第3階層の成果
Side・リカ
アマゾネスの群れを倒した私達は、セーフ・エリアに入って小休止する事になった。
先のセーフ・エリアを出てから2時間も経ってないけど、そこを出てから倒したのは100を超えるアマゾネスだけじゃなくガルム種もいるし、次の第4階層も未知の階層だから、少しでも体を休めておくべきなの。
「ミーナとフラムの
「ええ。メイス・クエイクとタイダル・ブラスターを融合させる試みは前からやってたから知ってるけど、まさか本当に出来るとは思わなかったわ」
マナ様とプリムさんが言うように、ミーナとフラムはエンシェントクラスに進化してから、それぞれの
だけどその試みは、残念ながら一度も成功した事がなかったの。
「いくつかパターンは考えていたんですが、その中に私の結界魔法を使ってみるものもあったんです」
「今回ミーナさんは、その結界魔法でメイス・クエイクを覆ってくれたんですが、それが良かったんだと思います」
結界魔法でそんな事が出来るなんて、考えた事もなかったわね。
「積層術に似てるし、
「一応複数人で使う
「ああ、そういえばそんな話だったっけ」
その名の通り儀式を行う事で、複数の人間が使う魔法になるんだけど、対象となる魔法は
それにミーナとフラムの
「これで完成になるから、あとは精度を上げていくだけだな」
「それもですけど、魔法名もどうしようかと悩んでるんです」
「魔法名は重要よね」
魔法名を意識して、時には口に出す事で、明確に魔法のイメージを紡げる。
だから魔法名は、かなり重要になるわ。
「大和さん、何か良い名称はありませんか?」
「俺?いや、いきなり言われても……」
フラムに話を振られた大和君が戸惑ってるけど、それはそうよね。
いきなり魔法名を考えろなんて言われても、すぐに浮かぶ訳がないもの。
いえ、よくよく思い返してみたら、プリムさんの極炎の翼、熾炎の翼は大和君の命名だし、けっこうすぐに出てきたって話だわ。
「そうだな……マルチストーム・ブレード、ってのは?」
「
魔法のイメージもしやすいし、悪くないわね。
ミーナもフラムも凄く嬉しそうだから、これは決定じゃないかしら?
「ありがとうございます、大和さん。後は頑張って、精度を上げていきます」
「お、おう」
やっぱり決定ね。
「次は、この階層で倒した魔物の内訳ですね」
「そうしよっか。といってもゴブリンにアマゾネス、あとはガルムぐらいだけど」
「数は多かったですが」
クエスティングで確認すると、さらに多かったと感じるわ。
「ホブ・ゴブリン34匹、レッドキャップ・ゴブリン54匹、ゴブリン・プリンス6匹、ゴブリン・プリンセス3匹、ガルム34匹、テラ・ガルム10匹、ステラ・ガルム3匹、ルナ・ガルム1匹、アマゾネス87匹、ウェヌス・アマゾネス53匹、ヴァルゴ・アマゾネス24匹、アマゾネス・プリンセス5匹、アマゾネス・クイーン1匹、全部で315匹か。結構な数だな」
「第2階層よりは少ないけど、それでも1つの階層としては多いわね」
第2階層は、500匹を超えてたものね。
ソルプレッサ迷宮は150匹程、イスタント迷宮は100匹少々という話だったから、とんでもない数だわ。
「第1階層でも200匹以上いたものね。1つの階層で
「ランクも高いしな。エンシェントクラスがいる事が前提になってないか、この
ホントに同感だわ。
なにせこのクラテル迷宮、第2階層でP-Rランクが、第3階層なんてM-Cランクモンスターが出てきたんだから。
高難易度と名高いソルプレッサ迷宮やイスタント迷宮でさえ、Pランクモンスターが現れるのは第4階層からだから、エンシェントクラスがいなかったら第2階層すら攻略出来ないわよ。
「このクラテル迷宮は、生まれてから1ヶ月も経っていないと推測されています。おそらくとしか言えませんが、セリャド火山で多くの方がエンシェントクラスに進化したために、
セイバーズギルドから伝えられた推測を口にされるヒルデ様だけど、確かにその可能性は否定できないわ。
低階層の
Gランク以上の魔物が現れる事も珍しくないから、入る人を選ぶ
逆に高階層の
アミスターにあるフロート迷宮は全18階層だけど、高階層型
「ということはクラテル迷宮は、いずれにも該当しない新しい
「皆さんの調査結果次第では、そういう事になるかと思います」
それはまた、厄介な話になりそうね。
だからいつかアミスターでも、クラテル迷宮みたいな
「結果次第と言われても、第4階層に行ったら外に出る訳だから、結論が出るのはかなり先になりそうだな」
「第3階層までの調査結果でも、ある程度の結論は出せそうだけどね」
「確かにね。まあ結論を出すのはヒルデ姉様やハンターズギルドに任せて、あたし達は手の空いた時にでも調査をしましょうか」
「そうするしかないんですが」
マナ様、プリムさんの言う通り、結論はトラレンシアやハンターズギルドに出してもらうしかないし、私達が調査するにしても、時間が無ければ難しい。
ユーリ様が苦笑されているけど、実際他にはないのよね。
まあ、私はメモリアの領主でフィールの領代でもあるから、
「ところでヒルデ、体調はどうだ?」
「はい、大丈夫です。直後は大変でしたが、今は少し馴染んできたと思います」
「そうか、良かった」
ヒルデ様を気遣う大和君だけど、こればっかりは仕方ないわ。
なにせヒルデ様、エンシェントヴァンパイアに進化してしまったんだから。
ヴァルゴ・アマゾネスとの戦闘中に進化してしまったんだけど、最初は感覚が上手くつかめなくて、少し苦戦されていたの。
それでもアマゾネスの攻撃は全て避けていたし、大和君やプリムさんもすぐに気が付いてフォローに回っていたから大事には至っていないわ。
「ソレムネに行く前に進化出来たワケだから、悪い事じゃないんだけどね」
「余計なことをしてくる馬鹿はいるだろうけど、トラレンシア女王っていう肩書があるんだから、どうやっても防げないしね」
ヒルデ様がエンシェントヴァンパイアに進化した事は、トラレンシアとしても歓迎出来る。
すぐにソレムネに行くことになるし、その後は退位して大和君に嫁ぐことになるから、トラレンシアに直接的な利益が出るワケじゃないけど、次代の女王になられるブリュンヒルド殿下はヒルデ様の妹君だし、大和君との間にヴァンパイアの娘が生まれたら、その子には王位継承権が与えられる。
ソレムネではヒルデ様に取り入ろうとする、あるいは婿に収まろうとする不逞な輩が出る事は確実視されてるけど、エンシェントクラスに力づくで迫っても結果は見えてるから、この点は安心できる要素かしら。
「夜はアルカに来られるのですから、そこまで心配しなくてもいいのではありませんか?」
「夜はね。でも敗戦国のソレムネからすれば、戦勝国の女王を手籠めに出来れば、次のソレムネ帝王になれるかもしれないでしょう?だからどんな手を使っても、ヒルデ姉様を取り込もうとしてくるはずなのよ」
ラインハルト陛下も仰っていたけど、まかり間違ってヒルデ様がそんな事を考える輩の手に落ちてしまった場合、今度はアミスターとトラレンシアの間で戦争が起きてしまう可能性が否定できない。
だからソレムネの治安が悪化しようと、そういった輩は処分する方針で固まっているみたいね。
「俺の目の前でそんなふざけたことぬかすようなら、この世に生まれた事を後悔させてやるけどな」
なんて言う大和君。
本人が望んだ縁じゃなかったけど、それでも大和君は責任を取るつもりだし、私も含めて大切にしてくれている。
だからそんな輩が目の前に現れたりしたら、その者は本当に生まれてきた事を後悔する事になるでしょうね。
「それは好きにしていいけどね」
「その……ありがとうございます、大和様」
真っ赤になるヒルデ様が可愛らしいわ。
「では大和様、そろそろ第4階層に向かわれますか?」
「そうしよう。昼まではまだ時間があるけど、第4階層も少し調査しときたいからな」
アリアちゃんが話の腰を折ってくるけど、確かに第4階層の調査もしておきたいわね。
だけどこの分じゃ、第4階層は最低でもGランク、下手したらPランクの可能性があるんじゃないかしら?
今までの
「それも踏まえて調査って事ね。とにかく行きましょう」
マナ様が楽しそうに仰るけど、ハンターが多いからか、逆に次の階層が気になってるっていう顔ね。
大和君と結婚した事で王位継承権も放棄されているし、煩わしい政治に関わる事もなくなったから、ものすごく活き活きとされているわ。
正直羨ましいけど、私の場合はまず大和君の子を産んで、その子が成人しない限りは今の地位を退くことが出来ないから、まだまだ先のお話。
明日からはフィールやメモリアでお仕事が待っているけど、バレンティアやソレムネにも行かせて貰っているから、あまり贅沢は言えないか。
気持ちを入れ替えて、しっかりと頑張りましょう。
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