新たな奏上魔法
Side・プリム
あたし達は今、プリスターズギルドに来ている。
なんでも大和が試してみたい魔法があるってことなんだけど、いったいどんな魔法を奏上するつもりなのかしら?
成功したら教えるって言われてるけど、気になって仕方ないわ。
「あ、こんにちは、ミリアさん」
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのような……ああ、そちらのお嬢さん達とのご結婚ですね」
プリスターズマスターのミリア聖司教が出迎えてくれたけど、早速勘違いしてるわ。
いずれはミーナとフラムも大和と結婚するけど、まだミーナの実家から返事が来てないし、ミーナとの結婚の儀式は王都ですることになると思うから、残念だけど違うのよね。
「いえ、いずれはこの2人とも結婚しますけど、今日は別件です」
「別件、ですか?」
「はい。今日は魔法を奏上してみようと思いまして」
大和がそう言ったら、ミリア聖司教の目が大きく見開かれて、すぐに笑顔になった。
「それはありがたいです。先日エドワードさんがメルティングという新魔法を奏上されましたが、
クラフターからの評価は高いけど他の人は使えないから、どんな魔法が奏上されたのか、いまいちわかってないってことなのね。
奏上された魔法は、各地にある魔法の女神像を通じて、すぐに伝えられる。
エドが奏上したメルティングも、既に他の街にも広まっていて、実際に使っているクラフターも多いと思う。
だから大和の考えてる魔法が奏上されたら、その魔法もすぐに他の街に広まって、使うことができるようになるってことなの。
「もっとも、ただ思いついただけみたいなものですから、さすがに今日は失敗すると思いますが」
そう言ってるけど、それって裏を返せば、いつかは奏上される自信があるってことじゃない?
どんな魔法を奏上するつもりなのか、本気で興味が出てくるわね。
「魔法の奏上は、その思いつきが大切です。思いつかなければ、奏上しようとも考えないでしょうから」
その通りね。
多くの
「それもそうですね。ともかく、試してみますよ」
成功するにしても失敗するにしても、試してみないとわからないものね。
その後、ミリア聖司教と少し話をしてから、あたし達は大和と一緒に、儀式の間に入った。
ここに来るのは、大和と結婚した時以来ね。
と言っても、3日前のことなんだけど。
「確か魔法の奏上は、魔法の名称と用途、効果を、魔法の女神像の前で、言葉に出さず、魔力を使って伝えるんだったな。よし、やってみるか」
大和は、儀式の間に安置されている魔法の女神像の前に立ち、瞑目して祈りを捧げ始めた。
いえ、祈りじゃなくて奏上してるんだけど、傍から見たら祈ってるようにしか見えないわね。
しばらくすると、魔法の女神像が光を放ち、手にした本に文字が浮かび上がってきた。
って、成功してるじゃないの!
「あー、どうやら成功したみたいだな。2つとも」
「2つも奏上してたんですか!?」
フラムが驚くけど、あたしやラウス、レベッカだってすごく驚いてるわよ。
てっきり1つだと思ってたのに、まさか2つも奏上していて、しかもどっちも認められたなんて……。
「奏上された魔法はイークイッピング?ステータリング?どっちも
いち早く、本に浮かび上がった文字を読み上げたのはレベッカ。
この子、案外肝が太いのよね。
それはそれとして、どっちも
一応、本には魔法の概要も浮かんでるけど、イークイッピングはともかく、ステータリングは意味がわかりにくいわね。
「イークイッピング、ストレージや魔導具内にある衣服や鎧、武具を瞬時に着脱する。詠唱は魔法名、オン/オフ、装備品の名称。ただし事前準備として、一度身に着けておく必要がある。こ、これって、すごく便利なんじゃ?」
確かにそうだわ。
一度身に着けておかなきゃいけないとはいえ、一瞬で鎧を着られるようになれば、何かあってもすぐに戦えるようになる。
あたしのバトルドレスやオーダーの鎧なんて、一度着たらすぐには外せないし、手間もかかるから、それがなくなるだけでもありがたいわ。
「魔道具内って、ストレージバッグやミラーバッグのことですよね?その中に入れてある装備も対象になるということは、ハイクラスじゃなくても使えるということですね」
そうなるわね。
翼族ならストレージングは使えるけど、他の種族はハイクラスに進化しないと使えない。
そうなると使える人が限られすぎるけど、所持してる魔道具も対象になるなら、正しく万人が使えることになる。
「もう1つのステータリングは……すごく説明文が長いですね」
そうなのよね。
えーっと、何々……。
自分の魔法の設定や確認ができる。
オープンで開き、クローズで閉じる。
連動させた魔法を、オペレーターから直接使用する事が可能。
ライブラリング:称号表示のオン/オフを選択する。
再設定するまで効果が持続する。
ストレージング:ストレージ内の物品を確認できる。
魔石、魔物、魔導具、衣服、武具などの分類ごとに仕分けも可能。
イークイッピング:装備一式を登録することで、個別に装備する手間を省く。
最大で10種まで、番号で登録可能。
等々。
……何、これ?
いえ、確かに便利なのは間違いないわよ。
だけどこれ、便利すぎない?
他の
数が多すぎるから一部だけ説明するけど、連動してるのは
……けっこうあるわね。
マッピングは紙じゃなくて、ステータリングに直接記録できて、サーチングは使った物体が何だったかを記録し、確認できる。
と言っても、マッピングは
クエスティングも同じだけど、こっちはハンターズギルドで確認しても消えないから、どこにどんな魔物がいたのかを、後日でも確認できる。
賜った
だけど一番驚いたのは、奏上されたばかりのイークイッピングまで連動してたことだわ。
ここまでくると、逆に頭おかしいんじゃないかって思えてくるわよ……。
大和は満足そうに、自分のステータリングをいじってるわね。
青い板みたいなのが大和の前にあるけど、あれがオペレーターか。
さすがに内容は見れないけど使ってるっていうのはわかるし、そうじゃないと変な動きをしてるようにしか見えないから、これは助かるわ。
「俺の思ってたことが、大体できるようになってるな。さすがにクエスティングは文字でしか表示されないけど、下手に地図で記録できたりなんかしたら色々と問題が出るから、ハンターとしてはこっちの方が助かる」
そりゃ地図はね。
詳細な地図は国家機密だけど、簡易的な地図は一般にも出回っている。
特にハンターは、その地図に自分で手を加えているから、細部までしっかり作りこんでる人もいたりする。
ハンターズギルドは魔物の生息域なんかを把握しておかないといけないけど、報告の際はライセンスを預かって、記録されているクエスティングの情報を、魔導具として作られている地図に移して、ライセンスの情報は消去しているわ。
ああ、でも
「あ、ミラーバッグの中も、魔力登録すれば確認できるんだ!」
「入れっぱなしにすることはないけど、一々中を見なくても確認できるのは助かるねぇ」
ラウスとレベッカは、早くもステータリングを使いこなしてる気がする。
あたしはストレージングが使えるから、ミラーバッグやストレージバッグは使わないけど、確かに中を確認できるのは便利だわ。
特にストレージングなんて、一度入れたらそのままっていう物もあるんだから。
「『イークイッピング・オフ、カテゴリー1』。お、消えた。『イークイッピング・オン、カテゴリー1』。おお、こうなるのか」
大和は大和で、ステータリングで登録した装備を、イークイッピングを使って着脱している。
楽しそうね……。
「でもプリムさん、どちらの魔法も、本当に便利ですよ。プリムさんもストレージングが使えるんですから、確認しておいた方がいいと思います」
「それもそうね。『ステータリング・オープン』。えーっと、ストレージングは……これね」
フラムの言う通り、便利な魔法なのは間違いないから、あたしはステータリングを開いて、その中からストレージングの項目を選んだ。
文字に触ると板の表示が切り替わるから、最初は驚いたわ。
えーっと、ストレージの中は……。
うん、バリエンテを出る際に入れてきた服とか、依頼の報酬でもらったお金とか、あとはウインガー・ドレイクが1匹あるわね。
正直、服のことはほとんど忘れてたわ。
あとお金は、総額でいくらあるのかも表示されてるし、貨幣の枚数も個別に調べられるし、レイド・ユニオン用と個人用で分けることもできるのね。
一々計算しなくてもいいから、これは便利だわ。
いざ使ってみると、けっこう面白いわね。
結局あたし達は、ミリア聖司教が来るまでステータリングを開いて、色々な設定をしたりしていた。
奏上された魔法が
イークイッピングを使えばいつでも装備を身に着けるられるから、これは普段着も買っておくべきね。
ステータリングは何か確認したいことがあったら使うことになるだろうけど、自分でも忘れてることってけっこう多いから、これも使うことは多いと思う。
まったく、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます