10.SNS、はじめました 3

「なんで」


 何を言ってるんだお前は、そう言いたかった。けれども声が震えていた。


「顔にでっかく書いてあるよ」


「マジで」


 兄さんはにっこにこだった。


「しかも夏休みに入ってからロクに連絡入れてない」


「本当に気持ち悪いんだけど」


 ドン引きする僕に、兄は笑顔を崩さない。


「親切で言うけどその気持ち悪さ全部顔に出てるからね」


 僕の心が折れるには十分な一言だった。兄より優秀な弟などいないは至言だと思う。


「遺言を、お願いしてもいいかな」


「それ鈴蘭ちゃんにガチ怒られるから出来たらやめて欲しいな」


 出来なければいいのだろうか。たぶんいいのだろう。まあ僕もここで短い生涯を終えないわけじゃないので、そこは妥協することにした。


「じゃあ貸し1で」


「解せないんだけど」


「ここで消化していきなよ」


「あったまいー」


 僕が転がっていたソファの空きスペースに兄さんが腰を下ろした。


「さあさあお兄ちゃんになんでも相談してごらん」


「凄い軽くない?」


「ていうか完全にタカリだったじゃん」


「そうだけど」


「ボクが自主的にタカられる気になってるウチが花だよ」


 ぐへっと息を吐く。まあそれもそうだ。


「実は夏休み前に部活の先輩と連絡先を交換したんだけどさ」


「夏休みってなんだっけ」


「普通科高校とか中学とか小学校とかでは夏に40日くらいあるヤツだよ。この解説要る?」


「ごめんごめん。で、交換したんだけど?」


「向こうからはなんにも連絡ないんだけど、相手は先輩だからこっちから連絡入れるのもどうかなと思ってさ」


「なるほど、双方ビビって睨み合いが続いていると」


「もうちょっと言い方」


「スナくんビビって先輩とはいえ女の子に任せっきりと」


「悪くなったんだけどぉ!?」

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