婚約報告
「いつでもいらしてください」
儀式の翌日、にこやかな笑みを浮かべるガイア様に見送られて、俺達はクリスタル・パレスを後にした。
アテナ・ウィルネス・アースライト・トマリ
84歳
Lv.34
竜族・ドラゴニアン
竜名:アースライトドラゴニアン
エオス・ウィルネス・グリーン
117歳
Lv.52
竜族・ハイドラゴニアン
竜名:グリーンドラゴニアン
バトラーズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア
バトラーズランク:ゴールド(G)
ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア
ハンターズランク:ゴールド(G)
これがアテナとエオスのライブラリーだな。
エオスはGランクバトラー兼Gランクハンターだが、アテナはどこのギルドにも登録してないから、ハンターズギルドに登録することにしている。
さらにウイング・クレストへの加入手続きもしなきゃだから、報告が終わったらハンターズギルドに行かなきゃな。
その前に竜王城に登城して、フォリアス陛下に俺とアテナと婚約し、マナがエオスと竜響契約を結んだことを伝えなきゃいけないんだが、また何か面倒事が起きそうな予感がするんだよなぁ。
「ふざけるな!
はい、案の定問題が起きました。
竜王城の謁見の間で、例のナールシュタット・ニズヘーグ公爵が、俺とアテナの婚約にケチ付けてきやがったよ。
「その線で行くと、その平民と結婚した私も、ハイドラゴニアンと竜響契約を結ぶのは許されないってことかしら?」
「当然だ!陛下、これはアミスターが、バレンティアを侵略するための布石です!すぐにでもドラゴニアンをアミスターに向かわせ、刺し違えてでも国王の命を奪わせるべきです!」
フォリアス陛下も頭を抱えてるが、ナールシュタットに向ける視線は冷たい。
ラインハルト陛下はそんなつもりは一切ないし、そもそも俺の婚約もマナの契約も、そのドラゴニアンの長から認められてるんだから、ドラゴニアンが動くわけないだろうに。
「ナールシュタット公爵、あなたは国を滅ぼしたいのですか?」
「何を仰います!私は国のためを思ってこそ、進言させていただいているのです!」
「ナールシュタット公爵、そもそもの前提が、そなたは間違っている。まず彼らがバレンティアに来たのは、ガイア様の招待を受けたからだ。そしてそのガイア様が、アテナ様の婚約とエオス嬢の契約をお認めになられているのだから、外野が口を出せるような問題ではない」
「しかもそれがアミスターの侵略行為と断ずるなど、浅慮にも程がある。そなたの理屈で言うなら、ガイア様もアミスターに協力していることになるのだぞ?そうであるなら、ドラゴニアンの協力など得られるわけがなかろう?」
ヘルトライヒ公爵とハルート王子も呆れながら口を開くが、それでもナールシュタット公爵は納得した様子はない。
それどころか、俺に対して殺気まで叩き付けてきてやがるんだが?
「それと、ドラゴニアンに刺し違えろなどと、私はそんな命令を下せませんし、下すつもりもありません。しかもアテナ嬢の前でそんなことを言い切ったのですから、いかにあなたと言えど、処罰は免れませんよ?」
「そうだな。最悪の場合は首を差し出してもらうことになるだろうが、とりあえずとしては蟄居してもらうことになるだろう」
「そ、そんなことをすれば、アミスターが図に乗るだけです!陛下、お考え直し下さい!」
こいつ、どうあってもアミスターと敵対したいのか?
竜響契約を結んでいるとはいえ、ドラゴニアンは正当な理由がなければ竜騎士団にも手を貸さないし、契約によって竜騎士も戦場に出ることを禁じられている。
そもそもの話として、ニズヘーグ公爵領にはドラゴニアンはいない。
ハンターとして
そのドラゴニアンも、ナールシュタット公爵のことは要注意人物ってことで知らされてるそうだから、協力する可能性はないが。
「考え直すのはあなたです。何度も言いますが、アテナ嬢の婚約とエオス嬢の契約は、ガイア様が望まれたものです。それを理由にアミスターを攻めるなど、逆にドラゴニアンによって国が滅びることになるでしょう。その前にここにいる大和殿によって、我々は皆殺しにされることになるでしょうが」
いや、そんなことはしませんよ?
「この場で正式に処分を通達します。ナールシュタット公爵、他国の姫君への暴言、ガイア様をはじめとしたドラゴニアンへの侮辱、
「へ、陛下!」
「下がりなさい。これは命令です。それと大和殿、申し訳ありませんが続きは場所を移させてください」
「わかりました」
最初は王家の居住区に案内される予定だったんだが、こいつがいたせいで謁見の間になってたんだから、処分を下した以上は場所を移すってのには賛成だ。
なので俺達は、先日も通された王家の居住区にある応接室に来ている。
「大和殿、マナリース姫、アテナ嬢、皆さんも、不快な思いをさせたことを謝罪させていただきます」
「謝罪は受け取ります。ですが陛下、あの男は必ず、何か良からぬことを仕出かしますが、あのような軽い処分でよろしいのですか?」
「あんな愚物でも、公爵家の者ですからね。私の勝手な判断で爵位を取り上げることはできません。ヘルトライヒ公爵は賛成してくれるでしょうが、下手な手を打つと他の貴族達の反発を招きますから」
アミスターは王の権威が強いが、バレンティアはそうじゃないのか。
いや、フォリアス陛下は去年即位したばかりだってことだから、舐められてるってのもあるんだろうな。
ヘルトライヒ公爵はしっかりと陛下を支えてくれてるわけだから、全部の貴族がってわけじゃないのが救いか。
「とはいえ、さすがに今回の件は目に余る。アミスターだけではなくドラゴニアンまで敵に回そうなど、正気の沙汰ではない」
「既にソレムネやレティセンシア辺りから、隷属の魔導具を手に入れてるってことはあり得ませんか?」
多分ナールシュタット公爵は、過去の愚竜王と同じくドラゴニアンを隷属させたいんじゃないだろうか?
ドラゴニアンはウィルネス山でしっかりと躾けられるから、犯罪を犯した者は誰もいない。
だが隷属の魔導具を使われた者がいないかというと、そんなことはなかったりする。
伴侶と旅をしていたドラゴニアンがソレムネに立ち寄ったことがあるそうだが、その際に伴侶は殺され、当人は隷属の魔導具を使われてしまったらしい。
当然ドラゴニアンは激怒し、当時は存命だったルビードラゴニアン、サファイアドラゴニアンを筆頭に、ハイドラゴニアン数人がソレムネに向かっている。
同行したハイドラゴニアンに
結局途中で力尽きてしまったそうだが、それ以降ソレムネはドラゴニアンにとって忌むべき国となっており、訪れるドラゴニアンは誰もいない。
愚竜王が即位したのはその後らしいが、ドラゴニアンに隷属の魔導具を使おうっていう考えは、ソレムネへの襲撃事件があるからだったようだ。
もちろんバレンティアにとっても禁忌となっていて、王家のみならず貴族にも伝わっている話だから、ナールシュタット公爵だって知らないはずがない。
にも関わらずドラゴニアンを従魔扱いし、もしかしたら隷属を強いようと考えてるかもしれないわけだから、正気を疑われても仕方がない。
「その可能性は否定できないな。とはいえ、ドラゴニアンを隷属させたところで得る物はないし、むしろ滅亡が確定するわけだから、さすがに手を出したりはしないだろう」
そら確実にドラゴニアンの怒りを買うわけだから、下手したらニズヘーグ公爵領そのものが消えるしな。
「以前から疑問に感じていたのですが、ソルプレッサ迷宮は攻略されていないのですか?」
「はい、ユーリアナ姫の仰る通り、未攻略です。ソルプレッサ迷宮は全7階層ということが判明していますが、その代わり強力な魔物も多いそうなのです」
未攻略の
現在の最高到達階層は第28階層だが、その時点で既にPランクモンスターの巣になっていて、さらに深層があることが確実視されているからな。
ほとんどはこのタイプになっているが、もう1つは階層は少ないが、魔物は強力な種のみになっているため、攻略の難易度も高い。
ヘリオスオーブでも数ヶ所しかないそうだが、ソルプレッサ迷宮はこのタイプらしく、第1階層からBランクモンスターがお出迎えしてくれて、第4階層にはPランクモンスターのレッサー・ドラグーンが普通に歩いてるそうだ。
最下層になる第7階層は、Mランクモンスターがうようよいるって話だから、普通のハンターなら攻略しようとは考えないか。
「それは……確かに攻略は無理ですね……」
「はい。
通常の
つまりソルプレッサ迷宮は、ヘリオスオーブでも最難関の
面白そうだし行ってみたい気もするんだが、レティセンシアの動き次第じゃすぐにでもアミスターに戻らなきゃならないから、さすがに時間が足りない。
最短なら2日、長くても数日あれば最下層に行けるだろうって話だし、
なんで生物だって言われてる
だから魔物に襲われる心配はないんだが、代わりに人間に襲われる可能性がある。
襲った側は盗賊扱いになるから始末しても問題はないし、
しかも驚いたことに、盗賊はクエスティングで確認できたりもするそうだから、そこから名前が判明して、ライセンス剥奪はもちろん、
クエスティングは
だが使い手の多くはハンターでもあるから、盗賊がハンターを狙うことはほとんどないそうだ。
「ですが
確かにな。
しかもナールシュタット公爵が動いた場合に対する備えもあるんなら、急いでソルプレッサ迷宮を攻略する必要もなさそうだ。
「それでは私達は、当初の予定通り、あと数日ドラグニアに滞在し、アミスターに帰ることに致します」
「わかりました」
アミスターへの帰路は、エオスが竜化して飛んでくれることになっている。
獣車の重さは1トンもないが、それでも20人乗れば2トンを超えてしまう。
だけどミラーリングが付与されてるから、ミラールームの方に移動しておけば俺達の重さは無視できるため、エオスにも負担は少ない。
さらに落下防止用に、エオスと獣車をベルトか何かで結び付けておけば、落ちる心配もない。
獣車の大きさは小型トラックより一回り大きい程度だから、グリーンドラゴニアンの姿になると20メートルを超えるエオスなら持つことも十分可能だ。
しかもエオスはドラゴニアン最速で、フロートやメモリア辺りまでなら1日で飛べるってことだから凄い。
後はアテナの槍とエオスの手斧、それからアーマーコートが出来れば完璧だが、そこはエド達に頑張ってもらうしかない。
さて、報告も終わったし、ハンターズギルドに行くとしますかね。
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