15.文化祭レビュアーズ:前編

15.文化祭レビュアーズ:前編 1

 季節は夏が過ぎて本格的に秋へと移り変わる頃になって、文芸部部長の新田と後輩の不二は新聞部室を訪れることになる。

 要件は来月の文化祭について。

 新聞部員でありその次期部長と噂されている多聞たもんから少し相談がしたいとの打診だった。


「どうも御足労ありがとうございます新田部長。それから取り次いでくれてありがとう不二君」


 肩より少し下で切り揃えたセミロングにフォックス型のアンダーリム眼鏡の彼女は生真面目な雰囲気の事務的な、場合によっては不遜さすら感じるほどのツンとした無表情、無感動な顔で口を開いた。


「いやいやこちらこそ。わざわざ不二くんを通してまで私に要件とはいったいどんな了見なのか興味があってね」


 ひとつ結びの三つ編みに規定通りの制服と靴下、紺のフルリムセルフレーム眼鏡の、文学少女という型から直接取り出したような姿の新田は負けず劣らずの無表情、いやこちらはむしろ完全に仏頂面といっていい顔で返す。


 そして席としては新田の隣に座っているものの、立場的にはふたりの間に挟まれている不二が引きつった半笑いで無言。


 なにせ多聞から写真撮影の依頼があったものをまるっと新田に押し付けたのが不二なら、その写真が原因で新田のご機嫌がなかなか良くならないのをなんとかしようと多聞に相談して今回の呼び出しに繋げたのも不二である。


 そして多聞から見ればなにもかも文芸部内の問題であり、新田にとっては不二にハメられた穴埋めを不二本人がしようとしているに過ぎず、両者自分には非がない。


 雰囲気が良くなるはずがなく、また不二がうかつに口を開けるはずもなかった。

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