(二)-10

 「新聞屋」はゲゲチコリがクーデターを起こしたのは、ロシア系の企業から多額の賄賂を受け取りそそのかされたからとみていた。事実、当時の軍の庁舎にロシアの「民間人」が幾度となく出入りしていたという目撃情報や庁舎への入館記録があったことを突き止めている。彼や彼の仲間の幾人かは、今後も引き続きこの件を追っていくつもりであった。

 とはいえ、独裁体制の「大統領」の過去を暴くとなると、命の危険があった。そのため身を守る意味と、反政府活動という形で援護を受ける意味で、フィリップは反政府運動に身を投じた。反政府運動側からしても「新聞屋」は独裁政府の動向など、タイムリーな情報を幾度となく組織に知らせてくれるため、活動をする上で非常にありがたい存在だった。

 ともかく、その消息がわかったのは良かった。しかし、リーダーのロイがまだ見つかっていなかった。チェン氏が持ってきてくれたこの日の新聞には昨日の事件での死者名簿一覧が掲載されていたが、ロイの名前はなかった。なんとか無事に生き延びていれば良いのだが……。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る