連邦国家案
Side・真子
会議前にラインハルト陛下から
しかも同じ
でも私が軽く口にした連邦っていう国家体制が、まさかすんなりと受け入れられるとも思いもしなかった。
ヘリオスオーブでもリベルター連邦っていう国があるけど、こちらは国じゃなく橋上都市の連合国家みたいだから、少し意味合いが違うわね。
あと、茶番としてグスタフ議員が連行されていったけど、元々アレは排除する予定だったみたいだし、これだけの面々の前で罪を暴露してしまえば、再起も出来ないでしょうからね。
まあ再起云々以前に、処刑される事も決まってるんだけど。
「グラーディア大陸の神帝に対して、フィリアス大陸の天帝か。悪くないわね」
「神帝のような暴君と並び称されても、全く嬉しくないがな」
私の知識でも、皇帝は王の上に立つ統治者の称号だった。
だけどレティセンシアっていう国は皇王がトップで、皇帝と字面や雰囲気が似てるし、ソレムネの帝王とも一字被ってしまっている。
だからなのか、大和君がアミスターの象徴でもある天樹を持ち出して、天帝っていう称号を提案した。
大和君的には、天樹を頂く国の皇帝の略称らしいけど、地球だといろんな意味があるのよね。
と言っても私が知ってるのは、万物の支配者とか宗教の神様とか、その程度だけど。
「それはそれとして、概要としてはアミスターに追従する独立した小国家群ということになりますけど、統治する王は権力的には公爵より上となって、さらには帝位継承権は発生せず、自国の王位継承権のみを有する形でしょうか。それをアミスターが纏める形になりますね。リベルターは橋上都市を中心にすればいいでしょうけど、バリエンテやソレムネはどうしましょう?」
私の中では、あまり連邦国家に良いイメージは無い。
だけどこの場の皆さんは乗り気だから、なるべく問題が起こらないように、起こりにくいような感じに出来るように話を持っていかないといけない。
医大生や高校生には厳しい難問だわ。
「確かにリベルターは橋上都市のみならず、周辺の町や村も含めて領地になっているな」
「仰る通りです。ですから橋上都市を首都とした小国、ということになるでしょう」
リベルターにある橋上都市は、全部で20。
だけど7つの都市が再建も不可能な程破壊されてしまっているし、さらに別の2都市は代表が亡くなっているから、どうするべきか判断が難しい。
しかも再建不可能な都市には、リベルターの首都エストレラも含まれているから、本当に大変だわ。
「エストレラを含む都市は、残念だが後回しだな」
「やむを得ませんな。生存者は近隣の橋上都市に居を移してもらいますが、破壊された都市は取り壊すか少し場所を変えて建設するかを、改めて議論致しましょう」
そうなるわよね。
人口が減っている橋上都市もあるから、そこも調整しなきゃいけないわ。
「バリエンテは、北と西の王爵家はそのまま独立、南は我がバジリウス公爵家にお任せ願いたい。本来であればハイドランシア公爵家を再興させたいのだが、彼女にその気はないであろう故な」
バリエンテも、王爵家が独立するのは分かる。
東は既にアミスターに併合済みだから、これはアミスターが何とかするとして、後は中央と南だけど、ギムノス獣王は南の王爵領を治めるとか言い出した。
しかも獣王家じゃなく公爵家として。
ハイドランシア公爵家の再興も口にしたけど、当主となるであろうプリムにその気がないんだから、難しいっていう理由もあるんでしょうね。
「それは構わないが、公爵家?あなたも独立した方が良いのでは?」
「新たな国家の体制が整った後、愚王である我は引退する所存です。既に息子には伝えております故」
自嘲も込めて愚王なんて言い出したけど、ギムノス獣王が王位に就かなかったら、バリエンテはもっとひどい事になってたでしょう。
だけどテルナール公爵を処刑した事を後悔してるって話はネージュ王爵からも聞いているから、余生は政から離れて静かに暮らしたいって事なのかもしれないわ。
「それについては、私からは何も言えないな。だがまだバリエンテの中央が残っているが、そちらはどうされるおつもりで?」
「残っている2つの公爵家に、独立してもらおうと考えております」
なるほど、バリエンテの公爵家の独立か。
ということはバリエンテは、5つに分かれるって事ね。
元々6つの国だったそうだし、うち1つはアミスターに併合されてるから、無難な所かしらね。
しかも当時と違って、今度はアミスターの庇護下のままだから、小国同士での戦争は起こりにくいわ。
小国の王としてとは言ったけど、法律なんかはアミスターの物を順守してもらう事になるから、大きな貴族領っていう認識でも間違いじゃないと思う。
「とりあえず仮決定だが、バリエンテもリベルターも、貴族や代表には確実に伝えてもらいたい」
「無論です」
「心得た」
熱心な話し合いにはなったけど、まだバリエンテやリベルターには知らされてないから、何をするにしてもそこからよね。
「では本題の、ソレムネについてだ。ヒルデガルド女王に最終決定権を持ってもらう事は確定として、問題となるのは当初の予定だったアミスター領とトラレンシア領についてだな」
「そうですな。ヒルデガルド陛下、ブリュンヒルド殿下。ソレムネもアミスターに併合するという認識でよろしいのですか?」
「はい、構いません」
「トラレンシア領が残ったままでは、後々問題になりかねませんから」
ライアー大公にそう答える妖王家の姉妹だけど、本音は全部アミスターに丸投げ出来るって思ってる気がする。
さっきブリュンヒルド殿下も口にしたけど、トラレンシアも連邦の枠に入れてほしくて仕方ないでしょうからね。
今は同じ王国同士って事で、対外的には対等な関係を演出してるけど、本音は主従の関係に戻りたいって事なんだから。
ラインハルト陛下が竜王や公王も呼ぶべきだったって言ってたけど、ここまで大きな話になると、バレンティアやアレグリアも関わってもらった方が良いわよね。
連邦の枠に入るかどうかは別問題としても、話ぐらいは通しておかないと、戦争の火種にしかならないし。
「法に関しては、アミスターの物で構わないか?」
「はい。トラレンシアも基本的にはアミスターと同じ法ですから、わたくしやセイバーも違和感を感じる事はないでしょう」
ソレムネを統治するにあたって、一番問題だったのは法律の問題。
ただトラレンシアの法律は、ほとんどがアミスターと同じだから、そこまで問題ってワケでもないか。
むしろ問題が起こるとしたら、リベルターやバリエンテでしょうね。
いつから連邦体制になるかは分からないけど、リベルター側は復興もあるからスムーズに行くと思うけど、バリエンテは分かりにくい。
「分かった。では派遣する人員だが、アミスターからはデルフィナを筆頭にオーダー200名、統治の補佐に貴族子弟が10名になる」
やっぱりエンシェントオーダーを派遣する事になったか。
レックスさんは次期グランド・オーダーズマスターだし、ローズマリーさんとミューズさんはレックスさんの奥さん、ミランダさんはロイヤル・オーダーだから、残るデルフィナさんがソレムネに派遣される事になるのは、ある意味では当然か。
「トラレンシアからは、ヴィーゼを筆頭にセイバー150名、わたくしの補佐として貴族の子弟を8名です。またヴィーゼを除くセイバーには、ソルジャーズギルドに出向とも伝えてあります」
「オーダーも同様だ。デルフィナには、初代グランド・ソルジャーズマスターを務めてもらう事も伝えてある」
ああ、ソルジャーズギルドについては、既にラインハルト陛下とヒルデ様の中で形になってたんだ。
「陛下、そのソルジャーズギルドとは?」
「ソレムネ軍兵士の受け皿として、新たに考案したギルドだ。オーダーズギルド、セイバーズギルドの下部組織になる」
ラインハルト陛下によると、ソルジャーズギルドの総本部はフロートに置くことになるみたい。
オーダーズギルド、セイバーズギルドの下部組織ではあるけど、今の所は支部は作らない方針みたいだわ。
だからソルジャーズマスターは支部長じゃなく、部隊長っていう位置付けになるんですって。
ソルジャーズマスターはオーダーとセイバーから2人ずつ選出されていて、その上にグランド・ソルジャーズマスターになるデルフィナさんが就任。
ギルド設立は3日後の予定で、その時にデルフィナさんとソルジャーズマスターになるオーダーとセイバーも正式に就任するみたいだわ。
「なるほど、新しいギルドですか。ですがソレムネ軍に、
「どうだろうな。使えなければそれで構わないし、子供達の教育を重視すれば、次代では
教育か、確かに大事よね。
今までのソレムネは帝王絶対主義だったから、神々に祈りを捧げるような事も無かった。
隠れて祈ってた人はいるだろうけど、迂闊に魔法を使っている事がバレたら厳罰に処されたっていう話もあるから、帝王家が滅んだ今でも名乗り出てくる人は少なそうだわ。
「教育に関しても新たなギルドを立ち上げる予定があるんだが、そちらはグランド・マスターとも意見を交わさなければならないから、当分は先になる」
仮称スカラーズギルドも、話としては進んでいるのね。
でも教育に関する機関だし、支部、というか分校は簡単には作れないから、そこをどうするのかっていう問題が解決しないと、設立は出来ないでしょうね。
「それからソレムネの貴族に関してですが、法に触れるような行いをした者は、爵位を剥奪した上で法に則って処罰を行います。その結果貴族が減り、領地の維持に支障が出る可能性もあり得ますが、その場合はアミスターとトラレンシアから同行していただいた貴族に任せる事になりますね」
ソレムネの貴族については、逆らったりしたら厳罰と決めている。
元々ソレムネ貴族は一般人を虐げているし、無理矢理土地や家を取り上げて街の外に放り出し、生活保護すら行っていない。
放り出された人達はソレムネの国民ではないって事で、貴族や兵士が何をしても処罰の対象にはならず、それどころかむしろ目障りな棄民が減るって事で、推奨すらされている。
だからどこの街もスラムが大きくなっていて治安も悪いし、スラムの主みたいな存在もいるって話もあったわね。
実際デセオじゃ、女傑がいたって聞いてるし。
ソルジャーズギルドはスラムを含めた街の治安維持が主任務になるけど、住民の保護も任務の1つだから、かなりやりにくいでしょうね。
もしソレムネ貴族が減り過ぎた場合は、同行する貴族の子弟が領主として封じられる事になるんだけど、その場合はオーダーやセイバーもその領地に着任という事になるから、下手したら永住って事で人気がなくて、集めるのに苦労したらしいわ。
「それとギルドだが、デセオにプリスターズギルドを除く5つのギルドを進出させる事になった。プリスターズギルドは、数名のプリスターを派遣するに留まる」
5つのギルド、つまりハンターズギルド、クラフターズギルド、トレーダーズギルド、バトラーズギルド、ヒーラーズギルドか。
デセオだけということは、様子見も兼ねているんでしょうね。
だけどソルジャーズギルドと同じく、
ハンターは珍しい魔物を狩れたり、デセオ近郊にあるデセオ迷宮に自由に入れるようになるから集まるだろうけど、他のギルドは微妙なところね。
だけどソレムネの生活水準は、
ヒーラーについても同様で、今まではポーションすらロクに手に入れられなかった状況が大きく変わる事になるから、怪我とか病気とかしても早く治療できるようになるわ。
バトラーは、ソレムネにも執事とかメイドとかはいたから、基本的には大きく変わらないと思うけど、それでも質という面じゃバトラーズギルドの方が上になる。
注意しなきゃいけないのは、トレーダーかしらね。
デセオでの商売や取引は、ヒルデ様のお膝元だから無茶な事は言われないと思うけど、他の街に行商とかに行かれてしまうと、何をされるか分かったものじゃない。
護衛を雇うにしてもオーダーやセイバーは任務で手一杯だろうし、ハンターはピンキリだから、ハズレを引いたりなんかしたらトレーダーの命が危ないわ。
私達も行くし、アライアンスに参加したユニオンも様子を見に来るって言ってたけど、そこはもっと煮詰めないといけないわね。
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