17.凩吹く日に持つべきものよ 13

 結局…新田の提案によってふたりの交際については予約という奇妙な形に収まった。



「むろんそのあいだに私を幻滅させるようなことがあってはならない」


 新田の釘刺しによりむしろ積極的な精進を期待されるような形になった不二は、それでもすっかりご満悦で冬休み中に春の四季報の原稿をあげるのだと張り切っている。



「それ、付き合ってるのとなにが違うんだ?」


 一応念のためと報告を受けた錦は酷く首を傾げたが、新田が「交際はない、という額面があればキミも頭を抱えずに済むだろう?」といつもの笑みで言い放ったので生徒会もその理解で教師陣への対応を行うと約束した。



「付き合ってねえならクリスマスにふたりで出かけてイチャつくのも変だろうが。それに困ったときはお互いさまってな。つーわけでアタシはちょっぴり困ってんだ。手伝え」


 顛末を聞いた梯平は予定を立てる暇がなかったふたりを実家の教会で行われるクリスマス・ミサのバイトへと駆り出した。

 なんだかんだで一緒にするバイトはそれなりに楽しく、夜に関係者だけで行われた慰労パーティーにも参加できて充実したクリスマスを過ごした。



「へえ、直くん彼女ができたの?義妹候補なんだし一度会ってみたいわ連れてらっしゃいな私服がいまいちなら私がコーディネートをしてあげるわそうね元が文学少女ならクラシカルな雰囲気のものが似合うかしら私服ならワインレッドかネイビーのワンピースあたりがシックで良いわねヨーク切り替えでピンタックの入っ「ストップ、鈴蘭ちゃんストップ」


 正月に実家で兄に顛末を吐かされた直は、兄のイジリよりも義姉の爆上げテンションのほうに苦戦を強いられたらしい。

 SNSでその報告を受けたときの新田は敬遠七割、興味三割だったことも加えておこう。


 ともあれ、持つべき隣人たちの助力によってふたりの関係はなんとか訣別をまぬがれ、なおかつ大きな前進を見せたのであった。



〜つづく〜




 余談だが年明け早々、梯平と青いプリン頭の二年男子生徒との密着ツーショット写真が校内SNSに出回り生徒たちを騒がせることになった。

 彼女はにやにやしながら「落とし前はつけとかねえとなあ?」とのたまっていたが、梯平がそれ以上を語らなかったので、それがなにを意味するのかふたりにはわからずじまいであった。

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