第148話 西工場破壊そして現地へ

 その頃港を出た守備隊の破壊部隊は上陸地点の浜辺に降りて一路西の工場を目指していた。装甲車2台とドローンを操作する兵士20名を乗せた輸送トラックの一群がマップ上に表示されているルートに沿って進んでいく。1台の装甲車はやや先行して進みながら探索用ドローンを飛ばして周囲を警戒していた。


 このルートは前回リンドウらが探索した際に作ったマッピングを基にして決められたルートだ。


 大きな輸送車にはドローンを抱えている20名の兵士の他に車両の奥に箱に入っている20発の爆弾が積まれている。


 守備隊はゆっくりと荒野を西に向かっていた。アンテナ獣とその護衛の機械獣に遭遇しないために南寄りのルートを走って荒野を進んでいった5日目に先頭を走っていた装甲車のドローンが西の工場を捉える。


「目標発見。距離約12Km」


 その情報を聞いた守備隊の責任者は輸送車と自身が乗っている装甲車をその場で止めると部下に命じて現在地を確定させる。


「目標から15Kmの地点です」


「よしここから攻撃しよう」


 戻ってきた装甲車を入れて3台の装甲車は車両の向きを変えてその場に停車する。すぐに輸送車から20名の兵士が爆弾を抱えて降りてきてその場でドローンに爆弾をセットしてく。警戒用ドローンを飛ばしている中1時間程で全ドローンに爆弾の装着が完了した。


『こちら攻撃隊、準備完了』


『こちら本部だ。攻撃を許可する。完全に破壊しろ』


『攻撃隊了解。完全に破壊します』


 通信を終えた攻撃隊の隊長はドローンが送ってくる工場の映像を見る。工場の周囲には多数の機械獣の姿が見えている。同じ様に映像を見ている副隊長に


「工場の破壊でどれくらい巻き込まれて倒れてくれるかだな。残りは一斉にこちらに襲いかかってくるだろう」


「そうですね。15Kmありますが攻撃用ドローンの回収があります。油断はできないでしょう」


「ドローン攻撃隊に告ぐ、直ちに飛行開始して所定のポジションにつけ」


 その指示で荒野にあった20台の攻撃用ドローンがゆっくりと上昇を始めた。全てのドローンが5Kgの破壊力の強い爆弾を吊っている。そして時速20Kmのスピードで西の工場を目指して飛んでいく。


 20機のドローンが工場の上に着きそれぞれ所定の位置について完全に準備が整ったのは1時間後だった。ここまでは予定通りだ。


 隊長は偵察用ドローンで全ての攻撃用ドローンが所定の位置についたのを確認すると


『爆弾投下!』


 その指示で上空100メートルの高さから20個の爆弾が投下された。


『爆弾を投下したドローンは直ちに帰還せよ』


 爆弾を投下したドローンは軽くなって時速を30Kmに上げて戻ってくる。

 スクリーンには20個の爆弾を投下されて激しく爆発する工場が写っていた。


 都市国家防衛本部でも同様の映像を見ていて画面では工場が完全に破壊されている様子が映っていた。偵察用ドローンは工場から約5Km離れた上空300メートルの高さから望遠レンズで工場の状態を撮影していた。


「見てる限り完全に破壊されてますな」


 その言葉に頷く関係者達。



 攻撃隊はジリジリとしながらドローンの帰還を待っていた。偵察用ドローンはしばらく上空にとどまって見ていたが工場が破壊されたのが確認できるとそのまま装甲車に戻ってくる。ようやく攻撃用ドローン群が西から飛行してきた。それらを全て回収し兵士が輸送車に乗り込むと離脱の指示を出す。2台の装甲車と輸送車は全速力で現場を離脱して上陸地点を目指して車を走らせていった。



 守備隊が西の工場を破壊したという情報はハンター本部経由でリンドウらにも伝えられる。この時点でリンドウらは都市国家を出て15日が過ぎていた。依然として巨大廃墟を過ぎてからは機械獣とのコンタクトはない。


「これで西の懸念はなくなった。あとは俺たちが向かっている北側だけだ」


 リンドウらはここ数日は進軍速度を極端に落としていた。起伏が多い場所となり視界が十分に取れない上に重い燃料車が起伏を上がる際に速度が落ちるためだ。リンドウらは常時2機のドローンを飛ばして前方や周囲を警戒しながら進んで行く。


「以前は山間部だったのかしら、都市国家周辺にはない景色ね」


 ドローンの画像を見ながらローラが言う。同じ様に画像を見ていたリンドウは


「こっちにとっては嬉しい地形じゃないな」


 起伏が大きくてレーダーの有効範囲が狭くなる。いきおい頼りはドローンになり2機のドローンで前方、起伏の向こう側の安全を確認してから起伏を降りてまた登ると言う繰り返しだ。


 それでもゆっくりとだが確実に前進を続けて行き、都市国家を出てから23日目、比較的大きい起伏を苦労して越えた彼らの進行方向の左側に山々が連なっているのが見えてきた。ドローンを山から東方面に飛ばすと山が連なっているその先、西側は山が途切れそのずっと先にまた山が見えている。


 ドローンの映像と地図を見ていたリンドウ


「ようやく目的地が見えてきたぞ。左手の連なってる山のずっと西側が破壊された工場がある場所だ」


 リンドウの言葉は現場のみならず都市国家にも届いていた。リンドウの言葉で車を止めて全員が東の山々を見る。


「ここからが最後の調査になる。この山の東の端から山の裏側、こちら側に行けるルートがあるかどうかだ。ここから先は戦闘が予想される。各自警戒を緩めるな」


 そうしてゆっくりと起伏を降りて進んでいくと起伏の谷間に廃墟を見つけそこに入っていく。現在位置を地図上に表示させて周辺の状況を見るリンドウ。この地図は各車及び都市国家ともリンクしていて全員が同じ地図を見ていた。


「ローラ、ここから山の端を回って裏側までおおよその距離は?」


「そうね。山の裏側のこの地点あたりまでだとぐるっと回っても約40Kmってところかしら」


 40Kmかと呟いたリンドウ。そう言ってからスクリーン上に指を這わせて


「このルートでいく場合はどうなる?」


 その指先はこの廃墟から真っ直ぐに山に向かい山裾に沿って東に進んでそのまま山裾を回って裏側に向かうルートだ。すぐに指でなぞったところにラインを引いていくローラ。そして計算をすると、


「あまり変わらないわね。30から35Kmよ」


「でも近くなるな」


 そう言ったリンドウは全員に


「まだ日が暮れるまでは時間はあるが今日はここで野営しよう。明日からの探索については俺にアイデアがある。給油が終わったら全員に説明する」


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