16.文化祭レビュアーズ:後編 4
『道なき道をも行かねばならぬロミオたち。その先に現れたのはなんたる無慈悲、幅15cmにも満たない橋であった!落ちれば千尋の崖下、その命はありません!』
「どういうことなんでしょう先輩」
「実際には高さ1mも無いし下には安全に配慮してマットも敷かれている。つまり落ちたロミオはここでリタイアというルールなのだろうね。そして」
「そして?」
「今から安全への配慮が必要なイベントが起きる、ということでもある」
「ああ…」
顔を見合わせたロミオたちだったが、ひとり、またひとりとわずかな幅の橋を渡り始める。
転落したところで危険はなにもない。しかし落ちればリタイアという烙印を押され観客の笑い者になるだろう。それは避けたいという気持ちが彼らの背に重く圧し掛かった。
それだけでもプレッシャーに負けて脱落者が出そうなものだが、当然それだけでは終わらない。
全員がどうにか平均台の上に踏み出しそろりそろりと先頭が半ば過ぎまで進んだところで、突然それは現れた。
身長140cm程度のややふっくらした小柄ながら凹凸のくっきりしたスタイルで銀縁丸眼鏡のメイド姿。
ホワイトプリムでぴっちり前髪を上げた整った黒髪と手入れの行き届いた細い吊り眉から絶え間なく神経質な気配が立ち込めている。二年生の生徒会書記だった。
『ロミオによって甥である、つまりジュリエットの従弟でもあるティボルトを失ったキャピュレット夫人がふたりの結婚を黙って見過ごすはずがありません。彼女は信頼できるキャピュレット家のメイド長を刺客として送り込んでロミオの殲滅を目論んでいたのです!!』
「ティボルトがナレ死してしまったうえに原因になった親友のマキューシオは触れられもしなかったね」
「ロミオの殲滅ってワードがだいぶ理解不能です」
演劇部の小道具メンバーが最前列の観客に玉入れ用のお手玉を配っているのが見えた。
配布が終わるのを見計らってメイド長が口を開く。
「
彼女はやる気が顕著に垣間見える棒読みと共に手元にどっさりと用意されたお手玉をロミオたちの顔に目掛けて無造作に投げつけ始めた。それを見て最前列の観客たちもこぞってロミオへお手玉を投げ始める。
舞台上は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と化した。
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