天空島アルカ
アバリシアや神帝については、もう少し話を纏めてから、ラインハルト陛下に報告することにした。
さすがにマナ達には知らせておく必要があるが、アルカを作ったのが誰かも分かってないから、そうした方が良いと思うしな。
その話を一度打ち切って、今はこのアルカをどうするかっていう話になっている。
「じゃあアルカは、やっぱり大和の物ってことになるのね?」
「はい。石碑を読み、ここまで来られた
この大きな天空島が、俺の物ねぇ。
そう言われてもピンとこないんだよな。
「あたし達もここに住んでいいの?」
「勿論でございます。ここは既にマスターの物ですから、マスターが如何様にしていただいて構いません」
俺の好きにして良いってことか。
そうなるとやっぱり、ここをユニオン・ハウスにしたいよな。
だけどここは空に浮かんでるから、普通に来ることは出来ない。
そこんとこはどうにか出来るんだろうか?
「それならここを俺達のユニオン・ハウスにしたいんだが、ここには転移でないと来られないだろ?それは何とかなったりはしないのか?」
「可能です。コンル」
「はい。私が答えさせていただきます。マスターがお持ちの石板、あれは全部で6つありますから、それを使っていただくことになります。また宝樹の根元にある石碑を、
なるほど。
確かに石碑は6ヶ所にあるんだから、それを使えばいいってのは道理だよな。
というかこれ、石板なのか。
それだけじゃ数が足りないが石碑も加工しても使えるってことなんだから、使い勝手としてはこっちの方が上かもしれない。
加工には
「それなら加工も頼みたいな。いずれは石碑や石板の回収もするつもりだが、今はそこまで時間は取りにくい」
「分かりました。あ、それとその加工した魔導具、ゲート・クリスタルと言いますが、そちらの説明をさせてください」
ゲート・クリスタルの説明か。
確かにしてもらっておくべきだな。
「分かった、頼む」
「はい。ゲート・クリスタルも石碑と同じく、転移魔法陣に入れば鳥居まで転移できます。ですがゲート・クリスタルの魔法陣は石碑の10分の1程度となりますから、大人数をお連れすることは難しいです」
となると、最大で5人ぐらいか。
まあ所有者が戻ってくることが前提だから、そこは気にしなくてもいいだろう。
「石板は事前に転移した地点が記録されますので、アルカから転移するとその地点へ戻ることになります。ですがゲート・クリスタルは、記録出来るのは最初に転移した地点のみです」
どちらもヘリオスオーブにいる限りは、必ずアルカの鳥居に転移することが出来るが、アルカから転移ってことになると、石板の場合は事前に転移した場所、ゲート・クリスタルの場合は最初に登録した場所のみってことか。
そう考えると、ゲート・クリスタルは使いにくい気がするな。
「ですが石板と異なり、ゲート・クリスタルは量産が可能です」
量産が可能?
ってことはもしかして、1人で何個でも持てるってことか?
「もしかしてそれって、1人で何個でも使えるってこと?」
「可能です。1つはフィール、1つはフロートを登録させておけば、いつでもそこに転移することができます」
「それだ!」
思わず叫んでしまった。
コンルが何事かと思って涙目になってるが、マジですまん。
「それね。なるほど、ガイア様が仰ってたのって、ゲート・クリスタルのことだったのね」
「そうですね。ゲート・クリスタルでメモリアを登録してしまえば、領代の任期が終わってからでも、リカ様はいつでもアルカに来ることができます」
リカさんとの結婚で最大の障害は、フィールとメモリアの距離だった。
ジェイドやアテナ、エオスなら数時間で着けるんだが、さすがに毎日通う訳にはいかないし、現実的じゃない。
だけど転移で行けるってことなら話は変わる。
なにせ転移は、文字通り一瞬で行き来が出来るんだからな。
「そのゲート・クリスタルだけどさ、1つの石碑から何個ぐらい作れるの?」
「何個でも可能です。石碑を切り出して使うわけではありませんから」
それも朗報だ。
ならリディアとルディアには、ドラグニアを記録させたゲート・クリスタルを、マナとユーリにはフロートを記録させたゲート・クリスタルを、アテナにはウィルネス山を記録させたゲート・クリスタルを持たせることも出来るな。
「良いわね、それ。それにソルプレッサ迷宮の近くも記録させておけば、いつでも行けるようになるわ」
それも良いな。
なにせソルプレッサ迷宮にはドラグーンが多いし、なのに全7層と浅い上に
余裕が出来たら各地を巡って、ゲート・クリスタルを記録させても良いかもしれない。
俺がゲート・クリスタルを使って現地に飛んで、その後で石板を使って戻れば、今度はみんなを連れて再転移出来るからな。
「よし、
「賛成よ」
そういやゲート・クリスタルって、街中にも飛べるんだろうか?
「コンル、ゲート・クリスタルって街中にも飛べるのか?」
「対になるゲート・ストーンを設置すれば可能です。ですがゲート・ストーンを作るには、ドレイクの上位種が必要になります」
ドレイクの上位種ってことは、ウインガー・ドレイクでもいけるか?
生憎と全部売ってしまったが、使う部位、魔石、脳、心臓らしいが、トレーダーズギルドで買えるだろう。
「それは大丈夫だ。ウインガー・ドレイクでもいいんだよな?」
「希少種なら大丈夫です」
よし、それなら何とでもなる。
手に入らなくても、マイライトを探せば1匹ぐらいは見つかるだろう。
「分かった。なるべく急いで用意するよ」
ゲート・クリスタルもだが、用意してもらわないとみんなを呼べないからな。
呼ぶだけなら出来るが、気軽に下に降りれないから、ゲート・クリスタルは急いでもらう必要がある。
「シリィ、中庭に従魔もいるんだけど、大丈夫よね?」
「もちろんです。従魔のお世話も、我々の仕事ですから。どのような種族と契約なされたのですか?」
「今いるのはヒポグリフの希少種だけど、他にカーバンクルやアイス・ロック、バトル・ホースにウォー・ホース、グラントプスもいるわよ」
「……珍しい種族と契約されたのですね」
シリィ達の表情が一瞬怯んだ。
よし、勝った。
「ですが問題ありません。ヒポグリフのお世話はしたことはございませんが、知識としてならございます。それにこの島には牧場だけではなく山や湖もございますから、従魔も快適に過ごせるでしょう。従魔のお世話は、牧場を担当しておりますノンノにお任せください」
「任せてください、皆様。ヒポグリフは初めてお世話しますが、生態は知っていますから」
そういやそうだったな。
ヒポグリフは元々山で暮らしてるわけだし、湖があれば主食の魚にも困らないだろう。
うん、環境的には何も問題ないわ。
「ではマスター、アルカと日ノ本屋敷のご案内に移らせていただきます」
「あ~……そのマスターっての、やめてくれないか?」
「では、大和様とお呼びさせていただきます」
さすがにマスターはむず痒い過ぎだが、普通に様付けになってしまった。
そっちも勘弁してほしいんだが。
「大和は主人なんだから、それは無理よ」
と、あっさりとプリムに言われてしまった。
諦めるしかないのか……。
その後ジェイド、フロライトとコロポックル達の顔合わせを終え、ノンノに世話を任せると、俺達はアルカと日ノ本屋敷を案内してもらうことになった。
「アルカの所在は天樹付近ですが、上空2万メートルの高度にありますから、地上からでは視認することはできません」
「へえ、天樹の近くなのね」
「はい。天樹はヘリオスオーブを支える大樹でもありますから、ここからでも見ることができます」
そう言われて視線を向けると、マジで天樹が隣に見えた。
しかも普通に綺麗な花を咲かせてるじゃないか。
というか上空2万メートルって、ほとんど宇宙じゃなかったか?
いや、ヘリオスオーブは球体じゃないっぽいから、地球の常識に当てはめて考えるのは間違ってるか。
「この高度で活動出来る魔物は存在していませんが、環境維持のため、アルカは結界で覆われています」
あ、やっぱりこの高度で活動出来る魔物はいないのか。
だから環境維持のために結界で覆われてるってのは納得だ。
「ということは、ここから飛んで島の外に出ることはできないってことですか?」
「はい。残念ですが従魔であっても、転移を用いなければ島の外に出ることはできません」
リディアに言われて気が付いたが、そもそも魔物が活動出来る高度じゃないってことなんだから、転移以外で出られないってのは当然の話か。
「また結界は、島からの転落を防いでおります。上空から牧畜などが落ちてくれば、さすがに何かあるのではと思われるでしょうから」
「それは納得だけど、牧畜って、もしかしているの?」
「はい。後程ご案内いたします」
まさか牧畜がいるとは思わなかった。
この島がどれぐらいの大きさなのかは分からないが、自給自足はさすがに辛いんじゃないか?
「牧畜の世話ってどうしてたの?」
ルディアも気になるらしい。
餌の問題もあるし、繁殖の問題もあるからな。
確か親等が近すぎると、遺伝子とかに問題が出るんじゃなかったっけかな。
「時折町に降りて買い付けたり、繁殖のための売買を行っていたりしていました」
一番シンプルな解決方法だな。
分かりやすくていいけど、まさか町に降りたりしてたとは。
「それでは日ノ本屋敷のご案内をさせていただきますが、よろしいですか?」
「ええ、お願いするわ」
Side・プリム
この島、アルカって言ったっけ。
本当に凄いわね。
特に屋敷なんて、
なんで部屋に草が敷き詰めてあるのかと思ったら、あれは畳っていう文化だって大和が教えてくれたわ。
靴を脱いで上がらないと痛めてしまうそうだけど、イークイッピングのおかげですぐに靴を脱げるから、本当に助かるわ。
寝転ぶと気持ちいいし、この匂いもけっこう好きかも。
大和も懐かしい懐かしいって言って、シリィや屋敷担当のレラの案内そっちのけで見て回ってるけど、よく案内なしで分かるわね。
まあそんな大和は、ひとまず放っておきましょう。
なにせ、次に案内してもらうのはお風呂なんだから。
この日ノ本屋敷は、建物が十棟もあるのよ。
一番大きな本殿、その次に大きな副殿が4つ、鍛冶や仕立てなんかに使う工芸殿、従魔や召喚獣の小屋になっている従魔殿、来客用の客殿が2つ、そして湯殿となっているわ。
私達は今、日ノ本屋敷で一番大きなお風呂がある湯殿を案内してもらっているの。
「こちらが浴室です」
「すごい!」
ほらね!
リディアとルディアも目を丸くして驚いてるわ。
「この湯殿は、建物を含めて総檜造りとなっております」
「総檜造り!?だからこんなに良い香りがするんですね!」
「待って、姉さん!すごいよ、あれ!」
そうなのよ!
檜造りのお風呂があることにも驚いたけど、それよりもっとすごいお風呂があったのよ!
こんなお風呂なんて、考えたこともなかったわ!
「湯殿の下層は一面の露天風呂でございます。アルカは結界があり、雲の上に位置している関係上、雨は降りません。いつでも天樹と星空を臨みながらご入浴していただくことができます」
アルカの屋敷には、驚いたことに7ヶ所にお風呂があるそうなの。
特に一番大きな本殿の最上階と南西の建物は露天風呂になってて、しかもどのお風呂も24時間いつでも入ることができるのよ。
魔導具で水の流れを循環させているからだって教えてくれたわ。
しかもいつでも天樹や星空を眺めながらお風呂に入れるなんて、夢みたいよ。
それにしても広いわ。
魔銀亭のお風呂も大きいけど、これはその比じゃない。
滝は流れてるし、小さいけど庭も作られてるじゃないの。
貴族でも、こんな贅沢なお風呂は持ってないわよ。
本殿の最上階にある露天風呂も気になるけど、これだけでもここをユニオン・ハウスにする価値があるわね。
もっとも、フィールにもユニオン・ハウス建てておく必要はあるんだけどね。
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