第155話 日常
「しばらくあのお店にも行ってらっしゃらなかったのね」
ブラウスのボタンを上から外しながらリンドウの部屋でキャサリンが言う。彼女はいつも通りというか清楚な格好だ。ブラウスにスカートという出立ち。ジャケットは脱いでソファの背にかかっている。
「長期のミッションだったんでな。そっちは店には顔を出してるのかい?」
目の前でキャサリンが脱いでいく仕草を見ながら声をかける。
「ええ。あのお店の雰囲気も素敵だし。なにより4層だと私を見ても声を掛けてくる人がほとんどいないの。なので最近はプライベートの食事も4層で取ることが多くなったの」
ブラウスを脱いでスカートに手を掛けるキャサリン。上品なブラがリンドウの目の前に現れる。キャサリン曰く3層だといろんな人が声を掛けてきたりサインを求められたりとプライベートでもゆっくりとはできないらしい。4層は見てくる人はいるが声を掛けられることは滅多にいないらしい。お互いのプライベートに干渉しないというハンターの不文律はキャサリンにとっても居心地がよい様だ。
「なるほど。4層はもともとそういう不文律が徹底している。そしてシモンズとローズの酒場は客がほとんどハンターだ。そういう点は居心地はいいかもしれないな」
そう言うリンドウは既に全裸になっている。ゆっくりとブラとショーツを脱いだキャサリンがリンドウに近づいてきてリンドウの言葉に頷くと、
「それに4層なら貴方がいるでしょ?私にとってはそれも大きな理由なの」
そうして全裸で抱きついてきたキャサリンを受け止めるとリンドウそのまま寝室に連れ込んでいった。
ウエーブのかかった茶色の髪が背後から男に突かれる度に大きく揺れている。顔をのけぞり大きな声を上げてよがり、悶え狂っている人気TVキャスター。
「もう許して!あああっ、また逝っちゃううぅ!」
リンドウの最後の突きで大きく身体を反らせそのまま硬直する身体。そうしてそのままドスンとベッドに落ちて失神してしまう。
「この前よりもずっと凄いの。もうダメ、他の男の人とできなくなっちゃう」
失神から戻ったキャサリンがベッドの隣で仰向けに寝ているリンドウにしがみついてきた。
「抱き甲斐がある身体じゃないか。感度もいい」
リンドウが言うとリンドウの顔を見て嬉しいわと言い、
「TV局に入る前に付き合っていた男に開発されたの」
「キャスターになってからは男はいないのか」
しがみついてきたキャサリンは指先でリンドウの乳首を弄りながら頷き、
「そうなの。TV局の男って皆軽いのよ。見てくれだけはいいけど中身は空っぽで何もない男ばっかり。ファッションと女を口説いてやることしか頭の中に無いのよ。そんな男とはする気は全くないの。私はリンドウみたいな男らしい男じゃないのだめなの。獣みたいなセックス、私の身体を性処理の道具みたいに扱われるとすごく興奮しちゃうの」
普段周りからちやほやされているからだろうとキャサリンの言葉を聞いていたリンドウだが彼にとっては相手が有名だとかは全く関係ない。女が寄ってくれば拒まないのが信条だ。
そうしてしばらく休んでからもっと感じさせてと再びリンドウを求めてくるキャサリン。結局夕方の帰る時間ギリギリまでリンドウに抱かれて最後はフラフラになってリンドウの自宅を出ていった。
キャサリンが帰った翌日は完全休養日にしたリンドウはその次の日の朝から1人で四輪駆動車で荒野に出ていく。
前線基地を起点として少しずつ防御壁が伸びてきているのを横目に見てそのままD6地区まで行くと廃墟に車を止めて廃墟の2階に上がりそこで野営をする。そして翌朝からその廃墟をベースに近づいてくる機械獣をロングレンジライフルと狙撃銃で倒して実戦訓練を続けた。そして夕刻になるとD3地区まで戻って野営する。翌日は再びD6地区に向かう。
廃墟で2泊したリンドウはその日の夕刻に都市国家に戻ってきた。車を支部に返すと部屋でシャワーを浴びそうしてシモンズの店に顔を出す。そうしてシモンズが作ってくれた夕食を食べながら雑談をしていると、店の扉が開いてヤナギが店に入ってきた。
「よう、久しぶりだな」
リンドウを見つけるとそう言ってカウンターの隣の椅子に座るヤナギ。シモンズに酒を注文すると隣のリンドウに顔を向けて
「荒野には出てるのか?」
「ミッションで2週間に1度出てるだろう。それ以外に昨日、一昨日と野営してD6地区で機械獣相手に鍛錬してさっき帰ってきたところだ」
「なるほど。どうだった?」
「以前と変わらんな。マシンガン獣も進化はしてない様だ」
リンドウはそう答えて今の所はなと付け加える。そしてそっちはどうなんだよとヤナギに聞くと、
「今週はまだ荒野に出てないんだよ。明日か明後日には行こうかと思ってる。俺もミッションでの探索だけじゃ足りない気がしてたんだよ」
そう言ってから目の前にある酒の入っているグラスを口に運び、
「北の機械獣の群れの動きも気になるしな」
「その通り。あそこからここまではかなりの距離はあるがいつまでもあのままあの場所でじっとしてるとは思えないからな。なのでミッションとは別にD6地区に行く頻度をあげようと思ってる」
食事を終えたリンドウがミネラルウォーターを一口飲んで言うと俺もそうするかと頷くヤナギ。
「ところで最近守備隊が変な動きをしているのは知ってるか?」
と情報通のヤナギ聞いてきた。
「変な動き?」
「ああ。前線基地が賑やかになってきてるらしい。特に東側の前線基地がな」
そう聞いてピンときたリンドウ。
「本腰入れて攻撃する気なのか?」
「いやそれならもっと大規模部隊になるだろう。それほど大きな部隊の動きじゃないみたいなんだよ」
そう言ってから
「今の前線基地を繋ぐ工事、それ絡みだとは思うんだけどな」
「ヤナギが言うならそうなんだろう。あの山の基地を攻略するならかなりの大部隊じゃないと無理だぜ?」
リンドウの言葉に確かにな。ちょっとやそっとの戦力だと返り討ちにあうのが関の山だろうとヤナギもリンドウの言葉に同意する。
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