3.春暁ペナルティ
3.春暁ペナルティ 1
実習棟の三階の一番端の教室、文芸部室を訪れるひとは少ない。ぶっちゃけ教師も滅多に来ない。ひとりの部長とごくわずかな生徒、そして無数の幽霊部員で構成されている。それが我が校の文芸部だ。
文芸部でも数少ない活動している部員である不二が部室の扉を開くと、そこにはいつも通り部長である新田が先に来ていた。それだけならまさにいつも通り、特筆することなどなにもない。
むしろ彼女が不二より遅くきたことなど一度もないし、不二が部室を訪れたときに居なかったことだって一度もない。
確かに三年生の教室は二年生の教室よりも文芸部室に近いのだが、それにしたところでこの一年以上ただの一度も例外はないのだから、これは特筆に値するのではないだろうか。
閑話休題。
「こんにちわー」
いつも通りの挨拶をしながら部室に入った不二に対して、新田の返事はない。普段なら挨拶を欠かすひとではないのだけれど、と不思議に思いつつ扉を閉める。
窓際一番後ろの席に横座りした彼女は半開きにした窓枠にもたれかかって脱力していた。どうやら読書しながらうたた寝してしまったようで、読みかけの本は開かれたまま机の上に置かれ無意識にか左手で抑えたままになっている。
「いい陽気だから眠くなるのもわかりますけどねえ。先輩、せーんーぱーいー」
不二は手近な机にかばんを置くと正面に立って声をかけてみた。しかし返事はもちろん、起きる気配もない。聞こえるのは小さな寝息ばかりだ。
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