16.文化祭レビュアーズ:後編 10
「はーい毎度あり!それじゃどうぞー」
不二は売り子からダーツを五本受け取って
円形の的は五重の円になっていて、外から一点二点と上がっていき中心にある直径二センチ程度の円の内側は五点となるのだそうだ。それぞれの円の境目は金属のフレームが入っていて紛れは無い。
現在の最高得点は二十三点。実質全部ど真ん中に当てたようなものだろう。生徒なのかゲストなのか、知らない名前だったが相当な腕前だ。
「ちなみに本当のところ、自信のほどは?」
新田の言葉に不二はダーツを手の中でくるくる回しながら答える。
「うーん、まあまあですかね。こういうゲームは兄さんもできるので結構やり込んでるんですよ。ボードの真ん中より上はいけると思いますよ」
「つまり上位五人に入ると」
大きく出たなと新田が言うより早く、不二が一投目を放った。それは吸い込まれるように直径二センチの円のほぼ中央に突き刺さる。
「このイベント用にわざわざ買ったのかな。バレルとシャフトに歪みもないしフライトも綺麗、結構良いやつですね」
新田の顔がびっくりした猫みたいになっていた。
しかしそんな彼女に構わず売り子が一本目を抜いた的に二本目を投擲する。これもまたストンと中心に刺さった。三本目もど真ん中。
ホワイトボードの点数は上から二十三、二十二、二十一、そこから二十が三人続く。
つまりあと二本で六点出せば一気に四位だ。
「なんかもうふわっと適当に投げてたように見えたけど」
「まあ二本目と三本目は割と。クセがなさそうだったので」
「キミってやつは…その腕前でよく素人の私と勝負しようなんて口にできたね」
「勝負とは始めたときには既に勝敗が決しているものなんですよ」
新田はその聞き覚えの、むしろ言い覚えのある言葉に目をぱちくりと瞬かせてから、呆れたように半眼で笑った。
「なるほど。いつぞやの意趣返しというわけかい」
「まあ残念ながら勝負には乗って貰えませんでしたけれどね」
不二が肩を竦めて笑う。
「あーあ、また勝てなかった」
「心配しなくともキミとはもう二度と勝負事はしないよ。とはいえなんにも参加しないのも面白みがないね」
「と言いますと?」
「まったく関与しないのも興ざめだ。もし満点取ったらなにかご褒美をあげようじゃないか」
まだなにをあげるかは考えてないけれど、と言いかけた新田のほうを見ることなく不二が四投目を中央に当てる。これで二十点。
「あ、じゃあ満点取ったら勝利のキスでお願いします」
そういって彼はにこーっと笑った。
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