第149話 工場発見
全員が車を止め各車両への給油が終わったところでリンドウが話しだした。
「目の前に見えている山の裏側の調査だが。明日の調査は1号車と2号車の2台で行い、他の4台の車はこの場所で待機してほしい。3号車と4号車は燃料車と物資輸送車を守ってくれ」
「なるほど。山の方面に向かうのなら装甲車2台の方が機動力はあるな」
2号車のタツミが言うと、
「その通り。そして不測の事態の際30Km以上離れていれば待機組は十分に離れているので安全だ。追っ手もこないだろう」
そう言うと続けて、
「万が一俺達が敵に追われて倒せない、逃げきれないと思ったら1号車と2号車はここに戻らない。この山裾を西に向かって走るからその間に都市国家に戻ってくれ」
機械獣に見つかったら自分たちが囮になるから帰れと言う指示だ。聞いているハンター達は黙っている。リンドウの案が現実的だと理解しているからだ。
「リンドウのアイデアは分かった。ただ西に逃げるのは最後の選択肢にしてくれよ。こっちにも2台装甲車があるからそれを考えて倒せると思った時はすぐに声をかけてくれ。すっ飛んでいく」
スコットの言葉に他のハンター達もそうだ、俺たちもいるのを忘れるなよと声をかけてくれる。
「まだ逃げると決めたわけじゃないけどな。もちろんここに2台の装甲車と物資輸送車のマシンガンが待機しているってのは頭に入れておくさ」
それから1号車は3名だったが調査でドローンを2機使うということで4号車のメグミが明日は1号車に移動することにした。
「ドローンは任せといて」
そう言って快諾するメグミ。
やりとりを聞いていたハンター本部や支部、そして関係者達は
「いよいよ明日だな」
「それにしても流石だな。一番きつい仕事を人に投げずに自分がする」
「だからこそのNo,1ハンターでしょう」
そんなやりとりをしていた。
翌朝燃料を満タンにした2台の装甲車が廃墟を出て山の裾を目指して進みだした。山に近づくにつれて起伏が緩やかになりレーダーの感度も上がる。ローラはレーダを睨み続け、2号車のアンが操縦するドローンが前方の警戒をしていた。そうして廃墟を出て1時間ほどで山裾に着くとそれに沿って東に進んでいく2台。
「ドローンには異常なし」
「目視でも今の所360度異常無し」
2号車の屋根の上で警戒しているケインから報告が入る。
そうして山裾を進んで行って1時間ほどした時に
「リンドウ。この前方の左側に山が大きくくびれている場所があるわ。あそこからドローンを飛ばせば向こう側が見えるかもよ」
アンの声と同時にその映像が送られてくる。
「いいじゃないか。あの近くに車を止めてドローンを飛ばすか」
山がV字に抉れている場所に近づくとそこで車を止める。リンドウの指示で2機のドローンがそのV字を通って山の向こう側に飛んでいった。そしてそのドローンが送ってきた映像を見て全員が驚愕する。
「なんて数だ」
「1万、いやそれ以上2万近くはいるぞ」
「違うわ。もっといる。ほらっ」
ドローンが左右に動くとさらに機械獣が映ってきた。山の向こう側は荒野になっているがその荒野に無数の機械獣がぎっしりと並んでいるのがスクリーンに映っている。
「メグミのドローンはその場から東に飛んでくれ、山を回ってこちらにくるルートの確認だ。アンのドローンは上から工場を探してくれ」
リンドウの指示で2機のドローンがそれぞれ別の方向に動きだした。
最初に声を出したのはメグミだった。
「東に行くと大きな起伏がある。でも機械獣なら起伏を超えて山を回ってこちら側に来られる様な気がするけどどうだろう」
その声にメグミのドローンの映像を見るリンドウ。確かにこちら側に来ることができそうだ。ただドローンの上からの画像だと起伏の盛り上がり具合がはっきりと見えない。かと言ってドローンの高度を下げると探知される恐れもある。
リンドウがそう呟いていたのを聞いていたヤナギがどうする?と運転席から顔を後ろに向けてリンドウを見る。
「アン、工場は?」
「それが見つからないのよ。これだけの数だから工場があるはずなんだけど見えないの。荒野のもっと向こう側なのかしら」
焦った口調でアンが答えてくる。
「ドローンのバッテリーは?」
「そっちはまだ大丈夫よ」
「じゃあ荒野じゃなくてこの山側を見てくれ」
「山を見るの?工場よ?」
「そうだ。いいから山側を見てくれ」
2度同じことを言ったのでアンも了解といいドローンのカメラを荒野から山の方に向けると
「あったわ。なにあれ?」
「やっぱりか」
アンのドローンが映している画像は山裾にぽっかりと穴が空いていてそこから機械獣が次々とはき出されてくるところだ」
「山の中に工場があるんだ。メグミのドローンもアンの近くに来て映してくれ」
そうして2機のドローンが荒野の上から山裾に開いている大きな穴を映し出す。次々とはき出される機械獣。その機械獣は背中に2丁のマシンガンを背負っているタイプだ。そして荒野にいる機械獣は四つ足の足の速いタイプの機械獣も皆背中に1丁のマシンガンを背負っている。そしてよく見るとその穴は自然にできた穴じゃなくて人工物の様だ。入り口には門の様なものまで見える。
「四つ足が進化してる?」
「そうだな。ここにいる機械獣は皆攻撃手段を持っている。それよりも山の中の工場だとその規模すら推測できない」
「こんな数の機械獣を作ってどうするのかしら」
「決まってるさ。都市国家を襲うためだ。ただあの東の起伏の状態がドローンだとはっきりと見えないな。西回りか東回りか」
「入り口の穴の横を見て、あれアンテナよ」
リンドウが話している最中にメグミが声を上げる。確かに門の横の岩の出っ張り部分にアンテナがセットされているのが見えた。
「西を向いてる。これで決まりだ」
リンドウはそう言うと、タツミを呼び出して
「2人でこの山を登ってあのV字のところから先に進んで目視で見てみよう」
「了解」
タツミから即答でOKが来た。
「この2台はここで待機してくれ。それとスコット、そちらの4台はすぐに今いる場所から移動してくれ。一昨日キャンプした廃墟まで戻ってくれるか?こっちは仕事が終わり次第そのキャンプに向かう」
「わかった気をつけてな。それにしてもすごい数だぜ」
「全くだ。じゃあ頼む」
「リンドウの読みが当たったか」
「それにしても山の中にある工場とは。これはまた攻撃が難しい」
「この山の中の工場について情報分析本部で資料はあるのか?門が見えたからリンドウの言う様に自然の穴じゃなくて人工的に作られたのだろう」
「これからすぐに調べます」
都市国家内ではハンター本部と政府、守備隊、情報分析本部の間でドローンの画像を見ながらやりとりがあり情報分析本部ではすぐに過去の資料の検索を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます