客人の提案
Side・マリーナ
「やっぱり、
「それが
あたしは今、プリムのバトルドレスのメンテナンスを手伝っている。
フェアリーハーフでもあるあたしは、ドラゴニュートにしては背が低いんだけど、胸は大きい方だと自負している。
だけどプリムは、そのあたしよりも大きい。
こんなに大きいと戦う時邪魔になるんじゃない?って心配になるぐらい大きい。
別に魔物に抉られてしまえ、なんて思ってないよ?
「?どうかしたの、マリーナ?」
「あんたと大和の関係って、一体何なのかなってって思ってね」
「べ、別に……ただのパートナーよ」
真っ赤な顔して否定されても、全然説得力ないよ。
そもそも男女でコンビ組んでるハンターなんて、ほとんどが恋人、あるいは夫婦なんだよね。
ほとんどっていうのは、血縁者でコンビを組んでる場合もあるからで、それ以外は全部恋人、夫婦なんだけど、そこんとこわかってるのかな?
ちょっと探りでも入れてみますか。
「そ、それは知ってるけど、でもそのハンターだって、最初から恋人同士だったわけじゃないでしょ?」
「まあね。だけど全員恋人同士になってるんだから、間違ってるわけでもないでしょ?」
今度は顔だけじゃなく、耳まで真っ赤になっちゃった。
白いハイフォクシーが赤くなるって初めて見たけど、ピンクになってるよ。
さすがにこの反応じゃ、プリムが大和に惚れてて、しかも陥落済みなのは間違いないね。
「なっ!?」
「なんで知ってるの!?って顔してるけど、誰でもわかるよ」
ハウスルームとはいえ、同じ宿の同じ部屋に泊まってるんだから、大和だってプリムの気持ちに気がついてそうなもんだけどね。
というか、大和が娼館に行ったって話は聞かなかいから、大和もプリムのことが気になってるんじゃないかな?
女は度胸だし、想いを打ち明けてもいいと思うけど、外野がとやかく言うべきことじゃないか。
「あたしとしては、あんたの想いを応援してるけどね。大和に伝わるといいね」
「あ、うん。ありがとう」
本当に伝わるといいね。
さて、まだ話してたいけど時間もないし、バトルドレスはもちろん、手甲や足甲もアジャスティングでサイズピッタリになってるみたいだから、リチャードじいさんとタロスさんのとこに行こうか。
ああ、アジャスティングっていうのは、
服とか鎧とかに付与させることで効果を発揮する魔法で、ある程度のサイズ差ぐらいなら、問題なく合わせられるんだ。
「お待たせ、プリムの方は終わったよ。アジャスティングも問題ないから、このままでも戦えるよ」
「こっちはまだ、大和が手間取ってる。まあ
慣れてないって、革鎧を着けるのが?
大和のレベルってバカみたいに高いんだから、慣れてないってことはないと思うんだけど?
「親父さんの方針なんだと。なんでもあいつが片手であしらわれるって話だから、下手な鎧は何の役にも立たねえし、その親父さんの方針で鎧を使ったことがないんだとさ」
いや、待ってよ。
大和のレベルって57で、単独で災害種のブラック・フェンリルを倒せる強さなんでしょ?
その大和が片手であしらわれるって、大和のお父さんってどれだけ化け物なの?
「化け物の親は化け物ってことだろ。で、プリムの方は、アジャスティングも含めて問題ないって?」
「問題なし。バトルドレスは元々プリムのだから、手甲や足甲の微調整ぐらいだったよ。って、大和の方も終わったみたいだよ?」
「あっちはタロスさんが見てくれてるから大丈夫だ。じいちゃん、武器は?」
「用意できとるぞい。無理やり付けたせいで魔力強度が落ちとるし、寿命も短くなっておるがな。しかもあの2人は、既に何本ずつか武器をダメにしておるから、これも使い捨てじゃな」
昨日の朝の話なんだけど、大和とプリムから、こないだ渡したのと同じ武器の製作依頼を持ち込まれた。
理由は、試し切りで使った武器が、すぐに壊れてしまったから。
壊れた武器を見せてもらったんだけど、
とんでもない数の魔物を狩ってきてはいたから、そのせいもあったと思うけど、それでもたった1日で、何本もダメにされるとは思わなかったな。
本人達もそんなつもりはなかったんだけど、ミスリルブレードやミスリルハルバードはエビル・ドレイク討伐のために取っておきたかったからって言われちゃったし、あの有様を見たら納得するしかなかったよ。
それにすごく申し訳なさそうな顔をしてたから、リチャードじいさんとタロスさんが、10本ずつ剣と槍に
さすがにこれは自腹だから、予定外の出費になってたけどね。
ミスリルソードもミスリルスピアも、けっこうなお値段なんだよ。
「仕方あるまいて」
寂しそうだね、リチャードじいさん。
クラフターズギルドから依頼されてる数打ち品でも、丹精込めて仕上げてるんだから、こんな使い方されるなんて本望じゃないんだよね。
「すいません、リチャードさん。俺としてもそんな使い方はしたくないんですが……」
「あたしもよ。今はまだ武器がないからこんな使い方しかできないけど、しっかりとした武器を手に入れたら、こんな使い方はしないわ」
「その一言だけで十分じゃよ」
嬉しそうだね、リチャードじいさん。
やっぱりこの2人、今フィールにいるハンターとは一味、二味どころか、根本から違うね。
あたしは鍛冶師じゃなくて仕立師だけど、クラフターとしてのプライドはしっかりと持っている。
いつか2人のために、あたしも何か作ってみたいな。
「ところで2人の武器じゃが、やはり先日渡した武器を、さらに強化、発展させた感じでいいかの?」
「え?いや、それってエビル・ドレイク討伐の報酬ですよね?まだ狩りにすら言ってないのに、ちょっと気が早いですよ」
確かにそうだけど、仮に報酬じゃなくても、あんた達の武器ぐらい、いつでも打ってくれるよ。
エドもタロスさんもそのつもりだし、あたしだってそう。
「それってつまり、
「うむ。
「そんな技術があるなんて……」
正確には、剣芯じゃなくて刀身だけどね。
その刀身を、刃を除いて
リチャードじいさんが試行錯誤を繰り返してやっと完成させたんだけど、30年かかったって言ってたね。
この技術がクラフターズギルドにも認められて、リチャードじいさんは数人しかいないAランククラフターになったんだよ。
本当に難しい技術だから、まだリチャードじいさんにしか使えないけどね。
「なるほど。それなら、これも試してるのかな?」
「これってどれだよ?」
というか、なんで大和は思案顔なのよ?
プリムは新技術に驚いてるのに。
「ワシも興味があるのぅ」
「俺もあるな。大和君、聞いてもいいかな?」
リチャードじいさんだけじゃなく、エドやタロスさんまで興味持っちゃってるね。
実はあたしもだけど。
というか大和ってクラフターじゃないのに、何か試したことでもあるのかな?
「今まで
「……はい?」
「……
あたしは大和の言ってることがわからなかった。
異なる金属を混ぜ合わせるなんて、本気で言ってる?
そんなこと、できるわけないじゃん。
「……さすがにそれはないのぅ。そもそも金属は熱を加えれば溶けるが、
だよね。
確かに鍛冶に火は必須で、熱した金属を打つことで形を整えていくけど、ドロドロに溶かすことなんてまずないし、聞いたこともない。
インゴットを作る時だって、ある程度熱するだけで済むよ。
というか
「いや、面白そうじゃねえか。
と思ってたら、よりにもよってエドがやる気になってる!?
そんなお金、どこにあるのさ!!
「
「そういうことなら、あたしも出すわよ。あたしとしてもそんな金属が出来るんなら、是非使いたいしね」
いくらなんでもそれは無理でしょ!
というかクラフターズマスターが知ったら、真っ青になって倒れるよ。
いくら
それに
「確かに金はかかるが、俺としても一度ぐらいはやってみてもいいんじゃないかと思う。それにこんなことを言うのはあれだが、大和君達が金を出してくれるんなら、俺達としても損はないからな」
そりゃ確かにタロスさんの言う通りだけどさ、だからって無駄にしかならないことに時間使わなくてもいいんじゃない?
それなら、リチャードじいさんの技術で武器作った方が絶対良いって。
「いや、ワシとしても興味がある。エド、やってみろ」
「おうよ!何事も試してみないとわからねえからな!」
エドがすっごくやる気になってる。
こうなったらもう止められない。
仕方ない、出来ないとは思うけどエドがやりたがってるんだから、あたしも出来る範囲で手伝うか。
確か
さすがに全部とはいわないけど、ある程度は買い付けられないか交渉しないといけないなぁ。
あ、
大和とプリムの報酬のためって言えば、クラフターズギルドも嫌な顔はしないと思うけど、明日の漁が終わったらすぐに行かないとだなぁ。
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