10.SNS、はじめました
10.SNS、はじめました 1
文芸部のふたりを見かけることは、普段ならそんなに珍しいものでもない。
制服を校則通りに着こなして、ひとつ結びの三つ編みに紺色でフルリムのセルフレーム眼鏡という組み合わせは絵に描いたような文学少女である部長の
その彼女が主の如く居座る文芸部室に唯一出入りしている後輩の
まあ彼は一見して地味とはとうてい言い難いが、生徒会役員にも真っ赤な髪の生徒がいるくらいの自由な校風なのでそう悪目立ちはしているわけでもない。
さておき、歳を考慮に入れてもまだ幼さの残る垂れ目気味の童顔に柔和な表情の彼は、髪色はさておき新田と並んでいると如何にも文化系でございといった風情になる。
そんなふたりが連れ立って歩いているところは、繰り返しになるが平日であればそこかしこで見かけることが出来る。
たとえば部活動の最中であれば校舎内で、ときには図書室で。あるいはその延長線上にある帰宅中の寄り道延長であれば、カフェや本屋に連れ立って入る姿を目撃される程度には仲の良いふたりではあったけれども、長期の休みともなるとその限りではない。
そう、夏休みだ。残念ながら文芸部は夏休み中一切の活動が無い。
まあ長期休暇に限らず、休日にプライベートで顔を合わせたり出かけたりすること自体が今まで皆無だった。SNS全盛のこのご時世に連絡先の交換すらしていなかったありさまだ。
しかし夏休みに入る終業式の数日前、ちょっとしたやり取りがきっかけで連絡先の交換をしたふたりは長期休暇の間にぐっと距離を縮めて。
は、今のところ、まだなかった。
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