17.凩吹く日に持つべきものよ 2
「ほれ、文化祭のあとで新聞部が出したWeb版校内新聞文化祭スペシャルあったろ?」
その一言で部屋の空気が変わった。
「…ああ、そんなものもあったかな。す っ か り 忘れていたよ」
新田の表情が歯軋りしそうなほど険しくなったのを見て不二と錦が息を飲む。
「で、その不愉快新聞がなんだって?」
忌々しげに続ける新田の声から溢れ出す憎悪が半端ない。錦は気を取り直すためにひとつ咳払いして、ふたりを視界に納めながら口にする。
「お、おう。事実はともあれ、生徒の間でカップルと思われてるような男女が誰の目にもつかない実習棟端の部室でふたりきりっていうのはあんまりよろしくないんじゃないか!って言いだした先生がいるらしくてなー」
新田が笑っていた。
不敵に。
冷笑的に。
そして、あからさまな怒りを滾らせて。
「ほう。誰だい?」
錦が新田とドアの間を塞ぐように立ち位置を変えて両手を広げながら首を横に振る。
「いやいや言えるわけないだろ。お前に教えたらなにやらかすかわかったもんじゃねえ」
文芸部室へ様子見に行く話が出たとき、新田の気性を知っている錦は最悪物理的な制止もありえると思った。だから手を出せない教師でも女子生徒の生徒会長でもなく、わざわざ彼が来たのだ。
「…なるほどね。私の反応は折り込み済みってわけだ」
新田は大きく息を吐いて気分を落ち着けると、足を組み直して上目遣いに錦を睨む。
「で、キミたち生徒会の見解は?まさか教師のことをわざわざ私に告げ口しに来たわけじゃないんだろう?」
「今日はお前らに聞き取りしに来ただけさ。生徒会の見解は『学校から認められた部室で公式な部活動を行う生徒が批判を受ける謂れはない』で纏まってる」
「もし仮に私たちが付き合ってると言ってもかい?」
「そりゃあ…」
錦が先ほどから不安そうに黙っている不二をちらりと見てから肩を竦める。
「だとしたら俺は頭抱えて生徒会室に戻ることになるなー。まあ、もし事実だとしても悪いようにはしねえよ。そうならないように、とにかく努力だけはする。ってこれは生徒会長からの伝言な」
「だいたいのところは理解したよ」
新田は椅子を蹴るように立ち上がり錦を
「私と不二くんは付き合っていないし金輪際そんなつもりもない。ひと握りの生徒が面白可笑しく書き立ててる下劣なゴシップなんか真に受けて部活動への介入を考えた低能教師にもそのように伝えておきたまえ」
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