世界樹の下で
「ルディア、不用意に近付くな!そいつは毒を持ってるぞ!」
「ご、ごめん!」
ルディアに噛み付こうとしていたGランクモンスター スカイ・サーペントに瑠璃銀刀・薄緑の一撃をかまし、距離を取る。
あれから30分ほど休憩して、ジェイド、フロライト、シリウスに乗ってイデアル連山中央の世界樹、宝樹を見に来たんだが、けっこうな数の魔物に歓迎された。
一番多かったのはSランクモンスターのキラー・ワスプだが、スカイ・サーペントっていう空を飛ぶ大蛇のGランクモンスター、Mランクモンスターのグリフォンまでいやがったぞ。
降りたら降りたでヘビーシェル・グリズリーっていう甲羅を背負った熊っていう不思議な見た目のG-Uランクモンスター、さっき狩ったG-Rランクモンスターのサイクロン・ライガー、雷を操るG-Iランクモンスターのストームボルト・パンサーなんてのも歓迎してくれたな。
さすがにデカいだけあって、宝樹は本当の意味で魔物達の巣になってたみたいだ。
「今よ、ラウス!」
「このおっ!」
今はプリムの援護を受けたラウスが、見事にサイクロン・ライガーに、ラピスライト・シールドから飛び出した刃を突き刺してトドメを刺していた。
「レベッカ、行け!」
「はいぃ!てやっ!」
レベッカも俺が氷らせたスカイ・サーペントの頭を、ラピスライト・ボウエッジの穂先を叩きつけて粉々に砕く。
「リディアさん、お願いします!」
「はいっ!」
ミーナの
援護しとくか。
「リディア、俺が援護する。もう一度ブレスを!」
「ありがとうございます!」
コールド・プリズンを発動させ、リディアのエーテル・ブレスに干渉することで、威力を上げる。
すると今度は、抵抗こそ見せたが、ヘビーシェル・グリズリーは完全に氷り付いた。
「たあああああっ!!」
間髪入れずに、ルディアがドラグラップルの手甲で殴りつけ、ヘビーシェル・グリズリーの甲羅を砕いた。
しまった、ヘビーシェル・グリズリーの甲羅は貴重な素材になるんだった。
「プリム、お願い!」
「任せて!」
ヘビーシェル・グリズリーの甲羅を諦めた瞬間、プリムが空を飛び、グリフォンの翼をフレア・ニードルで焼き尽くし、地面に落とす。
そこをマナがラピスウィップ・エッジで追撃をかけ、ルナの
「マナ様、下がってください!」
そしてフラムのラピスウイング・ボウから、初速を増して放たれた矢が頭部に突き刺さり、グリフォンはそのまま絶命した。
ちなみにグリフォンはあと1匹いるが、今は空でジェイド、フロライトと激しいドッグ・ファイトを繰り広げていたりする。
ちょっと心配だったが、2対1ってこともあって、ジェイド達が優勢だな。
「こ、こんのおおおおおおっ!」
ルディアの声に振り返ると、ヘビーシェル・グリズリーの攻撃を受け止めたところだった。
援護が間に合ってなかったことは後で反省するとして、今はルディアを助けないと。
「せえいっ!」
そう思ってたら、背後からリディアがドラグ・ソードでヘビーシェル・グリズリーの右腕を切り落とした。
会心の一撃ってやつだな。
「ありがとう、姉さん!」
ヘビーシェル・グリズリーの巨体から逃れたルディアは、そのままサマーソルトキックを慣行。
脚力とバク転の勢いを加え、竜精魔法エーテル・バーストでさらに強化した足刃の一撃を食らったヘビーシェル・グリズリーは、顔だけ真っ二つに裂けながら倒れた。
お見事。
「だいぶ数も減ってきたわね」
「だな。この雷もいい加減鬱陶しいし、そろそろあいつも片付けておくか」
襲ってきた魔物は高ランクから優先的に狩ってるから、あとはキラー・ワスプが数匹にサイクロン・ライガーぐらいか。
だけど遠距離から、
こいつの元になったサンダー・レパードもだが、この魔物は雷で相手を弱らせるまで、獲物には近付かないそうだ。
だから狩りにくいし、どこから狙ってくるかもわからないから、こいつらの生息地での夜営は自殺行為と変わらないって言われている。
サンダー・レパードはBランクモンスターだからハイクラスなら何とか耐えられるんだが、それでもけっこうなダメージを食らうそうだし、雷を纏わせた爪の一撃は
もっとも、それは遠距離から襲ってきた場合で、一度接近できたらどうとでもできるらしいが。
「あたしがやるわ。王都に来てからまともに動いてないから、運動不足になりそうなのよ」
確かにプリムはエンシェントフォクシーだってことは伏せられてるから、遠慮なく暴れられる俺と違って狩りの最中も常に周囲に気を配っていた。
ここはイデアル連山の中央だから、見つかる危険性もほとんどないし、運動不足になりそうだってことなら遠慮なくやってもらうとしよう。
「了解、任せた」
「ええっ!」
結界魔法を使ってフレア・ニードルも放ってるから、いくらストームボルト・パンサーの動きが早くても全部は躱せないし、既にプリムに捕捉されてる。
案の定ストームボルト・パンサーは、フレア・ペネトレイターを食らって吹き飛んでいった。
吹き飛ぶ?
ああ、貫いたんじゃなくて、スカーレット・ウイングの柄で薙ぎ払ったのか。
器用なことするなぁ。
「大和、終わったわよ」
「ああ、見てたよ。プリムの方も終わったから、これで一息付けるだろう」
アクセリングの思考加速って、マジで便利だよな。
おかげでプリムの方を横目で見ながら、みんなの援護もできたんだから。
一度ルディアを危険に晒してしまったから、これはマジで反省しなきゃだが。
ちなみにこの戦闘で、またみんなのレベルは上がったぞ。
ヤマト・ハイドランシア・ミカミ
17歳
Lv.72
人族・エンシェントヒューマン
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ミスリル(M)
オーダーズギルド:アミスター王国 フロート アウトサイド
オーダーズランク:オリハルコン(O)
プリムローズ・ハイドランシア・ミカミ
17歳
Lv.68
獣族・エンシェントフォクシー
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:プラチナ(P)
マナリース・A・ミカミ
18歳
Lv.47
人族・ハイエルフ
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フロート
ハンターズランク:シルバー(S)
ミーナ・F・ミカミ
17歳
Lv.37
人族・ヒューマン
ユニオン:ウイング・クレスト
オーダーズギルド:アミスター王国 フロート アウトサイド
オーダーズランク:ブロンズ(B)
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ブロンズ(B)
フラム・ミカミ
18歳
Lv.34
妖族・ウンディーネ
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ブロンズ(B)
リディア・ハイウインド
16歳
Lv.44
竜族・ハイドラゴニュート(氷竜)
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア
ハンターズランク:ブロンズ(S-B)
ルディア・ハイウインド
16歳
Lv.44
竜族・ハイドラゴニュート(火竜)
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:バレンティア竜国 ドラグニア
ハンターズランク:ブロンズ(S-B)
ラウス
13歳
Lv.39
獣族・ウルフィー
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ブロンズ(B)
レベッカ
13歳
Lv.36
妖族・ウンディーネ
ユニオン:ウイング・クレスト
ハンターズギルド:アミスター王国 フィール
ハンターズランク:ブロンズ(B)
リディアとルディアがハイドラゴニュートに進化できたから、ハイエルフのマナが加わったことも含めて、いつでもマイライトに行けるようになったな。
ラウスもSランク目前だから、頑張ればフィールに帰る前に進化できるんじゃなかろうか?
「いや、それは大問題だからね?」
「そうですよ。ただでさえ貴族の方達から手紙が来てるのに、ハイクラスなんかに進化しちゃったら、どうなるか分かったもんじゃないです」
マナとラウスが文句を言ってくるが、手紙のことは俺は初耳なんだが?
「別に領地に来てくれ、とか、娘さんと結婚を前提に付き合ってくれ、って書かれてたわけじゃないですよ。ただ名前を知っておいてくれって感じでしたし」
「そういうこと。私はその現場を目撃しちゃったから知ってるけど、別に隠してたわけじゃないわよ。というか、大和は知ってると思ってたわ」
マナも知ってたのか。
聞けば天樹城で暇を持て余してた時に何度かってことらしいから、これは確かに仕方ない気もする。
一応、立食パーティーで釘を刺しておいたが、それでもあれこれ手を考えるのが貴族だし、特にラウスを勧誘したり娘を押し付けたりしたわけじゃないなら、これぐらいは問題ないか。
「いや、だから問題なのよ」
「何が?」
ラウスのことは別に怒ってるわけじゃないし、それぐらいは仕方ないと納得したんだが、何が問題なんだ?
「ラウス君がBランクハンターだってことは、ハンターズギルドに行けばすぐに分かります。だから手紙を押し付けてきた貴族は、そのことを知ってるってことになるんですよ」
「さらに付け加えると、多分ラウスのレベルも知ってるよ。もっとも、王都に来る前のレベルだろうけどさ」
リディアとルディアが補足してくれた。
いや、そりゃハンターズギルドにいけば、ハンターズランクやレベルは教えてくれるだろ。
「あのね、レベルも教えてもらえるってことは、ラウスがレベル39になったことも、遠からず知られるってことになるのよ?成人前にハイクラスに進化するなんて、かなりとんでもないことなんだから、既に大和と婚約してるリディアとルディアはともかく、ラウスとレベッカにはとんでもない勧誘の嵐が待ってるってことになるのよ?」
懇切丁寧に説明してくれるマナ。
俺は王女様や貴族と結婚、もしくは婚約してるから、さすがに貴族でも新しい嫁をねじ込んでくるのは難しい。
だがラウスの場合は、レベッカが婚約者ってことになってはいるが、そのレベッカは村娘だから、付け入る隙はいくらでもあるってことになる。
特に一夫多妻が当然のヘリオスオーブだと、いずれラウスが2人目3人目の嫁を持つことは決定事項だから、今の内にお近づきになっておきたいって考える貴族が爆発的に増えるってことになるわけだ。
そうなると当然、ウイング・クレストとしても対応せざるを得ない場合もあるから、明日からは狩りだなんだと言ってられなくなる可能性が出てきてしまったと、つまりはそういうことか。
「いや、すげえマズいし面倒くさいじゃねえか」
「だからそう言ってるじゃないの……」
「とはいえ、ラウスとレベッカと相性が良くて、性格とかも問題もなさそうな子を押し付けられたりした場合、あたし達も断りにくいのよねぇ」
だな。
対象が俺だったらプリムやマナ達だって黙ってないだろうが、ことラウスの問題となると、同じユニオンだとしても口を出しにくい。
結婚は本人の自由なんだからな。
さすがにソレムネやレティセンシアの女となったら、話は別だが。
「そこはなるようにしかならない気もするんだけどね。それで、せっかく宝樹の下まで来たけど、これからどうするの?」
「数もですけど、まさかMランクモンスターのグリフォンまでいたとは思いませんでしたからね」
それは俺も同感だ。
グリフォンはMランクモンスターで、俺とプリムが従魔契約をしているヒポグリフはグリフォンの亜種とされている。
ヒポグリフはGランクモンスターなんだが、ジェイドとフロライトは、それぞれヒポグリフ・フィリウス、ヒポグリフ・フィリアという希少種に進化しているため、P-Rランクモンスターと考えてもいい。
狩りには一緒に連れてきてるし、こないだのアライアンスも経験してるから、まだ子供ではあるがランク相当の力はあるんじゃないかと思ってる。
グリフォンはその2匹より1つ上のランクだから、普通なら希少種といえど、2匹で倒すのは難しい。
だがジェイドとフロライトは、俺とプリムの魔力も進化した要因って考えられてるから、ジェイドは
実際、それを証明するかのように、2匹でグリフォンとドッグ・ファイトを繰り広げ、圧倒してたからな。
最後はプリムのように炎を纏ったフロライトが突撃して、息も絶え絶えになったところをジェイドの氷の槍が貫いてたから、連携も問題ないと言ってもいいだろう。
ちなみにそのグリフォンは、俺が倒したことになっている。
従魔の成果は契約者に反映されるようになってるんだが、ちゃんと従魔が倒したことも分かるようになってるのが
「グリフォンか。本当にフロライト達に似てたから、一瞬どうしようかって思ったわね」
「気持ちは分かるぞ。もっとも襲ってきた魔物の中じゃ一番強かったから、倒すしかなかったんだが」
グリフォンは鷲とライオンの特徴を持ってるが、ヒポグリフはそのグリフォンが牝馬に生ませたっていう伝説があるぐらいだから、似てるのは当然なんだけどな。
「というか、ジェイドとフロライトが戦ってる所を見たのは初めてだけど、あの2匹もとんでもないわね。Mランクモンスターを倒せる従魔なんて、聞いたことないわよ?」
「ああ、確か従魔って、最高でもGランクまでって言われてるんだったか?」
「召喚獣もだけどね。それより上の魔物となると、契約そのものができないのよ」
理由は分からないが、従魔、召喚契約ができる魔物はGランクモンスターまでなんだそうだ。
ヒポグリフはGランクモンスターだから、契約できる上限ギリギリだったってことになる。
あくまでも契約時の話になるから、契約後に進化した場合は問題ないみたいだが。
「セルティナ様はフリーザス・タイガーっていう魔物と従魔契約してるけど、元々はGランクのアイシクル・タイガーだったそうだから、私が知ってる限りじゃその子が従魔、召喚中の中じゃ一番強いと思うわ」
トラレンシアのPランクハンターのハイラミアか。
ランク的にはジェイド、フロライトと同じになるのか。
さすがってとこなんだろうな。
「けどアイシクル・タイガーって、最終進化系がスリュム・ロードじゃなかったか?」
「同じ虎系だし、そう言われてるわね。だけどスリュム・ロードがトラレンシアを襲ったのは、今から180年も前よ。当時の様子を知っていたカズシ様、エリエール様も30年程前に亡くなられてるから、今じゃ見たことある人は誰もいないわ」
それもそうなんだよなぁ。
なにせスリュム・ロードは、当時のエンシェントクラス5人によって致命傷に近い傷を負わされ、さらには魔力もほとんど使い切ってたみたいだから、既に死んだとも回復のために今も眠ってるとも言われてるんだからな。
200年近く眠ってるってのもすごい話だが、それだけの激戦だったってことだし、終焉種が頻繁に姿を見せないのは、眠りによって力を蓄えてるんじゃないかって説もあった気がする。
あ、エリエールってのはトラレンシアの初代女王で、エンシェントヴァンパイアの名前だ。
カズシさんと結婚してるから、エリエール・ミナト・トラレンシアってのが本名だな。
っと、これからどうするかだったな。
「今日はもう帰ろう。ミーナやフラム、ラウスとレベッカも調子が悪そうだからな」
「魔力もけっこう消耗してるだろうから、その方が良いわね」
俺とプリムはエンシェントクラスだし、マナはハイエルフだから、まだ魔力には余裕がある。
リディアとルディアはハイドラゴニュートに進化できたから、その分魔力が増えて余裕ができた感じはするな。
だけどミーナ、フラム、ラウス、レベッカはノーマルクラスだし、俺達がフォローしたとはいえ明らかな格上の魔物と戦ったことで、疲労困憊って感じだ。
早く王都に戻って、休ませてやるべきだろう。
「そうなると、4人はシリウスに乗せた方がいいわね」
「悪いが頼む」
シリウスはデカいから、マナを入れて5人で座っても余裕があるからな。
あとはイデアル連山を抜けたとこで下りて、獣車を使う方がいいだろう。
ハンターズギルドで買取とかも頼まなきゃだが、なるべく早くゆっくりさせてやるべきだな。
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