14.逢瀬は成れど穏やかならざり 10

 緊張感で張り詰めたまま状況を見守るふたり。しかし取り押さえられた男たちのこともだが、新田には自ら体を張って守ってくれた不二の調子も気掛かりだった。


「怪我はなさそうだけど…大丈夫かい」


「あ、大丈夫です。当たりどころが良かったんで…それより足元に瓶の破片が散らばってますから気をつけてくださいね」


 既にけっこうな量の破片を踏んでしまったらしく、不二のビーチサンダルがガラスの擦れる不愉快な音を立てている。


「あ、ああ…わかった、ありがとう。それから、その…すまない」


 神妙な顔で謝る新田を見て、不二がへらっと笑った。


「あはは、先輩のことなのでやらかしてるだろうなと思ってましたし」


「なにをっ…いや、その通りだったね。やらかしてしまった」


 言いかけて、結局項垂うなだれる。

 こんなにしょぼくれている新田は今まで見たことがない。それがなんだか微笑ましいというか、妙に嬉しくて自然と不二の顔に笑みが浮かぶ。


「まあこれに懲りたら、あんまり危ないことはしないでくださいね」


「善処しよう…」


 これだけ反省というか後悔したような顔をしてても素直にわかったとは言わない辺りが先輩なんだよなあ。ガラス片をじゃりじゃりと踏みつけながら感慨深く想う。彼女のそういうところが、不二は気になって仕方がないのだ。


 その後、男たちは引きずられるように警備員の詰め所へ連行された。

 それから当事者の新田と不二、さらには新田が注目を集めて作った目撃者数名が事情聴取を要請されて各々詰め所へと呼び出され、夕方にかけて残った時間はそれに費やされることになったのだった。

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