(三)-6

 ユーリは胸を押さえてその場で崩れ落ちそうになりつつもゲゲチコリに拳銃の銃口を向けた。しかしすぐに別の兵士により側頭部を撃ち抜かれて横に倒れた。倒れたユーリの頭から流れ出た血できた赤色の池が床で少しずつ広がっていった。

 僕はゲゲチコリの方を見た。すると、「情報屋」はゲゲチコリに向かって背筋を伸ばして敬礼をしていた。

 なるほど……。その姿を見て、察しがついた。あいつはスパイだったのだ。あいつがもたらした情報は、反政府運動のためではなく、独裁政権のためだったのだ。だからロイの居場所もすぐに見つかったし、監禁場所も知っていたのだ。僕たちはヤツにハメられたのだ。

 「大統領」が「残りの賊も探し出せ」と言うと、僕たちが「情報屋」と呼んでいたヤコブ・ナボコフは敬礼をして部屋から出て行った。


(続く)

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