第147話 北へ その2
翌日6台と護衛の5台の一群は前線基地を出て進路を北東にとって荒野を進んでいく。砂煙を上げながら荒野を進んでいく一群。前線基地を出発して2時間が経った頃、
「レーダーに反応。進行方向前方10Kmに小型4体」
ローラの声が飛び込んできた。直ぐに
「前方小型機械獣4体了解。前方2台で対処する」
本体の前方3Kmを走っている装甲車から無線が帰ってくる。
「頼む。本隊はこの進路、速度を維持」
リンドウが直ぐに全員に指示を出す。
「小型全て撃破」
数分後に前方警戒車より連絡がはいる。
「レーダーを強力なワイドレンジに交換してよかったわね」
「平坦な荒野では威力を発揮するな」
ローラと運転しているヤナギがやりとりしている中、
「これからA4、5地区と奥に進むとマシンガン獣も出てくる。十分に注意しよう」
リンドウの言葉に各車から了解と返事が入ってくる。
その後も散発な機械獣との戦闘はあったものの問題なく倒した一行はA4地区の奥、A5地区に近い場所にある廃墟に野営をする。護衛組が交代で周囲を警戒する中本隊のハンターはしっかり休むことができた。
A5地区に入るとマシンガン獣らの大型の機械獣らと数度遭遇したが護衛の装甲車がその都度本体から離れて敵を殲滅していった。ランディ、エリン、そしてルリが乗っている装甲車も数度戦闘の為に隊列を離れそしてまた戻ってきた。
そうして3日目の昼過ぎ、レーダーの探索範囲を最大にして進んでいるとレーダー画面の左上に巨大廃墟の影が映り込んでくる。
「北西20Kmに巨大廃墟。今のところ敵影無し」
ローラの声に続いてリンドウが全車に
「このままの進路をキープする。レーダーには敵影はないが目視でも周囲を警戒してくれ」
レーダー上に現れた巨大廃墟がスクリーンの左上から左下に移動していき、レーダーの範囲外になって消えるまでローラとリンドウはじっとスクリーンを見ていた。
「敵の攻撃は無い見たいね」
影が消えるとローラが言う。リンドウは頷きながらも
「念の為レーダーをフルレンジのままにしておいてくれ」
「了解」
それから数時間進み適当な廃墟を見つけると全車がその廃墟に車を止める。護衛組の仕事はここまでだ。ここで1泊して明日都市国家に帰還することとなる。護衛の5台は順に燃料車から燃料を貰って満タンにする。
「ここまでは何とか無事に来られたか」
廃墟の中で車から降りて食事をしていると3号車のスコットがリンドウに近づいてきた。
「本番はこれからだからな」
「そうだな。明日からは護衛もいない。1号車のワイドレンジレーダーが頼りだぜ」
頷くリンドウ。そして立ち上がると護衛組の連中が休んでいる場所に言って礼を言いう。
「明日から大変だけどがんばれよ」
「リンドウがリーダーなら大丈夫だろう」
礼を言う度に逆に激励され彼らと少し話をしてから移動していき最後にD地区から来ているランディ、エリン、ルリらがいる場所に向かう。
「これからは未知の場所だ。気をつけろよ」
「ああ。安全第一で移動するさ。留守の間は頼むぞ」
「エリンやルリもいる。大丈夫だ。安心して行ってこい」
ランディと話をしていると
「そうそう。D地区は私たちでやっとくから。リンドウはしっかりと仕事をしてきて頂戴」
「わかった」
そう言うと隣にいたエリンがリンドウの耳元で
「帰ってきたら腰が抜けるほど可愛がってね」
甘い声で囁いてくる。もちろんだと答えるリンドウ。その後は廃墟の中で護衛組と遠征組が一緒になっていろんな雑談をして時間を過ごした。
そうして翌朝、リンドウらは護衛組の5台の装甲車が都市国家に戻っていくのを見送ってから装甲車に乗り込むとインターコムを通じて全員に、
「これから出発する。ここからは未知の場所だ。レーダーはフルレンジで作動させるが万が一ということもある。燃料車と1号車を除く各車は常時屋根に人を出しておいてくれ」
その言葉で2号車、3号車、4号車そして物資輸送車の屋根にハンターが上がると重機マシンガンの射撃場所に立つ。それを目視で確認したリンドウが出発するという声で6台の車は荒野を北西方面に進み出した。
2号車からドローンが飛び出すとリンドウらの車を中心として半径10Kmの円を描く様に飛行しながらその画像を各車に送ってくる。この画像は都市国家の本部や情報本部も共有しており情報本部ではその画像と1号車のレーダーの画像を見ながらこの地区のマッピングをしている。もちろん移動する1号車の中でもローラがPCでマッピングを行なっている。リンドウはローラの背後からレーダーとドローンの画像を見て進行方向の先の様子を確認していた。
荒野はほぼ平坦で今の所進行方向に大きな起伏や山が見えない。機械獣とも会うこともなく6台は一路北西を目指し、その日は結局戦闘がないまま荒野にある廃墟に車を止めると交代で見張りを立てる。ここから先は何が起こるかわからないから毎晩燃料を補給して常に満タン状態にすることにする。各車が交代で燃料車から補給を受けているのを見ていると、燃料車のジョニーと給油をしている4号車のバーグのやりとりが聞こえてきた。
「今日は何も無かったな」
「機械獣も現れなかった」
「とは言えここは未開の場所だ。注意しようぜ」
「そうだな」
リンドウが言わなくてもAランクハンターは皆今の自分たちの立ち位置を認識している。会話を聞きながらその通りだぜとリンドウも再認識していた。
都市国家を出て10日が過ぎた。巨大廃墟を超えてからは今の所全く機械獣と遭遇していない。ただこの日からは今まで平坦だった荒野に起伏が出てきた。
「起伏が多くレーダーが有効に作用しなくなる。ここからはドローンの目で前方を確認して進むことにする。各車は屋根の上からの目視の監視も続けてくれ」
そうしてドローンを2機飛ばして進行方向の左右に配置して周囲を警戒しながら進み出す。進軍速度はそのままだ。
「嫌な予感がする」
ドローンが送ってくる画像を見ながらリンドウがつぶやくと、
「よしてくれよ。リンドウの勘は当たるんだからさ」
運転しながらヤナギが声を出す。
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