第157話 核攻撃 その2


「ターゲットに接近中」

 

 前方を飛んでいるドローンの画像が200メートル下にある山裾の工場の入り口を映し出しててきた。少し間隔を空けて大型ドローンとその背後に小型のドローンがホバリングする。


「いよいよだ。各自防護マスクをかぶれ」


 ドローンのコントローラーにはロックボタンがありそれを押すと今のドローンの状態をキープすることができる。ドローンを操作している隊員はコントローラーをロックすると防護マスクをかぶりそして再びコントリーラーを手に取った。


 都市国家の本部でもリアルタイムでドローンが撮影する画像が届いている。


「いよいよだ」


「頼むぞ」


 政府関係者、都市国家防衛本部、ハンター本部そして情報分析本部の連中がモニターを見ている中、


『攻撃開始!』


 という隊長の言葉がモニターを通じて聞こえてきた。ハンター本部はこの作戦に関与していないが本部長のピートだけは本部にある自室のPCのモニターで一連の作戦を見ていた。


 隊長の命令が出て3機のドローンは200メートルの高さをキープしたまま工場のある入り口に近づいていき、50メートルほどの距離まで近づくとそこで2機が降下を始めた。1機は逆に上空200メートルから500メートルまで上昇すると工場の門を斜め下に見る位置に止まってそこで撮影を続けている。


「いいぞ、その調子だ。ゆっくりと慎重にやるんだ」


 モニターを見ながら隊長が声を掛ける。そうして地上5メートルまで降下すると真正面に入り口が見えてくる。


「いけるか?」


「いけます。このまま突っ込んだら門を通り抜けられます」


「では行け!」


 小型のドローンが背後から映像を送ってくる中、大型ドローンがその場で最大限のスピードを出すと工場の中に突っ込んでいった。



 そして数秒後大地を揺るがす音と振動が離れた場所にいる装甲車にまで伝わってきた。工場の奥で核爆弾が大爆発を起こす。ドローンが入っていった穴からものすごい勢いで爆風が飛び出てきた。


 その爆風の影響で上空で待機していたドローンも大きく飛ばされるがなんとか持ち堪えるとすぐに戻って工場の場所を撮影していく。


 そこには爆風と振動で破壊された大量の機械獣の残骸が多数横たわっている。見た限りではほぼ全ての機械獣がこの爆発の影響でやられている様だ。


 そして工場の入り口の門のあった場所は爆発で山から崩れ落ちた土砂で完全に塞がれているのが見えた。


「よし、退却だ」


 30Km近く離れていても大きな揺れを感じるほどだ。装甲車の中から見ていると工場があると思われる山全体が大きく揺れるのが見えた。


 撮影していたドローンを回収すると装甲車は全速力で現場を離脱していった。



「完全に塞がっていましたね」


「あの爆発ならドローンが入った1階部分どころか地下部分までダメージを与えたんじゃないか?」


 都市国家内でモニターを見ていた関係者がそんな言葉を交わしている中じっと黙ってモニターを見ていたハンター本部の本部長のピートは


「これで少しの間は安心できるだろう」


 そう呟くとモニターの画面を切り替える。



 3週間と少しが経った頃攻撃隊が前線基地まで戻ってきた。彼らは都市国家防衛隊の医療部の連中から防護服の上から処理を受け、そのままトレーラーの中に連れ込まれて放射能の測定を受ける。


 そうして全員が大量の放射能を浴びていない事を確認してから個別に都市国家に戻っていった。



 この核爆弾による北地区の山の中にある工場破壊ミッションは最大級の機密事項となりその計画ファイルは政府機関の最重要ファイルに入れられることになる。

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