16.文化祭レビュアーズ:後編 9

「図書室のクラシックメイドカフェ、コーヒーは美味しいしケーキも美味しい。部屋が広いので時間を急かされることもなくゆっくり寛げる快適空間だったね。奥には読書スペースもあったらしい。総じてクオリティが高い」


「フードがことごとくプロの味なのは文化祭の本分を逸脱してませんかね?まあ提供される側としては変なもの食べさせられるより全然いいですけど。あと正直メイド要素は息してなかったと思います」


 メイドカフェを出たふたりは最後の出し物レビューを何にするか決めかねたまま校内を徘徊していた。


「軽音部の演奏はじめ時間指定型の出し物はだいたい終わりか。かといって定番のお化け屋敷とかに入るのもなあ」


「飲食系もちょっともうツラいですね。今から追加では入りそうにありません…」


「まあキミは私の焼きそばパンも三割くらい食べてるしケーキも食べてしまったからねえ」


 ああでもないこうでもないと徘徊していると、ふと屋外の屋台のひとつで不二の足が止まった。


「どうかしたかい?」


「あー、これとかどうです?」


 彼が指差した出し物はダーツだった。一定の点数以上を出せば記念品として生徒の手作りストラップが貰えるほか、得点上位十名はホワイトボードに名前が記載される。


「勝負しましょうよ」


 不二がにこやかに提案する。


「絶対に嫌だ」


 新田がにこやかに却下する。


「ええ、なんでですか。つれないなあ」


「キミもしかして自信があるだろう」


 彼女の指摘に彼の笑顔がぴたりと止まった。


「ど、どうして?」


「なんとなくだよ。でも図星だったようだね」


 そう言った彼女は半眼で彼を睨むように見詰めたあと、にやぁと珍しい笑みを浮かべた。


「まあ見学だけでもレビューはできる。勝負は受けないが、せっかくだしキミのちょっといいとこ見せて貰おうかな?そうだな、参加費は私が奢ろうじゃないか」

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