王都への帰路
Side・ラウス
イデアル連山で、普通なら死ぬしかない狩りから生還した俺達は、マナ様のスピカとミーナさんのブリーズが引く獣車で王都に向かっている。
ジェイドとフロライトはグリフォンと激しい戦いを繰り広げてたし、イデアル連山の麓まで俺達を乗せてきてくれたこともあるから、今は獣車の中で寝ているよ。
「生きてるって素晴らしいなぁ……」
「いきなりどうした?」
一緒に御者席に座ってる大和さんに俺の呟きが聞こえたみたいだけど、そう言いたくもなりますよ。
「普通あんな高ランクの魔物に、しかもあんな数に襲われたりしたら、死ぬしかないんですよ?なのに生還できたどころか全滅させたんだから、そう言いたくもなりますよ」
そう、イデアル連山の宝樹の下で、俺達はとんでもない質と数の魔物に襲われた。
普通なら生き残ることはできないって断言できる状況だったのに、俺の師匠でもある大和さんとプリムさんが倒してくれただけじゃなく、的確な援護で俺達を助けてくれたおかげで、俺達は誰1人欠けることなく、無事に生還することができたんだ。
だから俺は、今を生きてる喜びを噛みしめながら、空を仰いでいるんだよ。
「結果良ければ全て良しってな」
「その結果がとんでもなさすぎるから経緯も聞かれてきてたってこと、覚えてます?」
そう言うと目を逸らす大和さん。
しっかり覚えてるし自覚もしてるな、これは。
あれ?
「大和さん、あれ、何ですかね?」
大和さんにジト目を向けた直後、俺の視界に何かが見えた。
形からすると獣車か何かかな?
「あれは……獣車っぽいな。なんであんなとこで……。ジェイド、出てこい!ラウス、行くぞ!」
「え?」
「あの獣車、盗賊に襲われてる!急がないとマズいぞ!」
と、盗賊!?
ここ、王都の近くなのに、なんで盗賊なんかがいるの!?
いや、考えるのは後だ!
今は急いで、襲われてる人達を助けないと!
「プリム、俺とラウスは盗賊を倒してくる!獣車は頼んだ!」
「わかった、気を付けて!」
俺は大和さんとジェイドに乗って、急いで獣車の元へ向かった。
「俺はニブルヘイムを展開させて空から行くから、ラウスはジェイドに乗ったまま突っ込め。ジェイド、ラウスを頼む」
「クワッ!」
「わかりました!」
そう言うと大和さんは、ジェイドの背からフライ・ウインドっていう刻印術を発動させて飛び立った。
翼族でもないのに飛べるなんて、本当に俺の師匠は無茶苦茶だよ。
俺はジェイドに乗ったままイークイッピングを使ってアーマーコートを着用し、ラピスライト・ソードとラピスライト・シールドを構える。
従魔に乗って戦うのは初めてだけど、ジェイドは俺の言う事もしっかりと聞いてくれるから、多分大丈夫だと思う。
「ジェイド、氷の矢を放って、盗賊を獣車から離してくれ!」
「クワッ!」
了解って感じで鳴いたジェイドは、すぐに氷の矢を放ってくれた。
「なっ!?」
「これは矢?いや、
「馬鹿な!?アミスターごときに、こんな使い手がいるのか!?」
アミスターごとき?
普通の盗賊は、そんなこと言わないはずだけど……。
よく見たらこいつら、見るからに盗賊って感じの奴もいるけど、しっかりとした鎧を着込んでる奴も何人かいるぞ。
っと、今はそんなこと考えてる場合じゃないや!
俺はジェイドに頼んで、獣車と盗賊の前に駆け込んでもらった。
「げばっ!?」
「ヒポグリフだと!?」
すれ違いざまに剣の腹で1人を吹っ飛ばして、その勢いでジェイドから飛び降りる。
フィジカリングとマナリングを使うことで、着地の衝撃を和らげることも忘れない。
あー、まだイデアル連山の戦いで使った魔力が戻ってないから、けっこうキツいぞ、これは。
「お前ら、何してるんだ!?」
「ガキ?まさかこんなガキが、ヒポグリフと契約してるってのか?」
「そんなことはいい。ここでヒポグリフが来るとは思わなかったが、目的を忘れるなよ?」
「そうは言っても、見られた以上はあのガキを始末しなきゃじゃないかい?」
それはそうだろうけど、簡単にやられるつもりはないし、大和さんだって空で準備してるんだから、お前らに逃げ場はないよ?
「そうだな。我が国のためにも、この女は必要だ。見られた以上、このガキには死んでもらう。そのヒポグリフも高く売れるだろうから、臨時収入としても申し分ないからな」
「あのガキの装備も、けっこう良さそうだよね」
「というか殺すぐらいならさ、あたしにくれない?可愛い顔してるから、ペットとして飼ってみるのもいいと思うしさ」
「それなら私にも貸してよ」
勝手なこと言ってるけど、我が国ってことは、こいつらはアミスターの人間じゃないし、盗賊でもないな。
「に、逃げて……」
「え?」
獣車の中から声が聞こえたけど、無事だったんだ。
「あの者、達は……レティ、センシア、の……騎士、達です。私を人質に……」
レティセンシアの騎士?
それに人質って、またレティセンシアが、アミスターにちょっかい出してきたのか!
フィールやトライアル・ハーツのことだけじゃなく、こんなことまでしてくるなんて、本当になんて国なんだよ!
「大丈夫、絶対に守るから!ここにいるのは俺だけじゃなく、師匠だっている。だから君は、絶対に助かるよ!」
女の子がどんな状況なのかは分からないけど、それでも生きることを諦めちゃダメだ。
「恰好つけちゃって。ますます可愛いじゃない」
「ああいう子って、壊したくなるよねぇ」
相手の女の人が、俺をすごくイヤな目で舐めまわす。
気分悪くなってくるな。
「俺はおばさんに興味はないんだよ!」
「「お、おばっ!」」
おばさんって言葉で、女の人が固まった。
ざまあみろ。
「はーっはっはっは!おばさんとは言うじゃねえか。確かに30近いんだから、おばさんだよな!」
「黙りな!このガキ、せっかく生かしといてやろうと思ってたのに!」
「絶対に許さないよ!あんた達も何度も相手してやったってのに、なんて言い草だい!今度からは相手してやらないよ!?」
「それは勘弁だ。国に帰らなきゃ娼館にも行けないんだからな」
「ならそのためにも、さっさとあのガキを始末して、目標を連れて行くとするか」
ふざけた奴らだけど、そんなことは絶対にさせない。
ラピスライト・ソードを構えて、いつでも戦える準備を整える。
全部で5人いるから、俺から突っ込むのは危険だ。
だけど先手を取らないといけないから、手段は1つ。
「ジェイド、頼む!」
「クワアッ!」
俺より圧倒的に強いジェイドに頼むこと、これが一番確実だ!
「がふぁっ!」
「な、なんだっ!?げはっ!!」
ジェイドが使えるのは
しかも俺より威力も精度も高いから、2人の男があっという間に吹っ飛んだ。
「たあああっ!!」
ヒポグリフが
俺は全力で駆け寄って、ラピスライト・ソードを袈裟懸けに斬り付けた。
「あ、ああ……」
ラピスライト・ソードの一撃を受けた女は、白目を剥いて血を流しながら倒れていく。
「こ、このガキ!」
残った男が、手にしてた剣を俺に振り下ろしてきたけど、その攻撃はラピスライト・シールドでしっかりと受け止める。
うわ、思ってたより重い!
「なんだ、この盾?」
「このガキを殺してから確認しな!」
しまった!
攻撃に気を取られて、女の方から目を離しちゃった!
その女は俺に向かって槍を構え、一気に突いてきた!
「なっ!?」
だけどその槍は、俺に届く前に真っ二つに斬り捨てられていた。
「遅いですよ、大和さん」
「そう言うなよ。思ってたよりお前がやれてたから、ちょっと見てみたくなってな」
俺の文句を涼しい顔で受け流した大和さんが、瑠璃銀刀・薄緑で女を一刀の下に切り伏せた。
さっき俺が斬った女より傷が深いけど、あれって絶対死んじゃうよ?
「レティセンシアのスパイにかける情けはないな」
大和さん、本当にレティセンシアのこと嫌いだよね。
俺も気持ちは分かるから、遠慮はしないけどさ。
「おっと、お前は殺さないから安心しろ」
「な、なんだと?」
「その代わり、お前には吐いてもらうぞ?オーダーズギルドでしっかりと、全てをな」
そう言って大和さんは、最後に残った男にショック・フロウっていう刻印術を当てて気絶させ、ライトニング・バンドっていう刻印術と
ライトニング・バンドは俺も見たことあるけど、暴れると
それをアレスティングで補強してるみたいだから、これで逃げられたら逆に凄いって褒められるぐらいだ。
「こいつらの平均レベル、38だったのか。よくもまあその程度で、あんな大口を叩けたもんだ」
「いや、それでもヘリオスオーブの平均より上ですからね?というか、レティセンシアの騎士ってことなんだから、それぐらいは最低限じゃないですか?」
一番レベルが高かったのはレベル42のヒューマンだったけど、その人は俺が斬った女だったし、まだ進化もしてなかったから俺でも何とかできた感じかな。
「っと、それよりも獣車の中の人を助けないと」
「そうするか」
中から聞こえた声はけっこう辛そうだったから、怪我をしてる可能性もある。
俺は急いで獣車のドアを開けたんだけど、そこにいたのは貴族と思えるヒューマンの女の子が1人、護衛と思える人が3人だったけど、全員が血を流して倒れていた。
「これはマズいな。ジェイド、急いで戻って、みんなを呼んできてくれ」
「クワッ!」
大和さんの指示で、ジェイドが俺達の獣車に向かって飛んでいった。
プリムさんとレベッカは回復魔法を使えるから、応急処置ぐらいはなんとかなるはずだ。
「『エグザミニング』。……こっちの3人は死んでるが、女の子はまだ息があるな」
大和さんが魔眼魔法でも使える
女の子が生きてるだけでも良かったのかもしれないけど、それでも傷は深そうだから、早く回復魔法を使わないと……。
「『エイディング』。これで止血はできたし、痛みも引くだろうから、プリム達が来るまでは持ってくれるだろう」
傷を治すことはできないけど、止血や痛みを和らげてくれるから、応急処置としては十分だと思う。
「あ、ありがとう……ございます……」
「喋らなくていい。直に回復魔法を使える仲間が来るから、それまではおとなしくしといた方がいいぞ」
「は、はい……」
女の子はそのまま意識を失っちゃったけど、痛みが和らいだおかげか、落ち着いた感じの寝顔だ。
「お待たせ。どうかしたの?」
しばらくして、プリムさん達が到着した。
「ああ、詳しくは後で話すけど、中の子が重傷だ。悪いんだがハイ・ヒーリングとブラッド・ヒーリングを頼む」
「重傷?わかった、すぐに行くわ」
大和さんは
「ラウス、何があったの?」
「この獣車、レティセンシアの騎士に襲われてたんです」
「レティセンシア?こんな王都の近くで?」
俺もそこは疑問だけど、あいつらはこの獣車に乗ってる女の子に用があったみたいだし、大和さんがライブラリーを確認してるから、それは間違いないです。
「あの国、本当に懲りないね」
「本当にね。でも問題なのは、こんな王都の近くにまで、レティセンシアの騎士が来てたことよ」
「確かにそうなんだけど、先日大使も捕らえて、処刑することは通達してあるでしょう?」
確か王女とかと一緒の日に、でしたっけ?
「王女だけじゃなく大使まで処刑ってことで、使者がワイバーンを使って来てるのよ。護衛もけっこうな数がいたから、多分そのレティセンシアの騎士は、使者の護衛なんじゃないかしら?」
使者の護衛がアミスターの貴族かもしれない女の子を誘拐って、それ、大問題なんじゃ?
「マナ様ぁ、それって大問題なんですよねぇ?」
「大問題ね。使者の護衛が好き勝手するなんて、聞いたこともないわ。そもそもそんなことを許してたら、治安も何もあったものじゃないわよ」
ですよね。
となるとレティセンシアは、また自分で自分の首を絞めたってことなのか。
「お待たせ、治療は終わったわ」
「どうだった?」
そこまで話してると、大和さんとプリムさんが獣車から出てきた。
女の子は大和さんが抱きかかえてるけど、まだ眠ったままなんだろうな。
「あたしのハイ・ヒーリングじゃ完全には治せなかったけど、ブラッド・ヒーリングで血は何とかなったって大和が診てくれたから、後はヒーラーズギルドに任せれば大丈夫だと思うわ」
それは良かった。
「それは良かったですけど、なんでこの子が狙われたんでしょうか?」
「貴族っぽいけど、それだけじゃこの子を狙う理由にはならないよね?」
リディアさんとルディアさんも、俺と同じことが気になってるみたいだ。
貴族は多いわけじゃないけど少ないわけでもないから、わざわざ王都付近でこの子を狙う理由としては弱い。
貴族でいいんなら、王都に来る必要もないからね。
「ちょっと待って。その子、ベルンシュタイン伯爵家のご令嬢じゃない?」
「ベルンシュタイン伯爵?確かレティセンシアの国境のある?」
「ええ。なるほど、そういうことか。やってくれるわね、レティセンシアも」
うわ~、マナ様がすっごく怒ってるよ。
俺にはまだ意味がわかってないけど、大和さんやプリムさん、リディアさんもわかったみたいで、けっこう怒ってる。
怒るのはいいんですけど、魔力は抑えてくださいよ。
「ともかく、その子は重要な証人だから、護衛をしっかりと付けないといけないわ。王都に戻ったら、すぐにオーダーズギルドに依頼しないと」
治療だけじゃなく護衛もなんだ。
なんか俺が思ってるより、すごく大きな問題みたいだなぁ。
女の子が乗ってた獣車は大和さんがストレージに収納して、女の子は客室に寝かせてしっかりとガードしながら、俺達は王都に戻ることにした。
門でオーダーに事情を伝えて、護衛とヒーラーの手配も頼んだけど、どうなったかは後で知らせてくれるってさ。
Side・大和
ひと悶着ありつつも無事に王都まで戻ってきた俺達は、そのままハンターズギルドに向かった。
狩った魔物を買い取ってもらうって理由もあるが、一番の目的はリディアとルディアのランクアップ手続きだな。
「お待たせしてごめんなさい。鑑定室に案内する前に、ライセンスを確認させてもらえる?」
だが俺達がいるのは、ギルドの受付ではない。
ヘッド・ハンターズマスターのマスターズルームだ。
そして俺達のライセンスを見るなり盛大に頭を抱えたエルフの女性が、アミスターのハンターズギルドを統括しているヘッド・ハンターズマスター シエーラ・クモンさんだ。
レベル53のハイエルフで、グランド・ハンターズマスターの弟子でもあるらしい。
「ごめんなさい、質問いいかしら?」
「なんですか?」
「あなた達のことはフィールのハンターズマスターから手紙で聞いているから、この際脇に置きます。でもマナリース殿下はもちろん他の子達も、なんでこんなに早くレベルが上がってるの?しかもこっちのドラゴニュートの子達なんて、ハイクラスに進化してるじゃないの……」
イデアル連山にある宝樹まで行って大量の魔物を狩りました、と正直に答えてみる。
「……あんなところまで行ったのね。それでよく全員無事で……。いえ、規格外のエンシェントクラスが2人もいるんだから、それぐらいは出来てもおかしくはないのかもしれないけど……」
シエーラさんはプリムがエンシェントフォクシーだということ、俺と共に終焉種を単独討伐したことも知っている。
というか、報告の際に直接聞いている。
あの場にはグランド・ハンターズマスターもいたが、ハンターズギルドの総本部はアレグリアだから、ヘッド・ハンターズマスターのシエーラさんが呼ばれないわけがない。
他にもヘッド・トレーダーズマスター、ヘッド・バトラーズマスター、ヘッド・プリスターズマスターも呼ばれていたぞ。
表に出せない事情が多すぎるから、俺達が王都にいる間はシエーラさんが担当を請け負ってくれたというわけだな。
「請け負わざるを得なかっただけなんだけどね」
とも言われたが、他の職員に教えるわけにはいかないんだから、そこは諦めてください。
「クエスティングは……あなた達、なんで生きてるの?」
疲れた目をしながら、俺とプリムを除くメンバーにそんな疑問を提示するシエーラさん。
「気持ちは心の底から理解できるけど、この2人に常識を求める方が間違ってるってことも理解できたわね」
うんうんと大きく頷くメンバー達。
誰が常識知らずか!?
「ロック・ボアやフェザー・ドレイク、キラー・ワスプはともかく、ストーム・ライガーにサイクロン・ライガー、スカイ・サーペント、ヘビーシェル・グリズリー、スパイク・タートル、ウインガー・ドレイク。1匹だけでも倒すのは至難の業なのに、極めつけがテンペスト・ライガーにストームボルト・パンサー、さらにはグリフォンまで……。生きて帰ってくるどころか、その場から逃げることすら不可能っていえるラインナップよ、これは?」
「その疑問はもっともですし、私達も同じ思いなんですけど……」
「この2人、あたし達の援護をしながら、こいつらの相手をしてたんだよ。しかもこっちが危なくなったらすぐにフォローしてくれたから、言う程の危険は感じなかったかな」
一度、本当に死を覚悟したけど、ってルディアの呟きが聞こえてきた。
本当にすいませんでした……。
「伊達に終焉種を、単独で倒してないってことなのかしら?まあいいわ。これほどの魔物が手に入ることなんて、滅多にないんだから」
「それなんですけど、俺も使いたいって思ってる魔物がけっこうありますし、特にグリフォンは珍しいですから、全部手元に置いとこうと思ってるんですよ」
グリフォンはMランクモンスターだから、下手な災害種より強かったりする。
しかも自在に空を飛べるから、下手なAランクモンスターより討伐難易度が高いってことでも有名だ。
意外と打たれ弱いからMランクってことになってるが、それでもGランクやPランクなんかとは比べるべくもないから、実質的にはAランクモンスターって言ってもいいんじゃないかと思う。
さらに俺達はヒポグリフを従魔にしてることもあって、ヒポグリフを狩ることには抵抗がある。
だがグリフォンは、ヒポグリフに近い魔物ではあるがヒポグリフじゃないし、最初からこっちを食う気で襲い掛かってきたから、素材にすることにも抵抗はないな。
「そりゃ最後にグリフォンがギルドに持ち込まれたのなんて50年近くも前になるんだから、珍しいのは間違いないけど、1匹ぐらいは売ったりできないの?」
グリフォンもそうだが、テンペスト・ライガーやストームボルト・パンサーの魔石も、陛下に献上することになる。
その魔石を取り出すのはクラフターズギルドから派遣されてる魔物解体師だから、グリフォンが討伐されたことは必ずクラフターズギルドにも、もっと言えばエドの親御さんにも伝わってしまう。
ただでさえ
「じゃあ1匹だけ。ただ異常種はこっちも欲しいですし、他の魔物も3匹ずつは確保しておきたいんですよ。ああ、あとウインガー・ドレイクは俺達の主目的なんで、これもダメですね」
「異常種はこちらとしても欲しかったけど、他の魔物もここ数年は見てないし、ウインガー・ドレイクは天樹城でも狩るって言ってたものね」
これでマリサさんとヴィオラのコートも作れるからな。
マナとユーリ付きとしてバトラーズギルドから派遣されているマリサさんとヴィオラは、今後も2人付きの侍女として契約することになっている。
賃金とかはユニオン資金で支払うことになっているが、マナもユーリもお姫様なんだから侍女が付くことは当然と言えるから、俺としても問題はない。
それにこないだの授与式典でけっこうな額の褒賞金も貰ってるから、バトラー2人ぐらいならどうとでもなるしな。
そんなわけなので、マリサさんとヴィオラもユニオンに加入することになってるんだが、その契約は明日正式に行うことになってるから、一度バトラーズギルドにも行かないといけない。
だから2人のアーマーコートも仕立てるつもりだったんだが、マナのアーマーコートでウインガー・ドレイクの在庫が尽きかけてるから、早急にウインガー・ドレイクを狩る必要があったというわけだ。
なにせ残ってたのは端切れだけで、パッチワークぐらいにしかならない程度しか残ってなかったんだから、俺の中では緊急性は高かったな。
なので明日、バトラーズギルドに行く前にクラフターズギルドに寄って、解体依頼も出してくる所存だ。
今日はみんなを休ませてやりたいから、終わったらすぐに天樹城に戻るけどな。
「それじゃ第十鑑定室に行きましょう。買取の査定もしなきゃいけないし、陛下に献上する魔石も取り出さないといけないし。ああ、異常種とグリフォンの魔石は、あなたから陛下に献上してね」
「はい?俺からですか?」
いきなりシエーラさんにそんなことを言われたが、普通はハンターズギルドから献上するもんじゃないの?
「そんな魔石、どうやって手に入れたって説明するの?他のハンターならともかく、あなた達がってことになったら、私だって説明できないわよ?」
なんて感じで丸投げされてしまった。
みんなも同感らしいので、仕方なく魔石は俺が陛下に献上することになってしまったな。
ちなみにハンターズギルドに売ったグリフォンだが、トレーダーズギルドに持ち込んだ結果、瞬く間に完売してしまったそうだ。
貴族はもちろん、ハイハンター達も希少で優秀な素材ってことで我先にと買い漁ったって話だな。
あと2匹あるって知られたら、俺のとこにまでやってきそうで怖いぞ。
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