バレンティア竜王家
ナールシュタット・ニズヘーグ公爵を追い出した後も、竜王城の謁見の間での話は続く。
「ではプリムローズ嬢とアプリコット夫人の亡命は、獣王も認めたと?」
「そのようです。同時にOランクオーダー大和との結婚も広めているようですから、彼女達がバリエンテの内乱に巻き込まれることはないでしょう」
場合によってはこっちから首を突っ込むことになるんだが、なし崩し的に巻き込まれる可能性がなくなっただけでもありがたい。
「その話は、バレンティアでも聞いています。グランド・ハンターズマスター以来、数十年ぶりに進化したエンシェントヒューマンであり、レティセンシアの暗躍から国を救った英雄。その功績から天騎士(アーク・オーダー)の称号を受け、Oランクオーダーになられたとか」
いや、英雄とかマジ止めて。
こっ恥ずかしくて仕方ないから。
「仰る通りです。ですがそれについて、兄から竜王陛下への書状預かっております。お検め下さい」
「新王陛下から?分かりました」
マナがアイザック宰相にラインハルト陛下からの書状を手渡し、そのアイザック宰相が少し確かめてからフォリアス陛下の手に渡る。
「……は?」
書状2枚あるようだが、1枚目の途中で、フォリアス陛下からそんな言葉が漏れた。
「申し訳ないですが、場所を変えます。同席するのは宰相とヘルディナ、ハルート兄上、フレイアス、それからヘルトライヒ公爵のみです」
そう言うフォリアス陛下は、アイザック宰相に二言三言伝えてから謁見の間を後にした。
ヘルディナ・ドラグ―ル・バレンティア王妃、ハルート・ドラグ―ル・バレンティア竜騎士団長、副団長で俺の義父になるフレイアスさん、そしてヘルディナ王妃の父になるヘルトライヒ・リンドヴルム公爵か。
ナールシュタットと違って、ヘルトライヒ公爵は信用できるってことなんだろう。
「ではマナリース殿下、ユーリアナ殿下、大和殿、ウイング・クレストの皆様、ご案内致します」
貴族達に絡まれないように、アイザック宰相が俺達の案内をしてくれるようだ。
ナールシュタット公爵にタンカ切った時の俺の魔力は貴族達も感じてたと思うが、それとこれとは話が別だし、アミスターでも俺とお近づきになりたいって考えてた貴族は多かったから、アミスターより権力とか財力とかに物を言わせてるバレンティアの貴族が考えないわけがない。
だからアイザック宰相が案内してくれるのは助かるんだが、貴族が何をしてくるか分からないから、俺とプリムが最後尾を歩いて、誰かが連れ出されたりしないように気を配っておこう。
別室で30分程待たされた頃、準備が整ったということで、王家の居住区にある応接室に通された。
既にフォリアス陛下、ヘルディナ王妃、ハルート王子、ヘルトライヒ公爵、アイザック宰相、フレイアスさんは席に着いていて、近衛竜騎士も配置についている。
「お待たせして申し訳ありません。この書状の内容を、この場の皆にも知っておいてもらう必要がありましたので」
部屋の準備もだが、よく30分で教えられたな。
書状の内容は知らないが、それでも俺やプリムに関することのはずだから、30分じゃ時間が足りない気もするし、信じられる内容だとも思えないんだけどな。
「短時間でご説明を終えられたのですか?」
「一応、としか言えませんが。さすがに信じ難い内容ですが、事実がどうであれ、天樹城には魔石という証拠も献上されたそうですから、信じないわけにもいきません」
「お気持ちは心からご理解できます」
マナの言葉に同意するように、ウイング・クレストのメンバーが首を縦に振る。
プリムも頷いてるが、お前も俺と同類だからな?
「そしてプリムローズ嬢が、実はエンシェントフォクシーだと。だがバリエンテとの問題があるため、あえて伏せ、レベルは勿論ライセンスも公開せず、Pランクのハイハンターとして通している。手が込んでいますが、現状を考えれば仕方ないのでしょうな」
ヘルトライヒ公爵がプリムのことを言及し、プリムがライセンスを見せるが、ライセンスは偽造が不可能だから、記されてる内容は疑いの余地が一切ない。
「両国に亡命が認められたとはいえ、レオナスのことがあるからプリムローズ嬢のことは伏せておく必要がある。これは俺も理解できる。できるんだが……ライセンスを見る限りじゃ、レベルも高すぎる。しかも2ヶ月足らずでここまでレベルを上げてるという話だから、エンシェントクラスに必ず進化すると言われているレベル70に達するのも、時間の問題な気もするな」
ハルート王子が呆れたように口を開くが、それに関しては俺も同感だ。
「それもあり得ないお話ですけど、一番あり得ないのは、終焉種を倒してしまったことです。その時点で信じられないお話だというのに、大和様とプリムローズ様がそれぞれ単独でオーク・エンペラー、オーク・エンプレスを倒したなど、物語でも聞いたことがありませんよ?」
ヘルディナ王妃が何とも言えない顔で俺とプリムに視線を向けるが、アミスターでも散々言われてきたから、既に耐性が付いている。
何を言われても何ともないわい、と強がってみる。
「そのお気持ちも、心からご理解できます。私達も何を言われたのか、最初は理解できませんでしたから」
「そうでしょうね」
「というか理解できる者がいても、必ず頭の中身を疑われるな。荒唐無稽にも程がありすぎる。だが両終焉種の魔石は天樹城に献上され、宝物庫で厳重に保管されているとのことだし、アミスターに来ることがあればお見せするとまで書かれていたからな。さすがに信じないわけにはいかんよ」
そこまで書いてたのな。
「ああ、今更ではありますが、近衛竜騎士達には守秘義務を課してあります。契約魔法を使っていますから、彼らから漏れることはありません。無論、我々も他言するつもりはありませんよ」
「ご配慮、感謝致します」
近衛騎士が重要な機密を知る機会は、それなりに多いみたいだし、アミスターでもロイヤル・オーダーが契約魔法を使ってたから、それは仕方ないか。
「そっちも気になったが、俺としてはクラフターズギルドで公表された新技術に興味がある。エンシェントクラスの魔力にも耐えるということは、ハイクラスでも問題なく使えるということだからな」
ハルート王子はそっちが気になるのか。
レベル44のハイドラゴニュートらしいから、気持ちは分からなくもない。
「フレイアスに剣を贈ったそうだな?個人から個人へ、しかも婚約の挨拶としての品だから取り上げるようなことはせんが、それでも現在バレンティアにあるのはその一振りと、ハンターがアミスターで手に入れた数本だけだ。幸い全員がハイクラスだから強奪は起きてないが、このままで良いとも思っていない」
「竜騎士団を優先するか、ハンターにも提供するか、これは私達の間でも意見が割れているのです。私はハンターにも提供するべきだと思っているのですが、ハルート兄上は竜騎士団を優先すべきだと仰っています。ヘルトライヒ公爵も竜騎士団優先ですが、全団員一斉ではなく、ハイクラスを優先させるべきと考えていますから」
それはフレイアスさんからも聞いている。
特にバレンティアは、金剛鉄(アダマンタイト)は自前で用意できるが、魔銀(ミスリル)と晶銀(クリスタイト)はアミスターから輸入するか、迷宮(ダンジョン)から手に入れるしかない。
だからバレンティア全土に供給するにしても、アミスターより時間がかかる。
「私達の意見を言わせていただくなら、竜騎士、ハンターの別なくハイクラスに優先すべきです。そもそも新技術、合金はハイクラスのために作り出されたと言っても過言ではありません。晶銀(クリスタイト)が必要になるため、数を用意するために時間が掛かることは理解しますが、それを理由にハンターを後回しにしては、バレンティアのためにもなりません」
俺も同感だ。
晶銀(クリスタイト)を自前で用意できるアミスターなら、オーダーズギルドを優先しつつもハイハンターへの供給が可能だったが、バレンティアじゃそうはいかない。
だからどう扱うかで紛糾してるんだろうが、俺は国のためにじゃなく、自分のために合金の知識をエドに伝えて作ってもらったんだから、竜騎士団全体よりハイハンターにも提供するべきだというフォリアス陛下を支持する。
「竜騎士、ハンター問わず、ハイクラスを優先か。だがそれでは、竜騎士団の士気を上げられん。やはりハンターなどより、竜騎士を優先すべきだ」
「そのセリフ、聞き捨てなりませんね。そのハンターがいるから、魔物の脅威を減らすことができてるんでしょう?それともバレンティアじゃ、竜騎士が魔物を狩ることを生業としてるんですか?」
ハルート王子のセリフは、ハンターとして容認できるものじゃない。
本心からじゃなく、竜騎士団の装備を一新したいっていう気持ちが出てるだけなんだろうが、そんなセリフが出るってことは心のどこかじゃそう思ってるってことにもなるはずだからな。
「そのような事実はないですな。大和殿、ハルート殿下はアミスターのオーダーズギルドが装備を一新したように、バレンティアもそうするべきだとお考えなのです」
ヘルトライヒ公爵のセリフにバツの悪そうな顔をするハルート王子。
ようするに、羨ましかったってことか。
「オーダーズギルドが装備を一新したのは、レティセンシアという脅威があったからです。ハイクラスは武器はもちろん、防具でさえも頻繁に交換する必要があります。しかもとある理由から、ハイオーダーの装備を更新するだけでは済まないと判断されたため、一般オーダーも含めて新装備を開発することになったのです」
とある理由って言っても、装備のデザイン変更嘆願が多過ぎたからってだけだけどな。
「その理由とは、レベルについての仮説ですね?」
あら、違った。
というか、それも書いてあるのかよ。
ラインハルト陛下、いくらなんでも情報与えすぎじゃありませんか?
いや、それだけバレンティアが信用できるってことなんだろうけどさ。
「はい。兄だけではなく父やグランド・オーダーズマスターでさえ、その仮説に異議を唱えることはできませんでした。事実、リディアとルディアはハイドラゴニュートに進化していますし、このラウスも進化目前と言っても過言ではありません」
マナに話題に上げられたリディア、ルディア、ラウスの3人が、聞いてないとばかりに目を見開く。
俺も聞いてなかったんだから、そりゃそうだろうな。
「馬鹿な。俺の記憶が確かなら、リディアとルディアはBランクになると同時に旅に出たはずだ」
信じられないとばかりにフレイアスさんに視線を向けるハルート王子。
「殿下のご記憶の通りです。私も2人のためになると思い許可を出しましたが、まさかたった数ヶ月で婚約はおろか、進化までして帰ってくるとは思ってもいませんでした。リディア、ルディア、ライセンスを」
「え?あ、はい」
フレイアスさんに促されてライセンスを出すリディアとルディア。
自分もそうした方がいいと思ったのか、ラウスもライセンスを出してるな。
「ほ、本当に進化しているわ……」
「しかもレベル45とは。信じられませんが、ライセンスにそう記されている以上、疑念の余地はありませんね」
「それも驚いたが、俺としてはこっちのラウスっていうガキの方が驚きだ。まだ13歳なのに、レベル42だと?こんな話、聞いたこともないぞ」
王家3人が驚きの声を上げるが、どっちも普通ならあり得ないらしいからな。
特にラウスはエトラダでの一件があるから、進化しても貪欲に上を目指すだろうが。
「確かにこれほどまでに明確な理由があるなら、アミスターがオーダーズギルドの装備一新に踏み切る理由もわかります。バレンティアもそうしたいのですが、残念ながらそこまで晶銀(クリスタイト)を用意することはできませんから、やるとしても武器が精々でしょう」
「ただでさえ強大なアミスターが、さらに強大になるか。もっとも、その力を我が国に向けないことの証拠として、レベルアップの仮説まで記しているのだから、我々としても喜ぶべきことなんだろうが」
ああ、だからその仮説も書状に書いてたのか。
言われてみれば、もっともな話だな。
「結果を見せられた以上、ますます竜騎士団を優先したくなるが、エンシェントヒューマンを怒らせてまでする意義は見出せん。他国に侵略されるとなると話は別だが、バレンティアへの侵攻は200年近く前のソレムネだけしか記録もない。経験のために魔物を狩らせてはいるが、それでもハンターとの諍いを起こすべきではないか」
竜騎士はオーダーズギルドより少なく、500人程しかいないらしい。
衛兵とか貴族が自分達で組織した私設竜騎士団を合わせると5,000人を超えるそうだが、それでもハイクラスは200人程度らしいし、ライバートさん達ドラゴネス・メナージュ程の実力は持っていない。
対してハンターは、ドラゴネス・メナージュを筆頭に300人以上のハイクラスがいるそうだから、戦力的にも経験的にも、いざとなったら力を借りることになる。
なのに見栄を優先してたんだから、ハルート王子の考えはよく分からん。
いや、分かることは分かるんだが、それでも国のためを考えたら、割り切れそうなもんだけどな。
「防具の装甲だけ、後で交換できるようにしとけばいいと思うんだけどな」
「それはどういうことだ?」
ボソッと呟いた一言に、ハルート王子が反応した。
しまった、ハイドラゴニュートだから五感は鋭いんだった。
「ああ、失礼しました。竜騎士が魔銀(ミスリル)と金剛鉄(アダマンタイト)のどちらを使っているかは知りませんが、そちらの近衛竜騎士の方々を見る限りじゃ、特にフル・プレートアーマーというわけじゃないですよね?」
「さすがにな。いくらイークイッピングがあるとはいえ、ワイバーンに乗って戦うわけだから、フル・プレートアーマーなどは着れんよ。だから革鎧に、魔銀(ミスリル)製の装甲を一体化させている」
そりゃそうか。
いくら魔銀(ミスリル)製でも、フル・プレートアーマーはくそ重いんだから、フィジカリングやマナリングで何とかなる人間と違って、ワイバーンにとっては負担でしかない。
「でしたら合金はハイクラスの証にして、進化してから装甲だけ交換すれば良くないでしょうか?」
もちろん最初にそう出来るようにデザインしておく必要はあるが、そうすれば進化しても1から装備を作り直す必要もなくなるだろうし、その度に翡翠色銀(ヒスイロカネ)や青鈍色鉄(ニビイロカネ)を用意すれば良いわけだから、コストも抑えられるんじゃないかと思う。
「そうか!確かに全ての竜騎士の装備を、合金とやらにする必要はない。いずれはそれも視野に入れておきたいが、それを踏まえて装甲を交換できるデザインにしておけば、装甲が破損した場合はもちろん、ハイクラスに進化した場合でもすぐに対応できる。フォリアス、これならどうだ?」
「そういうことでしたら構いませんが、武器は後回しになりますよ?」
「構わん。もちろんハイクラスの竜騎士には急ぎ回してもらいたいが、それ以外は防具が優先だ。なにせオーダーズギルドが装備を一新したという噂が広まって以来、嘆願が増える一方だったからな」
興奮するハルート王子に苦笑するフォリアス陛下だが、バレンティアでもそんな嘆願があったのかよ。
まあ近衛竜騎士の鎧でさえ武骨な感じだし、女性としてはちょっといただけないデザインな気もするが。
「気持ちは分からんでもないですな。特に大和殿の鎧は実に見事だ。それが噂に聞く天騎士(アーク・オーダー)専用の鎧なのでしょう?」
「はい。王代陛下が製作し、新王陛下から下賜していただきました」
ヘルトライヒ公爵が興味深そうに俺のアーク・オーダーズコートに視線を向けてくるが、派手ではあるが格好良いのも間違いないからな。
コスプレ感がないわけじゃないが。
「このアーク・オーダーズコートに関しては、私達としても頭の痛い素材を使っていますが、天騎士(アーク・オーダー)は現在3名しかおりませんから、その名に相応しい装備だと自負しております」
マナが補足してきたが、確かにグリフォンの革は頭痛いだろう。
俺だってそう思ってるんだからな。
「ほう。王代となられたアイヴァー様の作か。さすがに一流のクラフターだけあって、実に美しい。だが頭の痛い素材とは?」
「それは後程、話を終えてからでもよろしいでしょうか?」
「何故だ?」
ハルート王子も興味を持ってきたが、マナは先に話を進めたいらしい。
「聞けば、この後の話が進まなくなるからです。下手をすれば、忘れられてしまう可能性すらありますね」
大きく首を縦に振る我がウイング・クレスト。
そこまでか?
「それは……なんというか、聞くのが怖くなりますね……」
「ですね。ですが私も興味がないわけではありませんから、先に話を進めましょう。聖母竜(マザードラゴン)ガイア様からの招待についての話を」
やっとここまで来たかって気持ちもあるし、ついに来たかって気持ちもある。
俺達がバレンティアに来たのは、聖母竜(マザードラゴン)に招待されたからだからな。
「まずガイア様への面会ですが、明日を予定しています。私とヘルディナも同行しますが、あなた方とは別に目的があるためですので、先に戻ってくる予定ですけど」
「別の目的、ですか?」
「はい。少々照れくさいのですが、ガイア様のご息女を、王妃として迎え入れることになったのです。今回のウィルネス山行きは、そのための準備になります。ああ、元々近い内にウィルネス山に行く予定でしたから、あなた方に同行するのは偶然ですよ」
そういうことか。
今までドラゴニアンが王妃になったことはないそうだが、フォリアス陛下はヘルディナ王妃の伝手でウィルネス山に赴いた際、ガイア様の娘と運命的な出会いを果たしたらしい。
だからその娘さんを王妃にするために、今まで準備を進めていたそうだ。
ヘルディナ王妃にとっても知己とのことなので、夫婦間での話し合いはすぐに終わったとも言ってたな。
「ということは陛下、彼がガイア様に招待された理由は、ご存知ではないのですか?」
「ええ、申し訳ないですが知りません。そもそもガイア様は、必要がなければ教えようともしてくださらないですからね。ただ彼を招待した以上、歓待したいというわけではないと思いますが」
俺達もそう思ってたが、ここでも招待された理由はわからずか。
ガイア様は200年以上生きてるって話だし、ドラゴニアンってこともあるから、俺達とは思考が異なってるってことなんだろうか?
「大和、他に聞いておきたいことはある?」
「いや、大丈夫だ」
こうなったら直接、ガイア様に聞いた方がいいだろう。
「では明朝9時に登城をお願いします。麓までは迎えが来ることになっていますから、そこまでは獣車で行くことになりますね」
「分かりました」
麓までは獣車で2時間ぐらいだから、昼飯は用意しといた方が良さそうだな。
「もう少し掛かるかと思っていたが、殊の外早く終わったな。では早速、その鎧に使われている素材を教えてもらうか?」
予想外に早く話が終わったことで、嬉々としてハルート王子が質問を再開してきた。
「そうですね、では逆にお尋ねしますが、ハルート殿下は何が使われていると思いますか?」
「当ててみろと言う事か。面白い。そうだな、珍しい魔物が使われているようだから、異常種の革ではないか?フロート近郊となると、テンペスト・ライガーやグランディック・ボアが出ると聞いたことがあるぞ」
自信満々に応えるハルート王子だが、残念ながら外れだ。
「正解はグリフォンです。イデアル連山の宝樹を巣にしていましたから、それを狩ってきました」
「……グリフォン、だと?」
「え?グリフォンって、確かMランクモンスターじゃありませんでしたか?」
「そ、そうですな。しかも、限りなくAランクに近いとされている……」
グリフォンなんて、アミスターでも数十年ぶりって話だったからな。
バレンティアにはいないそうだが、それでもMランク最上位の魔物ってことで認知度は高いから、知らない人はほとんどいないらしい。
そのグリフォン討伐の話を詳しくしたら、盛大に驚かれてしまったな。
確かに空を飛んでるから面倒だったが、それでも生物である以上弱点はあるし、高ランクモンスターが敬遠されてた理由は武器と魔力の問題が大きいと思うぞ。
実際リディアとルディアは、2人でG-Uランクモンスター ヘビーシェル・グリズリーを倒してるし、ラインハルト陛下やエリス様、マルカ様だって、3人でスカイ・サーペントやヘビーシェル・グリズリーを倒してるんだから。
それを伝えたらハルート王子の顔が輝いたから、余計なことを言った気がしなくもない。
フォリアス陛下は思慮深いっていうか、文官系の人っぽいが、ハルート王子は良く言えば武人、悪く言えば脳筋だな。
あと1人、間に兄弟がいるらしいが、結婚先の貴族家の跡取りとして勉強中って話だから、会う機会はなさそうだ。
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