それぞれの想い

Side・バウト


 ようやく俺達にも出番が回ってきた。

 いや、道中でも襲ってきた魔物を狩ってたから、ようやくっていうのは語弊があるか。


 だが仮にそうだとしても、俺達トライアル・ハーツに不満なんてもんはねえ。


「こうして肩を並べて戦うのも、随分と久しぶりだな」

「兄さん、腕は鈍ってないでしょうね?」

「こっちのセリフだ。これでもポラルやトラレンシアで、結構ハードな戦闘をこなしてきたんだぜ?」


 以前と変わらない信頼を向けてくれるラインハルト陛下と妹のマルカ。


 半年前メンバーの裏切りによって、俺達はアミスターの北にあるレティセンシアとの国境の町ポラルを守る事になった。

 何度か魔族と化したレティセンシア兵や元ハンターの襲撃があったが、何とかそれは迎撃に成功したし、おかげで俺達は、魔族との戦いにも慣れてきたと言える。


 トラレンシアも行ったら行ったで、いきなり終焉種と戦う羽目になるとは思わなかった。

 終焉種スリュム・ロードは、大和、プリム、真子という3人のエンシェントクラスが倒したが、その際に問題になったのが災害種の存在だ。

 その災害種アバランシュ・ハウルは、オーダーやセイバーの援護を受けて俺達トライアル・ハーツが受け持ったんだが、素早い上に攻撃も重かったから、とんでもなく大変だった。

 いや、俺は左腕を食い千切られちまったし、ノーマルハンター3人は死んじまったから、大変なんて話じゃなかったな。

 エンシェントクラスに進化したマナ様とファリスが駆け付けてくれなかったら、俺達は全滅してただろう。


 その後で、当初の予定通りリオに移動したんだが、そこでもリオ近隣じゃ滅多に見ない魔物が増えてたから、調査も兼ねて連日ゴルド大氷河まで出向いたし、たまに来る大和達からは戦闘訓練と銘打った大規模な狩りを実施させられたから、アライアンスはもちろん、トライアル・ハーツも全員がレベルを上げている。

 かく言う俺も、レベル61になった。


「腕を上げたのはトライアル・ハーツだけではないぞ?」

「そうですよ。私とマルカも進化できましたし、ライなんてエンシェントクラスが近いんですから」

「それもそれで驚きなんですがね」


 エリス殿下に苦笑を返すことしか出来ない俺だが、確かにそれは言う通りだ。

 なにせラインハルト陛下も俺と同じレベル61だし、エリス殿下はレベル54、マルカだってレベル58になってやがったからな。

 戴冠式はまだだが正式に王位を譲られているんだから、一国の王としては十分過ぎる程高レベルだ。

 本格的にハンター活動を行うのは、退位してからになるだろうけどな。


 だからソレムネ兵が押し寄せてきても、俺達にとっては敵にすらなり得ない。


「また陛下と共に戦える事を、嬉しく思います」

「陛下達には指一本触れさせねえ、って言いたいんだが、目を離すとすぐに突っ込んじまうから、そこだけは勘弁してもらいたいですがね」


 ユングとソウルが、俺達の総意を代弁してくれた。


 当初は王太子の世話をするのは面倒だと思ってたし、放っておけば勝手に突っ込んで魔物を倒したり、魔物に倒されかけたりする事も多々あったから、俺達としても大変だった。

 だがいつの間にか、陛下は俺達トライアル・ハーツの一員と言っても過言じゃない程に成長し、ハイエルフにも進化していた。

 元々は陛下が妹のマルカを見初めた事が理由だし、エリス殿下もマルカが無理矢理引っ張り込んだんだが、王族とは思えない程気さくなお人だから、俺達も共に狩りをするのが楽しくなったんだよ。


 だがルクスの裏切りによって、俺達は陛下達と行動を共にする事が出来なくなった。

 時をかけて罪を償って、いつかまた陛下と共に戦える日を夢見てた俺達だが、まさかこんな早く、その夢が叶うとは思いもしなかった。


 だから俺達トライアル・ハーツの士気は、かつてない程にまで高まっている。


「分かっているさ。私だって今の立場というものがある。ここで私が戦死などすれば、連合軍の士気の低下は避けられないし、レティセンシアだって何をしてくるか分かったものではないからな」

「でもライの悪い癖だから、簡単には直らないんだよね」

「結局はいつも通り、という事ですか。やれやれ、大変ですね」


 苦笑するレアルだが、確かにいつもの事だ。

 現に今も、陛下は俺より前に突出して、ソレムネ兵を手にした剣で切り捨てていっている。

 そのすぐ後ろにレアルが控え、手にした槍を使いながらラインハルト陛下の援護を行い、その槍から逃れたソレムネ兵をエリス殿下とマルカが仕留めていく。

 ミラとノーマルクラスの連中は弓術士のソウルを護衛しながら、近付いてきたソレムネ兵を倒しているし、俺とユングはその両方を視界に入れながら立ち回っている。


「すまんすまん。だがトライアル・ハーツが援護してくれてるのだから、私達も安心出来るんだ」

「この感じは、私も好きですよ」


 ラインハルト陛下とエリス殿下が、嬉しい事を言ってくれる。

 そう言われちまったら、俺達だって応えなきゃならねえよな。


「お前ら、分かってるよな?」

「当たり前でしょ」

「皆まで言わなくていいよ、バウト」

「この戦、陛下方は私達トライアル・ハーツが、完璧にお守りするわ」

「蒸気戦列艦だろうと大砲だろうと、何でもかかってこいってな!」


 分かってるじゃねえか。

 大砲だろうと何だろうと、陛下達を害するってんなら、俺達が全てぶち壊す。

 覚悟しろよ、ソレムネ軍よ!


Side・ミューズ


 蒸気戦列艦を速攻で沈めた私達は、そのまま戦場に取って返した。

 蒸気戦列艦は予想より多かったけど、10隻増えた程度では私達には大きな違いはない。

 だけど時間を掛ける訳にもいかないから、各人が属性魔法グループマジックを武器に纏わせ、一撃で沈めている。

 二射目を防ぐのは面倒だったけど、それもリディアとエルの結界魔法で防いであるから、友軍には被害は出ていない。


「凄い乱戦だね。さすがに相手の数が多いから、こっちも苦戦しているな」

「こればっかりはね。私達も急ぎましょう」


 エンシェントドラゴニュートのリディアとルディア、エンシェントドラゴニアンのエオス、エンシェントフェアリーのファリス、そしてエンシェントハーピーのエルは、フライングを使って先に戦場に舞い降りている。

 驚いた事にマナリース殿下も翼を纏う事でフライングの使用を可能としていたが、さすがは大和君の伴侶という事で納得した。

 だが私、サヤ、スレイ、シーザーには使えないから、スカファルディングを使って全力で駆ける事で、戦場に急いでいる。


「予定通り、それぞれのユニオンと合流後に、戦線を押し上げてもらいたい。頼めるか?」

「そのつもりよ。それが一番戦いやすいもの」

「ミューズもレックスと合流して、それから敵本陣を目指すんだろう?」

「その前に陛下方と合流する必要もあるが、その予定だ」


 夫であるエンシェントヒューマン レックスは、連合軍の総大将ジェネラル・オーダーだ。

 だから敵本陣にいるであろうソレムネの第一王子エアガイツを討ちに行ってもいいんだが、今回は親征という事でラインハルト陛下、ヒルデガルド陛下も同行されておられる。

 だからエアガイツ王子を討つのは、ラインハルト陛下かヒルデガルド陛下の方が良いだろう。

 どちらが討つかによって、戦後の功績が大きく変化するから、私達としても二の足を踏んでしまうんだ。


「うちのメンバーが見えたわ。それじゃあ私は、先に下りるわね」

「ああ、頼んだ」


 最初に見えたのは、最も海側で戦っていたリリー・ウィッシュだった。

 メンバー全員がハイハンターであり、リーダーであるサヤもエンシェントラビトリーに進化している事から、ウイング・クレストに次ぐ戦力として陛下からも期待されている。

 普通ならば間違いなく最強戦力なんだが、ウイング・クレストはエンシェントクラスが9人もいるし、うち3人は終焉種すら倒せる規格外過ぎる存在でもあるから、比べる方が間違っている。

 その事はアミスター・アライアンスが、一番分かっているだろう。

 だから彼らにとっても、ウイング・クレストは例外扱いだ。

 私としても、その気持ちは心から理解出来る。


 そのまましばらく進むと、愛する夫が剣を振るっている姿が見えた。

 同妻のローズマリーも、傍らで剣を振るっているな。


「本隊が見えた。私も下りる」

「了解だよ。心配はしてないけど、油断だけはしないようにね」

「分かっている」


 スレイとシーザーに見送られながら、私も降下を開始した。


 本体はレックスとマリーを筆頭に、オーダーズギルド第1分隊とロイヤル・オーダー、セイバーズギルド第1分隊、そしてウイング・クレストで構成されている。

 だがウイング・クレストにはエンシェントクラスが9人もいるため、先に戻っているリディアとルディアはリリー・ウィッシュと同じく海側が、エオスはバトラーという事を考慮して獣車の護衛が担当だ。


 本隊は戦線の中央に位置しているが、レックス、マナリース殿下、ミーナと、3人もエンシェントクラスが存在しているため、ソレムネ側の戦力は接敵と同時に崩壊している。

 時折飛んでくる砲弾も弓術士が射落としているから、ソレムネが有利な点は数だけという状況だ。


「お帰り、早かったね」

「急いだからな。予定より増えたとはいえ、今更蒸気戦列艦ごとき、我々の敵ではないさ」

「そうでしょうね。むしろソレムネが気の毒になります。蒸気戦列艦などを開発してしまったが為に、これだけの数のエンシェントクラスを敵に回す事になったのですから」


 などと言いつつも、一切同情してる様子がないマリー。

 確かにここまでエンシェントクラスが増えるとは思わなかったし、私自身もエンシェントオーガに進化出来るとは思ってもいなかった。

 そもそもここまでエンシェントクラスの数が増えた理由は、ソレムネが蒸気戦列艦を開発していた事も一因なのだから、私から言わせれば自業自得でしかない。


「では行こう。このまま敵陣を食い破り、エアガイツ王子を討つ」

「了解だ。だがそのエアガイツ王子は、誰が討つんだ?」

「状況次第だが、ラインハルト陛下に討っていただこうと考えている」


 敵軍総大将のソレムネ帝国第一王子エアガイツを誰が討つのか、これは連合軍にとっては大きな問題となる。

 アミスターが主体となって攻めてはいるが、我々が出発したのはトラレンシアだし、元々アミスターがオーダーやハンターを派遣した理由は、トラレンシアの救援が目的だ。

 だから帝王を討つのはヒルデガルド陛下が相応しいんだが、そのヒルデガルド陛下はアミスターが、ラインハルト陛下が討たれるべきだと考えておられる。

 だが戦後のソレムネは、アミスターとトラレンシアの共同統治になるとはいえ、担当されるのはヒルデガルド陛下の予定だから、対外的にはトラレンシアが主体と思われるだろう。

 こうなってくるとどちらが帝王を討つべきなのか、私には全く分からない。


 まあ、そこはジェネラル・オーダーでもある夫に任せ、私は剣を振るおう。


Side・カメリア


 この日を待ちわびていた。


 あの日、エストレラを襲ったソレムネによって、私を育ててくれた孤児院の先生方はもちろん、弟妹と言うべき子供達が惨殺された。

 私はグランド・トレーダーズマスターやレッド・ブレスレットというハンターズレイドと共に、生き残った子供達の護衛をしながらエストレラを離れようとしたんだけど、運の悪い事にソレムネに見つかってしまった。


 そんな私達を、ウイング・クレストの人達が助けてくれた。

 彼らは私とそう変わらない年頃のはずなのに、私とは比べ物にならない程の実力を持ち、追ってきていたはずのソレムネ軍部隊を、いとも容易く一蹴してしまった。


 その後、アミスターの王都フロートまで案内された私は、少し大きな孤児院にご厄介になり、今後の身の振りを考える事になった。

 レッド・ブレスレットは、フロートで地道に力をつける事を選んだ。

 私も誘われたけど、私にとっての最優先事項は親と言える先生方、弟妹と呼ぶべき子供達の仇を討つ事。

 だから何度もハンターズギルド・アミスター本部に足を運んで、ヘッド・ハンターズマスターにすら掛け合ってデセオ攻略戦に参加させてもらおうと頼み込んだ。

 だけどそのヘッド・ハンターズマスターから、既にデセオ進攻アライアンスはフロートを発っていると聞かされ、さらに私の腕じゃ合流する事も出来ないと断言されてしまった。


 何故ならアライアンスに参加しているハンター達は、アミスターでも上から数えた方が早いトップレイドばかり。

 ハンター登録して間もない私とは経験の絶対量も違うし、実力だって足元にも及ばない。

 それに私が今いるBランクは、ハンターの数が一番多いと言われているランクでもあるから、同じランクでも実力には明確な違いがある事だって珍しくない。

 つまり私がアライアンスに参加出来るような隙間は、微塵も空いていなかった。


 打ちひしがれながら孤児院に戻ると、私を助けてくれたウイング・クレストが、初めて見る人達を連れて孤児院に来ていた。

 その人達がリリー・ウィッシュだと紹介されて驚いたけど、リリー・ウィッシュが孤児院出身だという話は有名だから、私は一縷の望みを見た気がした。


 だけど断られてしまった。

 理由も納得出来る物だったし当然ではあるんだけど、希望を抱いてしまった分、絶望も大きかった。


 でも私は今、ウイング・クレストの一員としてアライアンスに参加し、戦場に立っている。

 私がウイング・クレストに加入出来たのは幸運でしかない。

 命令違反を犯せばすぐフロートに戻されるし、場合によっては斬り捨てられる事になっているけど、ここまで来た以上、私にとってはどうでもいい事だ。

 1人でも多くのソレムネ兵を道連れにして、私も死ぬ覚悟を決めて、この戦いに臨んでいるんだから。


「『シールディング』。カメリアさん、突出しすぎです。もう少し落ち着いてください」


 だけどそんな私を、ミーナさんが完璧に守ってくれている。

 行軍中にM-Iランクモンスター グラン・デスワームを倒したミーナさんは、驚いた事にエンシェントヒューマンに進化した。

 相方で同妻のフラムさんもエンシェントウンディーネに進化していたけど、そのフラムさんも的確な援護射撃を行ってくれているから、私は未だに傷一つ負っていない。


「邪魔です!はあああっ!!」


 私への攻撃が全て防がれた事に腹を立てたのか、ソレムネ兵はミーナさんに向かっていった。

 だけどミーナさんは、メイス・クエイクという固有魔法スキルマジックを使い、一薙ぎするだけで10人以上のソレムネ兵を吹き飛ばし、体中の骨という骨を砕いていく。


「カメリアさん、命令を守れないようなら、フロートに戻すという約束を忘れたんですか?」


 結界魔法を使い、ソレムネ兵の攻撃を防いでいるミーナさんが、私に厳しい視線を向けて問いかけてきた。


「忘れてはいません」

「ではなぜ、私の話を聞かず、1人で突出しているんですか?」

「それは……」


 ミーナさんの問いかけに、私は答えを返す事が出来なかった。

 私は命を捨てて、1人でも多くのソレムネ兵を倒すつもりだったから。


「私には、あなたの気持ちは分かりません。ですから言葉が届かない事も理解しています。ですがそれでも、約束は約束です。仇を討つのは結構ですが、その程度の事も守れない人が仇を討った事で、亡くなった方達は喜んでくれるんですか?」


 そんな事は分からないし、もう訪ねる事も出来ない。

 だけど約束という言葉は、不意に私の心に突き刺さった。


「それにその剣は、エドさんが証としてあなたに手渡した物です。私達ウイング・クレストが、あなたをアライアンスに参加させる証として。元々その剣は、あなたに渡すために打たれているんです。エドさんがあなたのために丹精込めて、その剣を打ったんですよ?なのにあなたは自分の事だけ考えて、私達を裏切ろうとしている。本心では違うのかもしれませんが、今のあなたを見る限りでは、そう言われても仕方ありませんよ?」


 そこまで言われて、私は愕然としてしまった。

 命を助けてもらい、この場に連れてきてくれたウイング・クレストを裏切るつもりなど、私には一切ない。

 だけど傍から見たら、今の私はそう思われても仕方のない行動をしている。


 同時に私は、手にした剣に視線を落とした。

 確かにこの剣は、私への証として、エドワードさんが手渡してくれた物だ。

 だけど私が加入するかどうかは、私の答え次第でもあったんだから、数打ち品ではなくとも、それに近い剣だとばかり思っていた。


 でも実際には、私をウイング・クレストに加入させることを前提に、エドワードさんが私のために丹精込めて打ち、仕上げてくれていた逸品だとミーナさんは言う。

 ストレージからオーダーズギルドが使っている翡翠色銀ヒスイロカネ製の剣を取り出して手渡してくれたけど、エドワードさんの剣が業物だと、私でも分かる程の違いがあった。


 この証の剣は、私がアライアンスに参加するための証明みたいな物だとばかり思ってたけど、そうじゃなかったって事なの?


 私は急速に、自分の戦意が萎んでいく事が実感出来てしまった。


「亡くなった人の想いは確かに強いですし、それに縛られる人がいるのも事実です。ですがいつまでも未練がましく想っていると、逆にその方達を苦しめる事になります。それぐらいはハンターなんですから、ご存知ですよね?」


 アンデッドに、ゴーストやレイスのような、体を持たない魔物になる。

 本当かどうかは分からないけど、アンデッドと化した人達は死下世界に行けなくなると言われているし、苦しみから逃れるために人を襲うとも言われている。

 だけど間違いのない事実として伝わっているのは、人間が体のないアンデッドになってしまう理由は、残された者の強い未練だという事。


 つまり私は先生方や子供達の仇を討つと言いながらも、それは自分のためであって、逆にみんなを苦しめていたという事になる。

 死んだ後も苦しませて、挙句に魔物として討伐される運命まで背負わせるなんて、私はなんて事を……。

 それが分かっていたからこそ、レッド・ブレスレットはアライアンスに参加するような事はしなかったのね……。


 そこまで思い至った私は、膝を付いてしまった。

 私の心にあるこの気持ちは、すぐには変えられない。

 だけど今のまま戦えば、みんなを苦しめる事になる。

 だとしたら、私に出来る事は……。


「……ミーナさん、私を後方に下げてください」

「良いんですか?」

「はい。ここにいれば、私は無謀な攻撃を繰り返すだけですし、何よりみんなを苦しめる事になる。だから私は、後方に下がります」


 この手で仇を討ちたいけど、それでみんなを苦しめようとは思わない。

 だから私は、断腸の想いで後方に下がる事を選択した。


「分かりました。私も説明しますから、一度下がりましょう」

「お願いします」


 この手で仇を討つ事は叶わないけど、ソレムネの滅亡は目にする事が出来る。

 そうすれば私のこの気持ちも、変われるかもしれない。


 そんな想いを抱きながら、私はミーナさんのトラベリングを使って、後方に下がる事にした。

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