の製作を行っております。グランド・プリスターズマスターも、いつでも祝福を行えるご用意を整えられておられます。王権も同様ですから、戴冠式は滞りなく行えるものと思われます」


 アミスター宰相のラライナ様が、帝冠と王冠、宝冠の進捗状況を説明してくださいました。

 帝冠は天帝として即位されるライ兄様が、王冠はトラレンシア、バレンティア、アレグリアの王が、宝冠は新たに独立する13の小国が頂く冠になります。

 王権は各国で形状が異なりますが、素材は共に瑠璃色銀ルリイロカネを用いる事になりました。

 王権は冠以外で王位を示すための物ですが、なるべく各国で同じ物にならないように配慮されていますから、このような形に纏まりました。


 アミスター天帝国 王錫と華美な装飾を施した片手直剣、天寿を模した星球儀

 トラレンシア妖王国 大鎌クイーンズ・シックルと華美な装飾を施した星球儀

 バレンティア竜王国 竜を模した両刃槍とガントレット

 アレグリア獣王国 獅子を模した盾と華美な装飾を施した刃を仕込んだ王錫

 リヒトシュテルン大公国 装飾を施した片手直剣

 デネブライト橋公国 装飾を施した大斧

 ヴァーゲンバッハ橋公国 装飾を施した弓

 グランレーヴェ橋公国 翼を模した星球儀

 パルセノス橋公国 装飾を施した大剣

 ペイシェス橋公国 装飾を施した槍

 アクア―リオ橋公国 装飾を施した多節剣

 ジェミオス橋公国 装飾を施した双剣

 ヴァルト獣公国 獣族6種族をモチーフにした多節剣

 シュタイルハング獣公国 獣族6種族をモチーフにした双剣

 ブルーメ獣公国 獣族6種族をモチーフにした片手直剣

 フリューゲル獣公国 獣族6種族をモチーフにした大斧

 ホルン獣公国 獣族6種族をモチーフにした槍


 頂く冠によって、王権の数にも差を設けています。

 トラレンシアのみ以前からの王権である大鎌クイーンズ・シックルを継続させて頂く事になりましたが、クイーンズ・シックルは王祖エリエール様愛用の大鎌ですし、スリュム・ロードと戦うために代々受け継がれてきた物でもありますから、各国の皆様も当然のように受け入れて下さいました。

 他の国では、バリエンテが聖剣ホーリネス・ブレスを所有していましたが、その聖剣は既にプリムに譲られています。

 ですからバレンティアやアレグリアも、新たな王権を受け入れて下さったのです。

 実はウイング・クレストがクラテル迷宮に向かわれた理由の1つに、王権に使うための高ランクモンスター素材を手に入れるためという目的もあったりします。

 それから国名ですが、バレンティアも竜国から竜王国へ、アレグリアも公国から獣王国へと変わる事になりました。

 特にアレグリアは、王位も獣王となります。

 アレグリア公王も代々獣族なのですが、その事を思い出されたギムノス陛下が提案され、グレイス陛下も獣王という王位が消えることを惜しんだために、アレグリア公王家が受け継ぐ事に決まったのです。

 小国の大公位が、客人まれびとの世界では大公爵を意味する言葉だという事も決め手でしたね。

 あとはマントですが、こちらは天帝は真紅、三王は紅色、三公は朱色を用い、国章が刺繍される事になっています。


「順調か。良い事なんだがな」

「退位してからの方が長いのですから、諦めて下さい」


 ライ兄様の本音は、誰かに天帝位を譲ってハンターとして活動したいのです。

 ですがここまで来た以上、ライ兄様以外の方が天帝として即位されても、すぐに連邦天帝国は分裂する事になりますし、下手をしたら各地で戦乱が起きてしまうでしょう。

 ですからイヤでも、ライ兄様にやって頂くしかないのです。


「分かっている。ここまで来た以上、レストに譲位するまでは天帝として全うしてみせるさ。話を戻すが、リッターズギルドも王の戴冠式と同時に始動という事で問題はないか?」


 ライ兄様の仰るリッターズギルドとは、オーダーズギルド、セイバーズギルド、ドラグナーズギルド、ランサーズギルド、ソルジャーズギルド、ホーリナーズギルドの総称になります。

 客人まれびとの世界の言葉で騎士を意味するそうですから、6つの騎士ギルドの総称に相応しいですね。


「はい。既にドラグナーズギルドと名を変える事は、竜騎士達にも通達してあります。貴族が所有している竜騎士団もドラグナーズギルドに登録し、竜王直属となりますが、そちらも何とか」

「ランサーズギルドもギムノス獣王の協力の元、公国騎士団、獣騎士団ともに、準備は進んでいるよ」


 新しく設立されるドラグナーズギルドとランサーズギルドも、準備は出来ているようです。

 セイバーズギルドも含めて総本部はフロートに置かれますが、こちらは出張所に近い形になりますから、実質的な総本部は各国首都にあるセイバーズギルド、近衛竜騎士団、公国騎士団の総本部がそのまま使われる事になります。

 フロートの総本部には、グランドマスターとアソシエイトマスターが交互で派遣される事になりますから、ソルジャーズギルドも含めてアソシエイトマスターは2名に増員される事も決まりました。

 オーダーズギルドとホーリナーズギルドのアソシエイトマスターは、変わらずに1名のままです。


「こちらも順調か。いや、グランド・マスターが来ていないようだが?」

「グランド・ドラグナーズマスターには兄ハルートが、王位継承権を放棄した上で就任する事になりました。現在はバレンティアの竜騎士団を纏めるために残っていますが、次回は参加する予定ですから、その折に改めて紹介させて頂きます」

「グランド・ランサーズマスターは、申し訳ないが人選が難航している。公国騎士団長も獣騎士団長もいい歳だから、出来ればそんな役職は引き受けたくないようなんだ」


 グランド・ドラグナーズマスターには、フォリアス陛下の兄君ハルート殿下が就任されるのですね。

 王位継承権も放棄されてとなると、特に問題は起きなさそうです。

 ですがグランド・ランサーズマスターは、候補こそいるものの人選が難しく、正式に決まるまではまだかかりそうな様子ですね。


「焦って適当な者が就任しても問題だが、戴冠式に間に合わないのは困るな。それまでには可能なのか?」

「何とかするよ。トールマン卿やディアノス卿を派遣してもらうっていうのも手だからね」


 ああ、現グランド・オーダーズマスターとアソシエイト・オーダーズマスターですか。

 ライ兄様の戴冠式から、オーダーズギルドは新しい体制で始動します。

 ですからグランド・オーダーズマスターにはレックス卿が、アソシエイト・オーダーズマスターにはミランダ卿が就任されるのですが、トールマン卿とディアノス卿はロイヤル・オーダーかオーダーズマスターとして活動を続けられると小耳にはさみましたから、確かにランサーズギルドをお任せするのも一つの手ですね。


「ふむ、それは一考に値するな。分かった、2人にも聞いておこう」

「ああ、頼むよ」


 トールマン卿もディアノス卿もこの場におられるのですが、予想外の事態に目を見開いておられます。

 オーダーズギルドを引退されるワケではありませんが、現在の地位から退いた後は過酷な業務から離れられるとあって、出来ればのんびりと過ごしたいと思われていたのでしょう。


「では次の議題に行く前に、ここで小休止を取りたいと思う。昼食も用意してあるから、希望者はバトラーに申し出てくれ。再開は2時間後とさせてもらう」


 もうお昼でしたか。

 短いように感じましたが、内容は有意義でしたから、あっという間に時間が過ぎてしまいましたね。

 それに食事も、サユリ様の直弟子である天樹城の料理長が腕に寄りをかけて用意してくださっていますから、こちらも楽しみです。

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