第153話 ヘスコ防壁 その1

「北の探索から戻ってきてから外には出てるの?」


「いや、ずっと街の中でジムと射撃場通いだ。そろそろ出ようかなと思ってたところさ」


 ここはツバキの家だ。翌日に休みを取ったツバキの家に来て彼女が作ってくれた夕食を2人で食べている。


 ツバキはリンドウが来る前に着替えており今はひらひらとした迷彩服だけだ。歩くたびに黒の小さなショーツが見える。そして迷彩服の前のファスナーも胸の下までおろしているので張りのある巨乳の胸の谷間、いや半分以上乳房が見えている。


 リンドウの視線が胸や尻に注がれるのを見ると興奮してくるらしい。貴女の目で犯されるのも好きなの。そう言っていたツバキ。食事中をしながらも普段は見られない潤んだ目をしている。


「最近本部長が政府との会議に出てね、そこであの北の工場については守備隊で対応するってことになったらしいわ」


 本部長のピートは政府関係者らとの打ち合わせが終わった後支部長会議を設定し、その場でハンターが探索した北の工場については今後は守備隊にてその対応を協議、実行することになったのでハンター本部としてはこれ以上関わらないという結論を伝えた。


 もともと守備隊が西地区の工場の攻撃で手が空いてないということとリンドウが提案したこともあり探索まではハンター本部で対応したがこれ以上はハンターの仕事の領域を逸脱することは各支部長も思っていたところだったので本部の決断に異を唱える者は誰もいなかった。


「そうなるだろうなとは思ってた。俺達ハンターの仕事じゃない。あとは守備隊に任せて俺達は日々の仕事に戻るのがいいだろう」


 リンドウの言葉に頷くツバキ。


「そうそう、リンドウが提案していた大型コンクリートの遮蔽壁、工場で生産が始まったらしくて出来上がり次第荒野に設置していくそうよ」


「それはよかった。何が起こるかわからないから備えはしっかりとしておいた方がいい」


 そのコンクリートの遮蔽壁は都市国家内にある工場で生産されていた。台形の形をしたコンクリート塀は高さが5メートルある。


 そしてこれほどの大きなものを膨大な数を作って壁にするには時間がかかるということで政府はこのコンクリートブロックと”ヘスコ防壁”と言われる土嚢とを併用することで時間の短縮を図ることにする。


 ヘスコ防壁とは筒状の金網の内側に対火材質の布を張り複数連結したものでこの筒の中に土や砂を入れて箱状にしたものだ。


 土や砂は荒野にいくらでもあるのでそれを利用して筒の中に入れることができる。高さは3メートルとブロックよりも低いが機械獣の突撃やマシンガン程度なら十分に防ぐことができる。


 政府と都市国家防衛本部はブロックとヘスコ防壁を併用して前線基地を繋ぐ防御ラインを築く方針を打ち出した。


 ツバキと並んでベッドに横になりながらヘスコ防壁の話を聞いたリンドウは


「政府も本腰を入れてるってことだな。逆に言うとそれだけあの北の工場にいる機械獣は脅威だってことだ」


「そうね。北もそうだけど工業団地からの大規模襲撃の可能性もあるでしょう。Aランクには頑張ってもらわないと」


 そう言ってからリンドウの目を見て


「でもそれで死ぬのはダメよ」


 そう言ったツバキにわかってるさと言うとその見事な体の上に覆い被さっていった。




 ツバキの家に泊まった数日後、日が暮れてからリンドウがシモンズの店に顔を出すとエリンとルリが来ていた。リンドウはこの2人とは定期的に逢っているので軽く手を挙げてカウンターに座っている2人の横に腰掛ける。


「ヘスコ防壁見た?」


 椅子に座るなり隣のエリンが話しかけてくる。


「いやまだだ。外に出てないしな」


「まだ設置し始めたばかりだけど思っていたよりもずっと堅牢そうよ」


 なら安心だなと言い、ローズが置いてくれた薄い水割りを飲んで


「設置工事の護衛はどうなってるんだ?」


 と聞くとエリンの向こう側からルリが顔を出して


「Bランクに頼んでるみたい。それなりの数の護衛が出てるって話」


「なるほど。金の出どころは政府だろ?Bランクにとっても良いミッションだな」


「そうみたいよ」


「そろそろリンドウも外に出るの?」


「そうしようかと思ってる。俺とヤナギは巡回ミッションを免除されているがいつまでもって訳にはいかないだろうし」


 ほらよとシモンズがカウンターに置いてくれたリンドウの夕食、それにフォークを伸ばして食べながら答えると、


「私たちは明後日よ。いつもの時間にD門にね」


「わかった」


 シモンズの店は今日は客がハンターばかりだ。テーブルに座っているBランクのハンター達がチラチラとエリンとルリに視線を送っていたがリンドウが来てからはその視線を向けることはない。


 リンドウの背中しか見えないのだがその存在感に圧倒されてしまうのだ。エリンやルリ、そして店のオーナーのシモンズやローズは慣れっこになっているので何とも思わないがリンドウをよく知らない連中にとってはリンドウが醸し出す半端ないオーラに圧倒されてしまう。


 ただそのオーラには威圧感はない。したがってBランクのハンター達も自分たちの会話を楽しみ、食事や酒を楽しんでいる。


 食事を終えて2人と話をしているとカウンターの下でエリンが手を伸ばしてリンドウの迷彩服のズボンの上に手を置くと耳元で


「行ってもいい?」


 と聞いてきた。頷くと暫くしてエリンとルリの目が淫蕩なものになっていく。そうして暫く話をしてから店を出た3人。


「おととい支部でツバキと会ったらすごくスッキリした顔してたのよ。それでルリがツバキによかった?凄かった?って聞いたら相変わらず激しくて最高だったわよって。それ聞いて我慢できなくなっちゃって。今日リンドウがローズの店にこなかったらこっちから押しかけようかって話してたところだったの」


 お前さん達は本当のセックスマシーンだぜと思っても口にせずに通りを歩いているリンドウ。すると歩きながらエリンがリンドウの腕にしがみついてその巨乳を押し付けてくる。ルリももう片方の腕にしがみついて同じ様に迷彩服の上からノーブラの巨乳を押し付けて


「本当にリンドウって女たらしよね」


「そうそう、こんないい女2人が押しかけるって普通はないよ?」


 と2人とも潤んだ目をして抱きついて顔を上げてリンドウを見る。リンドウは黙って夜の4層の通りを歩いている。すれ違うハンター達は男に左右から抱きついているのがエリンとルリで抱きつかれている男がリンドウだとわかるとやっかみどころか諦めた表情で反対方向に歩いていった。


 この2人は発情して周囲が見えてないのか歩きながら


「私の身体で骨抜きにしてあげる」


「何度も好きなだけ出してね」


 などと耳元で囁き続けてくる。リンドウは最後は開き直ったのかわかったと言うと両手で2人の腰を抱くと抱き寄せたまま自分のマンションに入っていった。


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