戦女神のギルド登録
真子さんがオーク・キングごと集落を潰した後、俺達はアルカを経由してからフィールに向かうことになった。
リカさんの屋敷に出ても良かったんだが、真子さんは初めて行くことになるし、最初はちゃんと入口から入るべきだろうってことになったから、ジェイドとスピカ、ブリーズに乗っているぞ。
真子さんは俺の後ろだ。
「門番は……よし、イライザさんだ」
「こんな時はグラムに当たる事が多いのに、珍しいわね」
確かに何かあると、何故かグラムが門番してることが多かったからな。
非番なのか別の任務をこなしてるのかは分からんが、門番がグラムじゃないって事は面倒事が1つ減るってことだ。
しかも今回の門番はイライザさんだから、大きな騒動になることもないだろう。
「お帰りなさいませ、マナリース殿下」
「ええ、ご苦労様。はい、ライセンス」
「確認致しました。そちらの女性は初顔のようですが?」
俺、マナ、ミーナのライセンスを確認したイライザさんは、真子さんのライセンスも確認しようとしたんだが、真子さんはまだギルド登録できてないからどうしたらいいのか分からず、少し戸惑っている。
「新たな
「
「あ、ライブラリーでも良いんですね」
安心した様子でイライザさんにライブラリーを見せる真子さんだが、そのイライザさんはライブラリーを見るなり引き攣った顔になった。
「エ、エンシェントヒューマン!?」
「驚く気持ちも心から理解できるけど、大和と同じ刻印術師なのよ」
「しかもエンシェントヒューマンへの進化は、先程オーク・キングを倒した直後でした」
「……まさかこの真子という方も、単独で災害種を?」
縋るような視線をマナとミーナに向けるイライザさんだが、現実は残酷だったりする。
「残念ながらね。ある意味じゃ大和より凄かったわよ」
俺もそう思うし、精度じゃどう考えても俺の負けだったからな。
「そ、そうですか……。あ!も、申し訳ございません!どうぞ、お通り下さい!」
「気にしないで。いつかきっと、良い事があるから」
「ありがとうございます……」
マナの慰めの言葉に深く頭を下げるイライザさんだが、そこまで言うことないだろ。
「マナ様、それはちょっとヒドくないですか?」
「あれが普通の反応なのよ。これでもフィールはマシな方よ?」
確かに俺とプリムのせいで、フィールの人達は少々の事じゃ動じなくなってるからな。
アライアンスのお披露目でも、レックスさん達がオーク・クイーンを倒した話をした時はすげえ盛り上がりだったが、俺とプリムがオーク・キングを倒したって話したら、納得っていう雰囲気が漂って、すげえ気まずかったぞ。
「加減はしたんですけどね」
「あの様を見せられて加減したなんて言われても、信じられる訳ないじゃない」
「本当にそうですね」
なんてマナとミーナは言ってるが、俺としては称号持ちの一流生成者の実力を垣間見れた訳だから、どちらかと言えば感心したな。
今までは力技で何とかしてきてた俺だが、もっとちゃんと技術も向上させなきゃいけないって改めて思わされたよ。
「そういえば真子さん、エンシェントヒューマンに進化したことで、適正属性と
「そういえばそんな話だったっけ。確認してみるわ。『ステータリング・オン』」
そういやそうだった。
進化すると適正属性と
属性は何となく分かるらしいが、
今は俺が奏上したステータリングで確認できるから、手間はすげえ減っている。
「ハイクラスに進化しても増えるんだったっけ?」
「ああ。だから今の真子さんは、最低でも属性と
「だからか。属性は風と火、土になってるわね」
風は元々の適正だし、さっきのオーク・キングとの戦いで火属性のムスペルヘイムを使ってたから、エンシェントヒューマンに進化した事で得た適正は土ってことになるんだろうな。
「
医大3年生って言ってたから、ヘリオスオーブに来てすぐに授かったのは回復魔法と考えてもいいだろう。
魔眼魔法と召喚魔法はハイクラス、エンシェントクラスへの進化で授かった魔法だと思うが、念動魔法が無いとは思わなかったな。
「念動魔法は無いんですね」
「そんなに不思議な事なの?」
「ヒューマンには多いらしいんだ。俺もミーナも使えるから、真子さんも使えると思ってたんだけどな」
「だけど召喚魔法が使えるって、私と同じね」
「そういえばマナ様の
「ええ。従魔魔法と違って召喚獣の魔力も自分の物として使えるようになるから、私もそれを活用した
マナの
本来なら自分の魔力だけでやらないといけないんだが、召喚魔法士は召喚獣の魔力を使えるから、使う魔法の魔力は召喚獣の物になり、召喚魔法士は最終的な制御を行うだけで済むらしい。
自分以外の魔力を自分の物として使えるわけだから、魔力効率は凄まじく良いし、召喚獣と連携することも出来るから、使いこなせれば相当強い
餌代が掛かるから、複数の召喚獣と契約してる召喚魔法士は少ないらしいが。
「なるほど。じゃあ私も、何か契約してみようかな?」
「従魔魔法と違って契約出来る召喚獣に制限はないから、まずは波長の合うバトル・ホースが良いんじゃないかしら?」
「そうですね。バトル・ホースは人に懐きやすいですし、頭も良いですから、最初に契約するのは私もお勧めです」
マナのスピカは召喚獣だが、ミーナのブリーズは従魔だ。
だからミーナは他の魔物と従魔契約を結ぶ事は出来ないんだが、それでもブリーズとの相性は良いし、契約した時も波長が合ったって言ってたな。
「確かに可愛いし、私にも懐いてくれてるから、そうしてみようかしら。フィールにもいるんですよね?」
「ええ、牧場があるから。相性の良い仔がいなかったら、レスペトに行ってみるのもアリだと思うし」
「ラウス君達はレスペトで契約しましたしね」
レスペトにはアミスター最大のバトル・ホース牧場があるから、フィールで見つからなくてもレスペトなら見つかる可能性は高い。
しかもレスペトにはソフィア伯爵の屋敷もあるから、俺達としても気軽に行きやすいっていうのも大きいな。
「そんな牧場もあるのね。フィールで見つからなかったら、そうしてみます」
なんて言ってるが、レスペトはゲート・クリスタルを記録させてないから、行くとしたらジェイドに乗ってってことになるだろう。
そうなると俺も付き合うことになるんだが、まあそれぐらいは仕方ないか。
「着いたわ。ここがハンターズギルドよ」
「思ってたより小さいんですね」
「フィールは大きな街というわけじゃありませんから。フロートや隣のエモシオンのハンターズギルドは、もっと大きいですよ」
そりゃフロートはアミスターの王都だし、エモシオンもテュルキス公爵領の領都だから、ハンターの数もフィールより全然多いからな。
鑑定室だけは同じ大きさだが、規模からしたらフィールは少し大きな街でしかないから、ハンターズギルドだけじゃなく、他のギルドだって相応の大きさだ。
「ハンターは……いないな」
「お昼だし、狩りに行ってるってことでしょう」
「ですね。でもその方が都合が良いですから、早く真子さんの登録をしてしまいましょう」
俺もその意見に賛成だ。
今フィールにいるハンターとは面識があるから大丈夫だと思うが、俺がハンター登録をした時は盗賊崩れに絡まれたからな。
「大和君はお約束を体験してたのね」
「体験するものじゃないですよ。本気でウザかったですから」
正確には盗賊崩れじゃなくレティセンシアのスパイだったんだが、それでもウザかったことに変わりはないからな。
受付にいたカミナさんに声を掛け、真子さんのハンター登録を頼むと、何故かライナスのおっさんの所に通された。
「おう、今日はどうした?って、また見ない顔だな」
「
「
「エレクト海よ。ソレムネ近くの」
真子さんと出会った経緯を説明するマナだが、話が進む度におっさんの顔が険しくなっていく。
まだ領代にもソレムネの蒸気戦列艦の事は話してないが、さすがにソレムネと戦争状態になるとは思ってなかったんだろうな。
「また厄介な……。その真子っていう
「いや、待ておっさん。どう考えても俺は無関係だろ?」
「そうでも思わねえと、やってられねえんだよ」
「だからって関係ないことまで俺のせいにすんじゃねえよ」
濡れ衣も甚だしいぞ、この野郎。
「で、その真子のハンター登録か?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
同時にウイング・クレストへの加入手続きも申請する。
「プリスターの巫女嬢ちゃんに続いて、今度は
真子さんのライブラリーを見て、呆れた声を出すライナスのおっさん。
だから俺のせいじゃねえって言ってるだろ。
「ほれ、これがお前さんのライセンスだ。ヒーラー登録もするってことだから、すぐに破棄されちまうけどな」
「ありがとうございます」
嬉しそうにハンターズライセンスを受け取る真子さんだが、確かにおっさんの言う通りヒーラー登録もするから、そっちで発行されるユニオンライセンスに交換されることになって、ハンターズライセンスは破棄だな。
「そういやユニオン登録した時に渡したライセンスって、どうやって処分してるんだ?」
「詳しくは言えねえが、そういう魔法がある。ギルドマスターにしか使えねえしプリスターズギルドにも行く必要があるから、悪用される恐れはほとんどねえよ」
それを聞いて安心した。
ギルドマスターにしか使えないってとこは少し引っ掛かるが、プリスターズギルドに行かないと使えないってことなら、例えギルドマスターが悪党だったとしても、悪用される事は無いと言えるからな。
ライセンス破棄はギルド登録抹消に等しいし、
もちろんパニッシングも使用には制限があるらしいから一介のプリスターには使えないし、もし濡れ衣だと発覚したら、使用したプリスターやギルドマスターには神罰が下るとも聞いてるが。
無事にハンター登録とウイング・クレストへの加入手続き、さらに真子さんが狩ったキングを含むオークの買取を終えてから、今度はヒーラーズギルドに向かった。
そこでもヒーラーズマスター サフィアさんに回される事になってしまったが、こちらも驚かれつつも無事に登録完了だ。
「エンシェントヒーラーなんて、初めてだわ……」
なんてサフィアさんが言ってたな。
確かにヒーラーズギルドはサユリ様が設立した新しいギルドだし、他国に進出したのもここ2,30年ぐらいの話だから、エンシェントクラスがヒーラー登録をしたことは無い。
エンシェントウルフィーのギャザリングさんはもう50年以上もグランド・ハンターズマスターを続けてるらしいし、エンシェントドラゴニアンのガイア様はウィルネス山から下りてこないから、当然と言えば当然の話だ。
「このメディカルドールに回復魔法を使ってもらうことになるんだけど、どこまで使えるの?」
「すいません、ヘリオスオーブに来たのは昨日なので、回復魔法なんて使ったことがなくて……」
「昨日来たばかりだったのね……」
地球には回復魔法なんてないからな。
それでもサフィアさんが丁寧に教えてくれたおかげもあって、真子さんはすぐに回復魔法を使いこなせるようになった。
ノーブル・ヒーリングまで使えるようになったのは驚いたが、回復魔法はノーブル・ヒーリングが最上級になる。
欠損部が無くても再生できるエクストラ・ヒーリングとか欠損回復魔法リヴァイバリングは
余談だがリヴァイバリングは、生まれつき目が見えないとか指が2本しかないとか、そういった先天性の欠損も回復することが出来るらしい。
だけど使えるのはサユリ様しかおらず、それ故のOランクヒーラーでもあるそうだ。
「これがユニオンライセンスなのね。ハンターズライセンスを見た時も思ったけど、写真のない免許証みたいだわ」
「俺も同じ事思いましたよ」
ユニオンライセンスを手にした真子さんが率直な感想を述べたが、俺も同じ事を思ったな。
マコ・カタギリ
20歳
Lv.67
人族・エンシェントヒューマン
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ティン(P-T)
ヒーラーズギルド:アミスター王国 フィール
ヒーラーズランク:ティン(T)
これが真子さんのユニオンライセンスだ。
どのギルドもTランクから始まるから仕方ないんだが、レベルや種族からすると違和感が半端ない。
まあハンターズランクは適当に依頼をこなしてればすぐ上がるし、ヒーラーズランクもすぐにユーリやキャロルに追い付いちまうだろうな。
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