伯爵からの依頼

 当たり前だが、貴族の屋敷に入ったのは初めてだ。

 テンプレ通りの造りの屋敷だが、別邸ということだから本邸よりは小さいらしい。

 どうやらビスマルク伯爵は、応接間でフレデリカ侯爵と会っているそうで、俺達もその部屋に通されるようだ。

 内容はほとんど同じだから当然か。

 依頼の話になったら俺とプリム、あとはライナスのおっさんだけになる可能性もあるが。

 そのライナスのおっさんだが、俺達が屋敷に入ったタイミングでカミナさんを伴って現れたから、今は一緒に案内されている。


「ようこそいらっしゃった。私がビスマルク・ボールマンだ。お久しぶりですな、ソフィア伯爵」

「ええ、お久しぶり。ビスマルク伯爵もお変わりなく」

「最近はどこも物騒なようですな。簡単にですが、フレデリカ侯爵から話は伺っています」


 ビスマルク伯爵はエルフということもあって年齢がわかりにくいが、どうやらアーキライト子爵より年下らしい。

 まあ、レベルが高いほど若い時間が長く続く世界だから、ヒューマンであっても見た目と実年齢が合ってない人は多いんだが。


「聞いてるなら話は早いわ。だけど私からも、つい先程発覚した事実を告げなければならないのよ」

「つい先程?何があったのですかな?」

「ええ、実は……」


 ソフィア伯爵の話した内容は、さっき俺とプリムが捕まえたレティセンシアの工作員達のことだ。

 詳しい話を聞いてなかったフレデリカ侯爵も驚いているが、前情報すら持ってなかったビスマルク伯爵は言葉もないといった感じで、大きく目を見開いている。


「レティセンシアが……。確かにこれは、早急に陛下のお耳にいれなければいけませんな。よろしい、我が家のワイバーンを出しましょう。ですが先程フィールに到着したばかりですので、出発は明日の朝とさせていただきたい。今日は休ませてやりたいのでね」

「それは当然でしょう。それに今からでは、今日中に王都に辿り着くことはできませんからね」


 フィールから王都までは、ワイバーンなら途中で休憩を挟む必要があるものの、6時間ちょっとあれば着くらしい。

 だが今からでは、王都に着く頃には夜になっているし、何より報告書ができていないから、今すぐ発つことができない。

 それはフレデリカ侯爵もソフィア伯爵も承知の上だから、この後、急いで報告書を仕上げることになるだろう。

 アーキライト子爵が頑張ってるかもしれないが、領代3人の署名は必要なはずだから、書類の確認はしなきゃいけないだろうけどな。


「感謝します、ビスマルク伯爵」

「いえ、私としても、此度の危機を見過ごすことはできませんからな。それにしても、我が領内での事件がフィール、ひいてはアミスターを救うことになろうとは、世の中何があるかわかりませんな」

「ボールマン伯爵領で事件?何があったんですか?」


 俺も気になるな。

 急ぎでフィールに来たんだから、ボールマン伯爵領としても見過ごすことができない大きな事件なんだろうけど、どんな事件なのか想像もできない。

 あ、ボールマン伯爵領からだと、空路でもどこかの街で1泊しなきゃいけないらしく、今回はレスペトっていう、ソフィア伯爵の領都に泊まったそうだ。

 レスペトはマイライトを挟んでフィールの真南になるため、空路なら2時間ぐらいでフィールに着ける。

 だから昼頃に着いたってことみたいだ。


「我が領では秋になると世界樹、そして豊作を祝う祭りを行うことはご存知ですかな?」

「それはもちろん。ボールマン伯爵領の秋のお祭りは有名ですから」

「そうですね。王都にある大世界樹を含め、フィリアス大陸に13本ある世界樹を中心に豊作を祝い、翌年の豊作を祈願する祈祷を兼ねた祭事。アミスターに住んでいる者なら、知らない人はいないでしょう」


 収穫祭ってやつか。

 というか、世界樹ってなんだ?

 プリムに視線で訪ねてみたら、同じく視線で、後で、と返された。

 この場で聞いたら空気読めって話になりかねないから、そうするしかないか。

 わかったのはボールマン伯爵領だけじゃなく、王都にも世界樹があるってことぐらいか。


「その祭りでは、神々に舞と供物を奉納することになっている。舞巫女達はフェザー・ドレイクの皮で作られた衣装を身に纏い、舞うことになっているのだが、その衣装が数着、盗難にあってしまったのだ」


 そりゃ大変だし事件だが、巫女の衣装を盗むって、いったい何が目的でそんなことしやがったんだよ。


「衣装が盗難って、犯人は捕まったんですか?」

「残念ながら、手掛かりすらつかめていません。もちろん配下の者やオーダーズギルドを動かして捜査を続けているのですが、それよりも盗まれてしまった衣装を何とかする方が先決だ。私も子供の頃からその舞を見ているし、神々と世界樹を称える祭りである以上、中止にすることはできませんのでね」


 確かに神々と世界樹を称えるってことなら、中止にはできないよな。

 俺の実家は神社だから、祭りが大切だということはよくわかる。


「なるほど、仮に犯人を捕まえたとしても、既に売り払った後なら取り戻すこともできない。だから新しく衣装を作るために、フェザー・ドレイクの皮が必要ということですか」

「そういうことです」


 つまり、フェザー・ドレイクの素材収集依頼ってことか。

 しかも事情が事情だから、急ぎっていうのも無理もない話だ。

 だけどボールマン伯爵領には迷宮ダンジョンがあるし、フェザー・ドレイクなら生息してそうなもんだけどな。


「でもボールマン伯爵領の迷宮ダンジョンにも、フェザー・ドレイクはいたはずでしょう?そこで依頼を出すわけにはいかなかったの?」


 フレデリカ侯爵やソフィア伯爵も、俺と同じ疑問を感じたようだ。

 迷宮ダンジョンから素材を入手することができるなら、そこから手に入れた方が早いし確実性も高いはずだしな。

 というか、やっぱりいるのか。


「もちろん依頼は出しております。だがフェザー・ドレイクが生息しているのは、ガリア迷宮の24階層とかなり深い。元々迷宮ダンジョンに潜るハンターの多くは浅い階層がほとんどで、深くても10階層なのです。24階層まで潜るハンターは残念ながら……」


 そういうことか。


 迷宮ダンジョンはいくつか存在しているため、当然だが名称がつけられている。

 ガリアっていうのはボールマン伯爵領の領都で、迷宮ダンジョンを中心に発展してきた街だそうだ。


 そのガリア迷宮、全貌は不明だが、現時点で32階層までが確認されている。

 なんでも到達したハンターが、ドラゴンの群れに襲われたとかで、これ以上の探索を諦めたんだとか。

 そりゃ諦めるだろうよ。


 迷宮ダンジョンの最奥にある迷宮核ダンジョンコアは、守護者ガーディアンによって守られているが、その迷宮核ダンジョンコアが破壊されることはほとんどない。

 理由として、迷宮核ダンジョンコア迷宮ダンジョンは魔力で繋がっており、処置を施した保管庫の中に安置しておけば、どれだけ距離が離れていても、迷宮ダンジョンの機能を損なうことがないからだ。

 だからどこの国でも、攻略して運び出された迷宮核ダンジョンコアは、ほぼ全てが王城で厳しく管理されている。

 アミスターも3つほど迷宮核ダンジョンコアを所有し、管理してるそうだ。


 全貌が判明してる迷宮ダンジョンでもっとも大きいのは、ソレムネ帝国の帝都にあり、全37層からなっている。

 最下層まで判明していることからわかるように、既に迷宮核ダンジョンコアは運び出され、ソレムネの帝都デセオにある帝王城で保管されているらしい。

 まあ、ゴーレムやパペットはいないらしいから、鉱物資源には乏しいそうだが。


「なるほどね。24階層ということは最短でも1ヶ月近くかかるから、お祭りに間に合うかはわからない。だけど偶然24階層まで行って、フェザー・ドレイクを倒してくるハンターがいるかもしれないから、その場合は買い取ろうということで、ダメ元で依頼を出しているというわけなのですね」

「侯爵のおっしゃる通りです。幸いガリアのハンターズマスターはガリア出身のハンターですから、彼女も祭りの重要性を理解してくれておりますので」


 ガリアのハンターズマスターって女性なのか。

 って、女性が多い世界だから、別に珍しいってわけでもないか。

 だけど、フィールのハンターズマスターとはえらい違いだな。

 爪の垢を煎じて飲ませてやりてえよ。


「その点はガリアがうらやましいですな。では伯爵がフィールに来られたのは、フェザー・ドレイクの素材収集依頼を出すため、ということでよろしいですか?」

「そうなる。だが話を聞く限りでは、フィールでも手に入れることが難しいようだ……」


 ライナスのおっさんに、肩を落として答えるビスマルク伯爵。

 見てて気の毒になるぐらい落ち込んでるな。


「えっと、俺達が狩ってきましょうか?」

「君達が?そういえば君達はGランクハンターだと聞いたが……しかし若すぎる。いや、疑うわけではないのだがな……」


 思わず口を開いてしまったが、俺とプリムがGランクだってことは信じられないようだ。

 当然の話だから構わないんだが、証拠としてライセンスを見せたらすげえ驚かれた。


「レベル57とは……。ガリアにも、これほどのレベルのハンターはいないぞ……」


 レベル50代はヘリオスオーブでも数十人しかいないって言われているが、そのほとんどがレベル52~53ぐらいで、俺のようにレベル60に近い人は少ないらしい。

 もちろん全ての人のレベルを確認するのは無理な話なので、探せばいるのかもしれない。

 いや、その場合でも噂にはなってるだろうから、結局は見つかってるか。


 そしてさりげなくだが、プリムのレベルが52に上がっていた。

 極炎の翼を使いこなすことができれば、また上がるんじゃないだろうか。


「都合がいいと言うべきか、あたし達は近日中に、マイライト山脈に行く予定だったんです。何日かかるかはわかりませんが、そんなに長期間いるつもりはありません。長くても1週間程の予定ですね」

「フェザー・ドレイクと遭遇できるかっていう問題はありますけど、そこは運次第ですからなんとも」


 フェザー・ドレイクの巣があるのはマイライト山脈の山頂付近だから、けっこう距離があるんだよな。

 標高は富士山並だから、登るだけでも一苦労だってのに、山頂付近にも森があるって話だからたまらない。

 しかも登山路なんてもんは、整備どころか存在すらしてないから、目的地に辿り着くだけでも数日はかかるだろう。

 登山素人の俺には厳しいぞ。

 冬山じゃなくて、夏山なのが救いか。


「それはそうだろう。私としても来月までに手に入ればいいから、そこまで急いでもらわなくても問題はない」


 祭りは10月らしいから、8月中に手に入れば十分間に合うってことか。

 確かに巫女服の仕立てにどれぐらいかかるかはわからんが、優先順位は高いだろうし、1ヶ月あれば仕立てられるか。


「なるべく早く狩ってきます」

「お願いする。そういえば、何故君達はマイライトに?オークの集落でも潰しに行くのかね?」


 マイライト山脈はフェザー・ドレイクだけではなく、亜人オークも生息している。

 しかも生息数が多いから、フィール近郊はもちろん、山の反対側にあるリベルターやレティセンシアにも被害をもたらすことがある。

 救いがあるとすれば、この世界のオークやゴブリンは同族としか子供を作れないので、人間の女性を母体にすることはないってことだ。

 逆に男を攫う亜人はいるらしく、そっちは美しい女性型の亜人なんだそうだ。

 アミスターには生息していないから、領代も詳しくはないそうだが。


「えっと、それは……」

「ビスマルク伯爵の依頼内容を聞いているのに、私達が出した依頼内容を答えないのは失礼ですね」

「そうですね。彼らには、私達領代が依頼を出しているの。内容はエビル・ドレイクの討伐よ」


 言い淀んでいた俺達に代わって、フレデリカ侯爵とソフィア伯爵が答えてくれたが、その瞬間ビスマルク伯爵が絶句した。


「……エビル・ドレイクだと?今のマイライトには、そんな化け物がいるというのか?」

「ええ、アーキライト子爵の部下が確認したそうです。もちろん見間違いという可能性も捨てきれませんが、だからといって無視することはできません」

「それはそうだろう。なにせ異常種なのだから、見間違いであることに期待したいところだ。ということは他にも、マイライトに行くハンターがいるということですな」


 異常種相手に少人数で挑むのは自殺行為だから、俺達が2人で行くとは思ってもいないようだ。

 ある意味当然の話なんだが、俺達に言わせれば、今のフィールのハンターと組んで行動するなんて、そっちの方が自殺行為だ。

 そもそも今のフィールに、マイライトに行きたがるハンターがいるわけがないから、結局は俺とプリムの2人で行くしかないんだよな。


「面目ない話ですが、今のフィールでは、この2人以外のハンターは信用できないんですよ。なにせ依頼を受けない、街に迷惑をかけると、ハンターズギルドの根幹を揺るがすことを平然としていますからね。しかもハンターズマスターが直々にグリーン・ファングの件を持ち出して、それを認めちまってるんですよ」

「それは……何というか……。問題ないのかね?」


 普通に大問題でしょう。

 狩りをしないハンターなんて存在価値がないし、そのくせ町に迷惑をかけるなんて、人としてどうかと思う。


「問題だらけですね。ですが伯爵がフィールに来られたおかげで、予想以上に早く総本部に報告することができます。おそらくハンターズマスターは解任後、身柄をアミスターに引き渡され、ハンターも奴隷落ちの上で鉱山送りってことになるでしょう」

「そうか。そんな大変な時期に、優秀なハンターを借り受けてしまうことは申し訳なく思うな」

「お気になさらず。そもそもこの2人が来なければ、最悪の事態も考えられましたからね」

「ええ。私達も、神に感謝しましたよ」


 大袈裟な。

 確かに時期は偶然だが、俺達は元々フィールに来るつもりだったし、ビスマルク伯爵の領地でそんな事件があった以上、ハンターズマスターの企みがバレるのも時間の問題だったと思うんだがな。


「大袈裟すぎますよ。それよりビスマルク伯爵、フェザー・ドレイクの素材収集依頼はお受けしますが、報酬はどうなるんですか?」

「おっと、すまない。今回は緊急であり、君達Gランクハンターを指名させてもらうわけだから、1人30万エルとさせてもらう。フェザー・ドレイクは3匹欲しいところが、最低でも1匹分あれば、盗まれた衣装分は仕立てられるだろう」


 フェザー・ドレイクの買取額が確か3万エルだから、報酬としては破格だな。

 俺がアルベルト工房で買った革鎧がフェザー・ドレイク製で、紺碧色の美しい鎧だってことを考えると、巫女服とかもそっち系の色なんだろう。

 俺からすれば違和感が半端ないが、日本の神社の巫女服と同じじゃないだろうから、比べるのは間違ってるか。


 それにしても急ぎで、しかもフィールのハンターが信用できないことを差し引いても、報酬が高すぎるな。

 Gランクの指名依頼の報酬は10万エルが相場で、素材収集依頼の場合はその分が上乗せされる。

 フェザー・ドレイクを3匹狩ってくればそれだけで20万エル近いが、それでも30万は多すぎだ。


「わかりました。お受けさせていただきます」


 俺が口を開く前に、プリムが受諾してしまった。

 依頼主が適正だと思ってる報酬に文句を言うのは失礼だから、俺も何も言うつもりはなかったが、なんか釘を刺された気分だな。


「ありがたい。頼む」

「努力します」

「ではハンターズギルドとしても、この件を正式な指名依頼として受理させていただきます。カミナ、手続きを頼む」

「わかりました。依頼内容はフェザー・ドレイクの素材収集、数は最低1匹ですができれば3匹以上、期限は8月いっぱいまで、報酬は指名依頼となりますので1人30万エル。それに買取額として1匹につき10万エルを加算。以上でよろしいでしょうか?」

「相違ない。報酬や手数料に関しては、すぐに準備させる」

「かしこまりました。『ハンターズ・リクエスティング』。これで依頼は、正式に受理されました」


 カミナさんが依頼用紙にサラサラと記入し、内容をビスマルク伯爵に確認して受理されると、魔法を使い、用紙が光った。

 今カミナさんが使ったのは、ギルド職員のみが使える協会魔法ギルドマジックで、ハンターズ・リクエスティングといって、ハンターズギルド専用の依頼受注魔法だそうだ。

 これで依頼が受理されたことになり、依頼者が反故したりすればハンターズギルドと国から処罰が下ることになっているらしい。


 なんでも協会魔法ギルドマジックには、いくつかの契約魔法があるそうだが、紙に記入するのは双方の合意を取るための儀式のようなものなので、偽造も複製もできない。

 だから信頼度も高いし、悪用しても明確な証拠として残る。

 契約書自体は紙なので、簡単に燃えるし破けてしまうが、内容は魔法で保護されているため、その程度では失効したりはしない。

 双方の同意があれば契約破棄となるが、一方的な破棄はできないことになっており、その場合は契約魔法の効果によって、契約書の内容が体中に表れてしまい、履行するか解除するかしなければ決して消えないそうだ。

 当然だが、ギルドから処罰の対象にもなっている。


 ちなみにハンターが受ける依頼は、ハンターズギルドと依頼者の間で交わされた契約を代行しているという扱いになるので、失敗しても違反にはならない。

 討伐失敗は珍しくないし、撤退せざるをえない状況も十分ありえる。

 依頼の失敗に関しては、ギルドの規約にも明記されているので罰金を支払わなければならないが、その程度で済む。

 依頼者もそのことを理解した上で依頼をすることになっているから、ギルドの依頼書の契約魔法は最低限の効果しかなく、その代わりギルド職員ならば誰でも使えるそうだ。

 もちろん悪用なんかしたら、物理的に首が飛ぶことになってるが。


「受理しました。それでは大和さん、プリムさん、こちらが依頼書です。ご確認の上でサインをお願いします」

「了解。これでいいですか?」

「こっちも終わったわよ」

「ありがとうございます。これでこの依頼は、指名依頼として正式に受理されました」


 指名依頼の場合は、ハンターもサインをする必要がある。

 指名依頼をされるようなハンターは、レベルもランクもモラルも高いから、一方的に契約を破棄することはない。

 だが依頼者側が破棄したことが過去に何度かあったようで、それ以来指名依頼に限っては、ハンターも依頼書にサインをすることで、正式に契約をすることになったそうだ。

 当然だがライナスのおっさんが依頼者になってる査察官付きハンターの件、マイライト採掘場の件、エビル・ドレイク討伐の件も、指名依頼として受けている。

 こないだハンターズギルドに行った時に契約書を出されたから、それにサインしたぞ。


「助かる。まさか祭りを中止するわけにはいかないから、ここでどうしようもなければ王都辺りのGランクハンターを呼んで、迷宮ダンジョンに入ってもらわなければならないところだったよ」


 アミスター王国のGランクハンターは、俺とプリムを含めると十数人らしい。

 だが王都には数人しかおらず、しかも全員が別々のレイドに入っていることから、呼びつける場合はレイドメンバーも全員ということになる。

 しかもこちらの都合で呼びつけて迷宮ダンジョンに入ってもらうのだから、報酬もそれなりに出さなければならないし、緊急ということもあるから、ある程度の準備は依頼者側でしなければいけないだろう。

 なるほど、そうなってしまうと、俺達に支払う報酬より出費が嵩むってことか。


「それじゃ俺達は準備しますので、これで失礼します」

「もう行くのかね?今食事を用意させているところだ。せっかくだから、食べて行ってくれたまえ」


 そういや、もう昼飯時を過ぎてるんだよな。

 坑道前で待ってる間に、ストレージの中にある飯を食ってたから、そこまで腹は減ってないんだが、こういう場合って断るのは失礼にあたるんだったか?


「ありがとうございます。ですがあたし達は、簡単にですが食事を取っていますので、あまりいただけないと思いますがよろしいでしょうか?」

「ははは。ハンターは体が資本なのだから、遠慮することはない」


 ビスマルク伯爵が笑顔で勧めてくれたから、遠慮なく昼飯をいただくことにした。

 ちなみに昼飯は、グラス・ボアの肉を使ったパスタとシチューだった。

 もちろん美味しくいただきました、ご馳走様。

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