15.文化祭レビュアーズ:前編 11
クリスが勝ち、アオイが負けた。
ピコピコハンマーを手にするとフルスイングの横薙ぎでアオイの頭部を狙うクリス。
しかし空振り!アオイの前蹴りがクリスの出足を押さえて踏み込みを殺している。
がら空きになったクリスの顔面を狙ってヘルメットが叩き付けられようとするがそれを素手で打ち払い返す手で机の脚を掴み振り上げる。
アオイは己の頭めがけて容赦なく振り下ろされる机を掴んだその腕を超低姿勢からのハイキックで横薙ぎに打ち据える。
すっぽ抜けた机が紙屑のように宙を舞ってリングロープに当たって転がった。
双方手にしていた得物を投げ捨ててリング中央で再び睨み合った。
「ぶっころす!」
「ぐっちゃぐちゃにしちゃうゾー!」
カァンッ!!
実況ブースがなんのつもりかゴングを鳴らした。観客が一斉に湧き上がる!
『ゴングと同時にクリス選手の前蹴り、それを宙空で取ったアオイ選手が浮きながらぁ!これは、ドラゴンスクリューかぁ!?しかし回転に合わせてクリス選手軸足を浮かせたぁ!アオイ選手の頭めがけて膝蹴り!いや、決まらない!決まっていない!アオイ選手足を放して回避!両者リングマットへ転がり再び中央!間髪入れずアオイ選手ロープへ飛んだぁ!クリス選手前傾に踏み込んで迎撃の体勢!おっと両者肉弾で激突!!弾け飛びましたぁっ!!』
威力は互角。両者とも一度はリングへ伏したものの、幽鬼の如く立ち上がる。
「止めなくていいのかこれ…」
「普通に実況してますね。こうなるって思ってたんだろうなあきっと…」
選手同士は既に収まりがつきそうにないし実況も止める気配がない。観客はもともと期待していたものが始まったので当然止めるわけがない。
今や会場全体が熱狂している。
雰囲気に乗り損ねたふたりが困惑していると、突然大きなホイッスルが鳴った。
「観察対象の非認可行為を確認しました。まあやると思っていましたが。はい!こちら風紀委員会です!プロレス同好会は即刻出し物を中止、解散してください!!」
ホイッスルを聞きつけて風紀の腕章を付けた生徒がプロレス同好会のスペースへ集まってくる。五人や十人どころではない人数だ。
「ざっけんな引っ込んでろ!」
「力づくでやってみたらいいヨー!」
「そうだそうだ!風紀委員は帰れ!!」
選手と観客が一体となってブーイングするが当然引き下がる風紀委員会ではない。選手を取り押さえるべく風紀委員たちがリングにあがり、観客からもどさくさに紛れてリングにあがろうとする者が出はじめ、会場は一気に騒然となった。
「先輩これは」
「あー…巻き込まれる前に次に行こうか」
「…そうですね」
ふたりは蜂の巣をつついたような騒ぎになっているその場をそっと離れるのだった。
後日聞いたところによると、選手と実況の計四名が謹慎処分。
同好会長と当日応援に来ていたOBが学校側からこっぴどくお叱りを受けたらしい。
然もありなん。
~こうへんへつづく~
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