8.勝負にならない負け上手.R 3



 その言葉を聞いた不二は驚きも焦りも無く、ただきょとんとした顔をしてみせた。


「別に好きにして貰っていいですけど変な質問には答えませんよ。今回【どんな質問にも答える】なんて言ってませんし」


 新田の顔が虚無だった。


「えーと」


「そりゃ普通に考えて関係ない質問には答えませんよ。当たり前じゃないですか。まあそもそもゲームの最中に関係ない質問するようなひとどこにも居ないと思いますけどねー」


「お、おお…どの口で言うかな…」


「だいたいYes,Noで答えられる内容しか聞けないんですけど何を聞くつもりなんです?意趣返しにブリーフ派ですかとか聞いて返事貰ったって正直嬉しくないでしょ」


「うんまあそう言われると確かにそうなんだけれど…なんか悔しい」


「トランクス派ですけどね」


「聞いてないからね!?」


「てっきり男子生徒のパンツ事情に関心があるのかとばかり」


「ないないいやいやないからないよないない」


 不二はぶんぶん首を振って力強く否定する新田を見て、仕方ないなーと肩を竦めてため息を吐く。


「仕方ないなあ。じゃあ禍根を残さないためにも、今回もどんな質問にも答えるってルールでいいですよ。ただ残りは1分半ですから聞きたいことがあるならお早くお願いしますね」


「あ、ああ、えっと…ありがとう」


「いえいえ。それよりほら、時間押してますよ」


 しかし意表を突いたわけでもなく妥協されてなんでも答えると言われると、逆になにを聞いたらいいのか悩んでしまう。主な動機はあくまで報復であって、特に聞きたいことがあったわけでもない。


 それでもこの際だ、なにかひとつくらいないだろうか。なにか、ひとつくらい。


 ふっと前回のことが脳裏をよぎった。最後の質問、彼はなにを言おうとしていた?確か…。

 思い出して動悸が激しくなり頭に血が上っていくのを感じた。

 意趣返しとしては妥当な内容だろう。けれども本当にこれを聞くのか?そもそも答えを聞きたいのか?強い葛藤に苛まれる。


「残り1分ですけどー」


 気軽な言い草にイラっと来たのが決定的だった。


「キ、キミは…」


「はい、なんでしょう」


「キミはもしかして、私のことが…す…」


 言いかけた新田を制するように不二が手を上げて割り込んだ。


「あーでも勝ち目無さそうだし降参しますね」

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