第150話 工場発見 その2

装甲車を降りたリンドウとタツミは狙撃銃を肩に背負って2人で岩場の多い山を登っていく。ドローンは充電のために一旦装甲車に戻し、充電が終わり次第2号車のドローンを飛ばす様に指示していた。


「ハンターになって山登りするとは思わなかったぜ」


 タツミがリンドウの後ろから声を掛けてくる。


「運動不足にはちょうどいいだろう?」


「お互いにな」


 軽口を叩きながら岩場を登ること2時間弱で2人はV字に抉れている場所に到達する。そしてその抉れている部分を歩くこと30分ちょっとで向こう側が見える場所に着いた。その場で腹這いになる2人。直ぐにタツミが、


「実際に目で見ると言い方は不謹慎だが壮観だな」

 

 2人の目の前には何万という機械獣が荒野を覆い尽くしてるのが見える。彼らのゴーグル経由の画像や音声も装甲車、そして本部に届いている。


「東側の起伏は機械獣なら普通に乗り越えられそうだな」


 リンドウが顔を右に向けて言うと


「あの程度なら問題ないだろう。つまり北回りのルートがあったってことだな」


 とタツミ。


「そうなるな。そしてあそこだ」


 リンドウが身を乗り出して指差す方向から機械獣がはき出されてきている。


「あそこは山裾だ。奥も相当深そうな感じだな」


「ああ、それにアンテナがしっかりと西を向いているな」


『こちらリンドウ。本部見えてるか?』


『ずっと見ている。嬉しくない状況だな』


 本部長のピートの声が答える。


『その通り。ドローン爆撃じゃあ工場破壊は無理だ。中の様子が全くわからない』


 そう言ったリンドウは突き出していた上半身を引っ込めるとインターコムに、


『整理するぞ。まずここから東周りで都市国家にくるルートは存在することが確認できた。北ルートが存在しているということだ。そしてこの山裾の奥に大量の機械獣を生産できる生産工場があることも確認した。そしてこの工場は以前の電波塔の北を向いていたアンテナと繋がっている。俺達は電波塔のアンテナが送信アンテナだと思っていたが実際にはこの洞窟基地から山の上の電波塔に電波を飛ばしていたんだ』


『その通りだな。この山の中の施設については情報分析本部にて資料が残っているか調べてみるとのことだ』


『了解。では最後にドローンを一周飛ばしてから俺達は帰還する』


『気をつけてな』


 2人が山の向こう側を見ている頭の上をアンのドローンが飛んでいき、山裾に沿って画像を撮影し、そして荒野にいる機械獣、最後に東側を飛ぶと山をぐるっと回って装甲車に戻ってきた。


 その頃にはリンドウとタツミもその場から離れて下山し、ドローンが回収されてしばらくしてから装甲車に戻ってきた。


「ここから離れよう。さっき指示した通り一昨日の野営地の廃墟に向かってくれ」


「了解。ヤナギ、ナビするわね」


「頼む」


 2台の装甲車が山裾から離れると他の4台と合流すべく荒野を南東方面に走り出した。



「それにしてもすごい数だったな」


「本当にしつこいというか」


「足の早い四つ足も背中にマシンガンを背負ってたぜ」


 無事に4台と合流すると全員で集まって夕食をとりながら今日の話をする。


「あの山の中の工場。攻略はやっかいだな」


「というか攻撃できるのか?」


ハンター達が思い思いに発言するのを食事をしながら聞いているリンドウ。リンドウもあの工場の攻略は一筋縄ではいかないだろうと思っている。


「リンドウならどうするよ?」


E地区出身で物資輸送車を運転しているロンがリンドウを見て聞いてきた。他のハンターもリンドウに顔を向ける。


「正直わからない」


 そう言ってから、


「まず荒野にいた機械獣の数だ。大規模部隊を送り込んでも相当被害が出るだろう。そして仮になんとか外の機械獣を殲滅できたとしても中の様子がわからない。広さも中にいる機械獣の数も。正面からぶつかると恐らくこちらが負けるだろうな」


「じゃあそれ以外の手ってことか」


 誰かが発言する


「そうなるがそのそれ以外の手というのが今は思い付かないんだよ」


 リンドウは続けて


「だから当面は警戒を続けるしかないだろう。幸いここは都市国家からはかなり離れた場所にある。奇襲は食らわないというのだけが救いかもしれないな」


 リンドウの言葉に皆黙ってしまった。


「とにかく俺達のミッションはこれで完了だ。あとは本部や政府の偉いさんに任そうぜ。俺達は本業のハンター稼業に戻ろう」


「そうだな。リンドウの言う通りだ。俺達が考えても仕方ないしな。帰りも慎重に帰ろうぜ」


 I地区のバーグの言葉で全員が納得して話し合いは終わった。 


 そうして帰りも周囲を警戒しながら移動し、都市国家を出て2ヶ月程経った時に全員無事にA門に帰還してきた。


 A門にはピート本部長始め各地区の支部長が彼らを出迎え、そのままA地区の支部のビルにて最終の打ち合わせを行う。


「みんなご苦労様だった。全員無事に帰還できたことを嬉しく思う。そしてミッションだが完璧だったと言える。送ってくれた情報は既に全て関係者と共有しており、情報分析本部を中心に更なる解析を行うだろう。皆のミッションはここまでだ。長期に渡りご苦労様だった」


 ピートの話が終わると本部職員がミッション参加者全員の端末にミッションの終了通知と報酬が記載されたメッセージを送る。それを見て各自が同意してミッションは終わりとなった。今日はホテルに泊まり明日各支部に戻るということでメンバー全員にホテルの部屋の鍵が渡される。


 リンドウとヤナギのところにツバキが近づいてきた。


「お疲れ様。2人ともよくやってくれたわ。今日はゆっくりと休んで、明日の9時にホテルを出てD地区に戻るから」


 そうしてリンドウはじめミッションメンバーは本部が手配したホテルの部屋に入ると久しぶりに風呂に入って旅の疲れを落とす。


 そうしてすっきりするとホテルのレストランで夕食をとり、その場にいた仲間と雑談をしてから部屋に戻ったリンドウの端末にメッセージが来る。返事をするとしばらくして部屋をノックする音がしてツバキが部屋に入ってきた。


「大丈夫か?」


「リンドウだけ他のハンターとフロアが違うのよ」


 言いながらベッドの脇に立ってリンドウを見ながら服を脱いでいくツバキ。リンドウの表情を見て


「安心して、たまたまよ。それに部屋のサイズは皆同じだから」


「それを聞いて安心したよ」


 ツバキが脱ぐのを見ながらリンドウも迷彩服を脱いでいく。そうして2人全裸になるとツバキがリンドウの胸に飛び込んできてそのままベッドに倒れ込む。


 リンドウの上に覆い被さったツバキが上からリンドウを見ながら、


「2ヶ月間溜まってたのを全部頂戴」


 そう言って唇をリンドウに押し付けてきた。

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