16.文化祭レビュアーズ:後編

16.文化祭レビュアーズ:後編 1

 突発イベント【プロレス同好会とその観客vs風紀委員会と生徒指導部】に巻き込まれてはたまらないとその場を抜け出した新田と不二。


「きちんと許可を取って試合ができれば見応えのある出し物になったかもしれないけど…いや、あの選手ふたりなら絶対どっちか、もしくは両方とも洒落では済まない怪我をしそうだし許可を出さなかった生徒会は英断だったと言わざるを得ないかな」


「本当に、凄く見応えのあるおっ…試合になりそうでしたけど本当に残念でした」


「…」


 つい零れかけた本音を慌てて取り繕ったものの、新田が無表情だった。

 不二の背中を冷たいものが流れる。


「え、えっと…ちょっと早いですけど体育館行きましょうか…」


「ソウダネー」


「演劇部の出し物はロミオとジュリエットらしいですよ」


「フーン、ソッカー」


 会話が続かない。


「そ、それにしても演目が鉄板っていうかあれですね!ええと、その」


 なんとか話題を繋ごうと喘ぐ不二をみてさすがに可哀想だと思ったのか、新田が仕方ないな、と肩を竦め機嫌を直して微笑む。


「まあ普通の筋書きにはならないと思うよ」


「え、どうしてです?」


「うちの演劇部には脚本に余計な茶々を入れて台無しにするのが大好きなやつがいるのさ。いや正確にはいた、のだけれども」


 言いながらパンフレットのクレジットに目を通す。


「文化祭だけの限定復帰なのかな。なんにせよ早めに席を取るのには賛成だね。真ん中くらいがいいかな。あんまり前には行かないほうが良い」


「あっはい。えっと、理由を伺っても?」


 新田が小さく溜息を吐いた。


「巻き込まれるのはごめんだからね」

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