竜人の双子
「これでよし」
ショック・フロウを当てて気絶させ、ライトニング・バンドでしっかりと2人を拘束してから、俺はヴィーナスを解除した。
思ったよりあっさり捕縛できて、よかったよかった。
「ハンターズマスターを、こんなにあっさりと倒すなんて……」
「し、しかもエンシェントヒューマンだなんて……。あんた、一体何者なの……?」
まあ自己紹介と説明ぐらいはしておくか。
「あたしはプリムローズ・ハイドランシア・ミカミ、Gランクハンターよ」
「ヤマト・ハイドランシア・ミカミだ。エンシェントヒューマンで、さっきも言った通り、Pランクハンターだ。俺達は最近フィールで登録したんだが、その時に色々あってな」
「そりゃギルドマスターと敵対したんだから、色々あったんでしょうけど……。って、同じ家名ってことは、2人は夫婦なの!?」
そこに一番驚くのかよ。
「そうよ。こないだ結婚したばかりだけどね」
「そうなんだ。ああ、あたしは
「私はルディアの双子の姉で、
なるほど、双子か。
確かに顔はそっくりだし、髪形もサイド・テールだから、左右対称にしてくれてなきゃ見分けがつかなかったな。
だがそれは、普通なら、という但し書きがつく。
姉のリディアは右のサイドに、妹のルディアは左のサイドにまとめてるんだが、髪の色が見事に違う。
リディアが薄い青で、ルディアが薄い赤だ。
これで見間違うわけがない。
つかなんだよ、そのドリルは。
初めて見たよ、ドリル・テールなんて。
縦ロールって言うんだっけか?
「2人とも、怪我はない?」
「あたしは大丈夫!」
「私もです。ですが……」
リディアの視線が、獣車に向けられた。
護衛と思われるオーダー達は倒れ、獣車も車輪が欠けたり焼け焦げてたりと、かなりボロボロにされている。
まだ息があるオーダーもいるようだが、半分近くは既に事切れているとわかる。
「もしかしてあなた達、この獣車に乗ってるのが誰か知ってるの?」
まだ息のあるオーダーに回復魔法をかけながら、プリムがリディアに尋ねた。
王家に幼馴染がいるって言ってたが、1人だけしか知らないってことはないだろう。
つまりこの獣車に乗ってるのは、プリムの知り合いの可能性が高い。
「はい。私達はバリエンテで依頼を受けて、フィールまで護衛することになってたんです」
「なるほどね。誰が乗ってるのか、聞いても良い?」
「はい。乗っているのはアミスター王国第三王女、ユーリアナ・レイナ・アミスター様です」
その名前を聞いた途端、プリムがすごい勢いで獣車のドアを開けた。
「ユーリ!良かった、気を失ってるだけみたいね」
心から安心したプリムの声だが、やっぱり知り合いだったか。
「プリムローズって、アミスターのお姫様と知り合いなの?」
「プリムローズさんはハイフォクシーですから、王家の方とお知り合いでも不思議じゃありませんけど……そういう感じじゃなさそうですし……」
まあ、そりゃな。
多分、その第三王女様が、プリムの幼馴染なんだろう。
そう思いながら、俺も獣車の中を覗き込むと、そこにいたのは、肩より少し長い金髪を耳の上辺りで2つに纏め、頭には豪華そうなティアラがあり、動きやすそうだがそこかしこに装飾がちりばめられてる豪華なドレスに身を包んだ12,3歳ぐらいの女の子だった。
うん、どこからどう見てもお姫様ですよ。
エルフだとは思うんだが、俺の知ってるエルフより若干耳が短いから、ヴァンパイアっていう可能性もあるな。
その女の子の傍らで、プリムが心配そうな顔をしていた。
「多分だが、気を失ってるだけだろう。そのうち気が付くと思うが……とりあえず、回復魔法をかけとけば大丈夫じゃないか?」
「あ、大和……。そうね。それじゃ、『ヒーリング』」
回復魔法ヒーリングは、
回復魔法の他にも召喚魔法とか精霊魔法とかがあって、プリムがよく使っている羽纏魔法も、
中には種族限定の
俺も確認済みで、俺が使える
念動魔法はヒューマンやドワーフ、オーガに多く見られる魔法で、一言で言ってしまえばサイコキネシスだ。
正確には、魔力で作り出した腕を使ってるんだが、攻撃に使ってもほとんど威力がない。
もっぱら普段の生活で、少し距離がある物を持ってきたり、重い物を運ぶのに使ったりするぐらいだそうだが、クラフターやトレーダーにとっては重宝されてて、よく使ってるらしい。
だがエンシェントヒューマンに進化した俺の場合、鉄の塊なら握り潰すことができたし、ゴブリンやグラス・ボア程度なら一撃で倒すこともできてしまったから、戦闘でも問題なく使えてしまうみたいだ。
魔眼魔法は目に魔力を込めることで、様々な効果を生み出すことができる魔法だ。
さすがに見つめた相手を石にすることはできないが、魔力次第ではあるが、燃やしたり氷らせたりはできるとか。
他にも鑑定系の
お姫様が気絶してるだけって判断できたのは、この魔眼魔法で使った診察用の
そして付与魔法だが、この魔法は読んで字のごとく、武具や道具、魔石などに魔法を付与させる魔法だ。
あいつの
何度か刻印術を刻印化させている俺だが、どうやらこの付与魔法マルチリングのアシストがあったおかげで、ちゃんと成功していたみたいだ。
これらの魔法は、驚いたことに先日奏上した新魔法ステータリングの魔法リストに、しっかりの載っていた。
特に驚いたのはやはり魔眼魔法なんだが、だからこそ俺も
まさか
まあ、チェッキングやスキャニングは、使用する機会は少ないと思うが。
エグザミニングで見た限りだが、このお姫様には外傷はない。
おそらくだが、頭を打ったか何かで、気を失っただけだろう。
襲われたこともあるし、心身ともに疲れてる可能性もある。
だからプリムにヒーリングをかけてもらったんだが、これである程度は体力も回復するし、そのうち意識を取り戻すんじゃないかと思う。
あとは安静にさせておけばいいだろう。
「か、回復魔法まで使えるんですね……」
「Pランクハンターと会ったことはあるけど、ここまでじゃなかったよね……」
回復魔法は
「そのうちみんなも来るから、先にオーダーの手当てをしよう。プリム、悪いけど頼めるか?俺もサポートするから」
「ええ、勿論」
プリムはヒーラーズギルドには登録してないから、エグザミニングは使えない。
だから俺がエグザミニングを使って、プリムに回復魔法を使ってもらえば、オーダーの回復も早くなるだろう。
それにリディアとルディアにも手伝ってもらえれば、治療も早くなるかもしれないしな。
「サブ・オーダーズマスターも一緒なんだけど、事情が事情だから、多分事情聴取ぐらいは受けることになると思うの。それは大丈夫?」
「そういえば先程も言ってましたね。何故、そんな方と一緒だったんですか?」
「ああ、それはな……」
俺とプリムは、オーダーの治療をしながら、リディアとルディアに、現在のフィール、そしてプラダ村の状況を説明したが、2人の顔色がみるみる変わった。
普通はそうなるよな。
「あんた達……とんでもない事件に首突っ込んでるんだね……」
「フィールにいたハンター全員が、レティセンシアのスパイだったなんて……」
「どうりでフィールの情報が、全く入ってこないわけだよ……」
陸路も空路も、どっちも封鎖されてたようなもんだからな。
ビスマルク伯爵のワイバーンだって、タイミング次第じゃ狙われてただろう。
それができなかった時点で、レティセンシアの企みが失敗するのは、ある意味じゃ運命だったのかもしれないが。
「そういえば2人って、どこから来たんだ?」
「バレンティアだよ。力試しと見聞を広めるためっていうのが、大きな理由かな」
「私達は、バレンティアの竜都ドラグニアの生まれなんです。そこからバリエンテに渡って、中央府セントロでユーリ様と偶然お会いして、そこから護衛をしているんです」
聞けばユーリアナ姫は、何度かバレンティアに行っていて、リディア、ルディアとも何度か会った事があるそうだ。
2人の父上は、バレンティア竜騎士団の副団長で、バレンティア最強の竜騎士と言われているからってのが理由だそうだ。
そんな理由で、他国のお姫様の護衛をしてたってことか。
オーダーからの文句は出なかったのかが気になったが、ユーリアナ姫の護衛のオーダーとも顔見知りだからってことで、むしろ歓迎されたって話だな。
そのユーリアナ姫は、プリムの幼馴染の妹で、プリムにとっても妹と言える子だった。
そりゃ心配の1つもするか。
そのユーリアナ姫繋がりで、この2人と縁ができたわけだから、世の中狭いと思えるよな。
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