合金の進捗状況
「そうだな、見た感じは
エドが試作合金の説明をしてくれている。
魔力に関してはいい感じだが、まだドロドロに溶けてる状態だから、完全に冷ましてみないとわからないらしい。
確かに固まらないと、硬さとか強さはわからないから、これは仕方がないな。
「俺としては
ヘリオスオーブにもインゴットはあって、専用の機材とデフォルミングっていう
簡単って言っても、デフォルミングは形を変えたり整えたりする魔法だから、クリエイターズギルドが規定しているサイズに足りなければ、金属塊を熱して、少し溶かしてから混ぜ合わせて、冷えて固まってからデフォルミングを使わないといけないらしい。
ちなみにこの世界のインゴットは重さを測るためのものじゃなく、素材として使いやすくするために大きさを揃えた物になっている。
標準的なインゴットで50×20×10っていうサイズになってて、他にもこれの倍とか、半分っていうサイズのインゴットも存在しているぞ。
「あ……」
って言ってみたら、エドが固まった。
考えてなかったのかよ。
「まあ、インゴット3本分の重さにはなるが、量も3本分になるわけだから、3分の1にすればいいだけだけどな。多分同じ大きさのインゴットと比較すれば、
「大和、てめえ……」
いや、簡単な計算問題だろ。
それぐらい始める前に気づけよ。
「エドって計算とかが苦手なんだよ。何か作る時だって、いっつも目分量や感覚でやるから、いつか失敗するんじゃないかって口を酸っぱくして言ってるし、リチャードじいさんやタロスさんからも注意されてるんだけどねぇ」
マリーナが暴露してくれた。
それは確かにマズイだろ。
店売り品とかなら多少の性能差はなんとかなるかもしれんが、依頼とかじゃ致命的だぞ。
「いざって時は、マリーナやフィーナが手伝ってくれるから大丈夫だ」
「他力本願かよ。少しは自分で覚える努力をしろよ」
「人には出来ることと出来ないことがある!」
格言っぽく言うなよ。
マリーナは呆れてるぞ。
「もう慣れたけどね。それに最近はフィーナも手伝ってくれるから、あたしの手間も減ってるし」
ハーピーのフィーナか。
というかフィーナって、クラフターズマスターの身請奴隷だろ?
なんでお前らの手伝いができるんだよ?
「身請奴隷は、犯罪奴隷みたいに朝から晩まで、休みなく働くってわけじゃないぞ。少ないとはいえ賃金も出るし、休みもある。しかもフィーナは腕もいいし仕事も丁寧だから、こっちから頼んで、工房に来てもらうこともあるんだよ」
なるほど。
というか身請奴隷って、すげえ金がかからないか?
いくらで身請けしたのかは知らないが、行ってしまえば出稼ぎ労働者と変わらない。
違いがあるとすれば、借金が無くなったり、家族に身請けした時に得た金がすぐに入ることぐらいか。
しかも条件を達成したら奴隷から解放されるし、奴隷でいる間の衣食住は主人が用意することになってるから、奴隷を買うメリットが見つけられないんだが?
「あるよ。普通に人を雇うより安いし、奴隷だから情報を漏らすこともない。初期コストこそかかるけど、その金額を稼ごうと思ったら少ない給金を貯めるしかないし、数十年はかかるのが普通。解放される前に死んじゃうことも珍しくないから、意外と解放される人って少ないんだよ」
簡単に考えて身請けしたら、死ぬまで奴隷のままって可能性のが高いのか。
休みがあるとはいえ、金が使えないのは痛い。
衣食住の心配はしなくていいとは言っても、それじゃストレスも溜まるよなぁ。
「でも、すごいです!そんな金属ができたら、世界が変わりますよ!」
ラウスが目を輝かせているが、気持ちはわかる。
成功すれば、
「俺もそう思って引き受けたんだよ。まさに革命ってやつだな。だけどかなり魔力を使うから、実際に作るとしても、クラフターズギルドでも魔力の多い種族か、レベルの高い人でもないと難しいな」
そうなのか?
そういえばデフォルミングにしろアジャスティングにしろコネクティングにしろ、そういった
他にもトレーダーズギルドに登録すれば武器や防具、魔導具の名前や素材を見抜けるインヴェスティング、素早く計算するためのカウンティングっていう
もちろんハンターズギルドにも、地図に現在地を示すことができるサーチング、迷宮内限定だが、地図を作成することができるマッピング、ライセンスに倒した魔物の数と場所が表示されるクエスティングっていう
特にクエスティングは、依頼を受けた魔物を、ちゃんと指定された地域で狩れているか確認ができるし、依頼数も確認しやすいからけっこう便利だ。
「エドでも難しいの?」
「難しいな。幸い、俺はフェアリーハーフだからできなくはないが、タロスさんは無理だった」
エドはフェアリーハーフ・ドワーフ、マリーナはフェアリーハーフ・ドラゴニュートだから、普通のドワーフやドラゴニュートよりも魔力は多いそうだ。
これは2人ともフェアリーが交じってるから魔力が多くなってるだけで、ハーフだから多いってわけでもないぞ。
「リチャードさんは?」
「じいちゃんはできそうだが、実際に試したわけじゃないから何とも言えないな」
「どっちにしても、リチャードじいさんには武器を打ってもらうために魔力を残しといてもらわないといけないから、インゴット作成はできないと思うけどね」
ああ、それがあったんだった。
インゴットを作るだけでそれだけの魔力を消耗するなら、武器を打ったりすればどれだけ消耗するか想像もできないな。
「まあ、全部できてからの話だけどな。早ければ明日にはわかるが、大和の話を聞く限りじゃ配分も重要っぽいから、そっちも考えなきゃいけねえと思う」
だなぁ。
素材の配分によって強度や硬度が変わるのはよくある話だし、使う金属によっても変わるから、試行錯誤は必須だ。
早く完成してほしいが、焦って粗悪品になったりしたらたまったもんじゃないから、こればっかりはエドとマリーナに任せるしかないな。
「あたし達には頑張ってとしか言えないけど、無理はしないでよ?」
「もちろん。あたしが倒れたら、誰も工房の人達を止められなくなるからね」
それもそれでどうかと思うぞ。
「だからってわけじゃねえが、
「そんなこともしてたのか。というか
その2つの合金ってことは、
だけど魔力の消費が抑えられてるって言っても、それなりに魔力は使うはずだろ?
無理だけはしないでくれよ?
「出来る範囲で、なんとかやるさ。で、俺とマリーナは帰るが、他はどうするんだ?」
おっと、そうだった。
まあ、答えは決まってるんだが。
「泊めるよ。ああ、お前らも俺が送っていくぞ」
「Gランクハンターが護衛してくれるなんて、なんか贅沢だね」
「だな。っていうか、そこまで気を使わなくてもいいんだぞ?」
「そうはいかないわよ。あいつら、何をしでかしてくるか想像できないんだから」
まったくだ。
連中が気が付いてないとか、既に逃げ出す算段をしてる可能性も高いんだが、用心に越したことはない。
「というか、私達が泊まるのは確定なんですかぁ?」
諦めろ、レベッカ。
というか、今日だけで2回もバカどもにからまれたんだから、安全を考えれば俺達と一緒にいた方がいい。
見ろ、既にミーナは諦めてるぞ。
幸い魔銀亭はアルベルト工房に向かう途中にあるから、プリムにミーナ達を任せることができるし、俺は軽く町を見回るつもりでいる。
さすがに簡単に見つけることはできないだろうけど、オーダーズギルドが門を封鎖してるから、町の外に出ることもできない。
時間をかければバカなことをするバカは絶対に出てくるから、場合によってはバカどもが泊まってる宿に、直接押し入ることも考える必要があるだろうな。
「ホントはあたしも行きたいんだけど、みんなのこともあるし、一気に殲滅するなら大和の刻印術の方が適してるしね」
うむ、広域系は本当に便利だからな。
しかもソナー・ウェーブにドルフィン・アイの併用で、不意打ちにもしっかり備えてるから、少なくとも俺に死角はない、と思う。
「それに大和のフィジカリングとマナリングなら、多分、あいつらの攻撃は効かないと思うしね」
フィジカリングを使えば肉体の防御力が、マナリングを使えば装備品の防御力が上がる。
その防御力は、話を聞く限りではゲームとかと同じように、レベルの低い相手からの攻撃をシャットアウトすることができる。
さすがに怖くて試したことはないが、今の俺のレベルならレベル20台の攻撃はほとんど無効化できて、レベル40台が相手でもハイクラスでもなければ致命的な攻撃を受けることはほぼないらしい。
もちろんフィジカリング、マナリングを使ってればの話で、使わなければレベル1の人間でも、高レベルの人を殺すことができてしまう。
だから寝ている時が一番危険なんだが、逆に寝ている時だからこそ使えるようにならなきゃ、使いこなしたとは言えないんだそうだ。
魔法に関しては遅れてると感じたことがあるが、
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