第144話  準備の合間 その2

「ああんっ、また逝っちゃう!」


 もう何度目か分からない絶頂に導かれるキャサリン。ベッドの周囲には上品な服や下着が散乱している、そうしてベッドの上で見事な肢体を背後から貫かれてあられもない声を上げ続けているキャサリン。服の上からでも想像できた身体だが脱いだらリンドウの想像以上に良いスタイルだった。しかも身体の感度、反応も悪くない、昔の男か今の男にしっかりと開発されているというのが分かる身体だ。


 リンドウの腰が動いて何度目かの絶頂に導くと貫かれたまま失神してしまう。

 しばらくして失神から目が覚めたキャサリンは隣にリンドウが仰向けに寝ているのを見るとその体にしがみついてきた。


「こんなセックス初めて…失神したのも初めてなの」


「感度のいい体してるじゃないか、抱き甲斐があるぜ」


「そう?嬉しい」


 そうしてしがみついたまま話をするキャサリン。TVのインタビュー以来気になっていたらしい。今まで出会ったことがないタイプの男だったからだ。


「偶然お店で会ってからずっと抱いて貰いたくって…それで今日会えたから思い切って待ってみたの」


「なるほど」


 相変わらず口数が少ないがキャサリンは全く気にならなかった。


「これからも抱いてくれる?」


「もちろんだ、いい女だし身体の感度もいいしな」


「嬉しい…」


「ただ俺は特定の女を持たない主義だ。それでも良ければという条件付きだけどな」


「もちろん、貴方を縛る気なんて全然ないの。私が抱いて貰いたい時に思い切り抱いてくれたらいいの」


「それなら問題ないな」


 そうして夜通し、明け方近くまで何度も抱き合った2人。最後に一番大きな声を出して失神した時には陽はすでに登っていた」


 失神から目が覚めると気だるい仕草で下着だけを身につけたキャサリン。リンドウが冷蔵庫から取り出したジュースを美味しそうに飲むと、


「逢っている時はリンドウと仕事の話はしないって約束するわ」


「そうしてくれ、まぁ聞かれても答えないけどな」


「うふふ。そうよね。口数が少ないし口が堅い。Aランクハンターの条件かしら」


「口が固いのは必須だな」


「私もプライベートと仕事はきちんと分けてるの、だからプライベートの時はリンドウの好きにして」

 


 結局日が西に大きく傾いた頃にキャサリンはリンドウの部屋を出ていった。リンドウはそれからシャワーを浴びると仮眠を取りすっかり日が暮れた頃にシモンズの店に顔を出した。


「よぉ、久しぶり」


 店に入るとランディが声をかけてきた。隣にはヤナギもいる。リンドウが入ってきたのでカウンターにいた2人はテーブル席に移動してそこにリンドウが座った。


「やっぱりリンドウが行くんだな」


「言い出したのが俺だからな」


「留守は任せとけ、エリンもいる。何かあってもこっちで対応できるだろう」


 ランディの言葉に頼むぜというリンドウ。隣からヤナギもランディとエリンがいたら問題ないだろうと言いそれにリンドウも頷く。


 それからは北地区のミッションについて話をする。周囲に他の客もいなくまたシモンズとローズもカウンターの奥にいて気を使ってくれているので3人はざっくばらんな話ができた。


「今回のメンツを見たけど皆いい奴ばかりだ。支部が推薦するから当然と言えば当然なんだが。リンドウの指揮を邪魔する奴はいないだろうから安心していいぞ」


「それは助かるな。余計なところで気を使いたくないからな」


「それに万が一何かあってもそん時は俺が前面に出る。リンドウは20人の指揮に集中してくれ」


 ヤナギの気遣いに感謝するリンドウ。


「俺が知ってる奴も何人かいる。皆いい奴さ」


「ランディも他の地区のハンターで知り合いがいるのか」


 リンドウはびっくりして言うと、


「ハンター研修の時の仲間とかあとは飲み友達だな。俺はD地区でしか飲まないが他地区からここにやってくる奴もいるんだよ。いろんな場所で飲みたいってことでな。そういう奴らと何度か飲んだことがあるんだ」


 なるほどと頷くリンドウ。リンドウは機械獣の討伐をしてない時は女を抱くのが趣味だがヤナギやランディはそうやって人脈を広げているのかと感心していると


「まぁリンドウは十分に売れてるから問題ないだろう」


「そうだな。むしろ向こうから話かけてくると思うぜ」


 ヤナギとランディが交互に言ってからそう言えばとヤナギが


「守備隊の連中が港から出ていったらしい」


 ヤナギの情報収集能力は皆知っているのでそこには突っ込まずに


「奴らのミッションが上手く行くといいな」


 とランディが言うと全くだと2人も同意する。西の工場破壊は今回の北の探索ミッションとリンクしているからだ。可能性は低いが西から機械獣達が襲ってくることも考えていたリンドウだったのでそちらの心配の種が一つ減ったと思っている。


「移動で20日強、それから上陸して移動…西の攻撃は1ヶ月後くらいか。俺達が1週間後に出て移動で30日としてあちらの方が早いタイミングだな。いい感じだ」


 頭の中で計算したスケジュールを言うリンドウ。


「俺達の移動が30日くらいというのはいい線だろう。燃料車もあって移動距離が伸びないし安全第一なら迂回して進むしな」


「その通りだ。このミッションは急ぐ必要はないと思っている。未開地区のマッピングもしながら進むつもりだ」


 2人ともそれがいいだろうとリンドウのアイデアに同意する。


「それでだ」


 とヤナギが声を潜めてランディとリンドウに視線を送って


「この北地区に何かあった場合、俺は絶対に何かあると思ってるが、その場合には次の手はどうなると思う?」


 と聞いてきた。


「破壊だろう」


 ランディが短く答える。その答えを聞いたリンドウはヤナギやランディに顔を向けると


「普通の工場なら守備隊に破壊してもらう」


「どういうことだ?」


 リンドウの言葉にヤナギが聞き返し、ランディも普通ってどういうことだと言ってくる。


「エリンとルリともこの話をしたんだが、俺は敵の本部、AIの頭脳がこの北のどこかにあるんじゃないかと思ってる。その場合には普通の工場の中にあるとは思えないんだ」


「具体的には?」


「それは分からない。思いも寄らない場所に本拠地を構えている可能性がある」


 しばらくの沈黙の後ヤナギが


「空からの爆撃に耐えられる場所とかか?」


「そうかもしれないしそうでないかもしれない。いずれにしても今までの様に簡単な攻撃で破壊できるとは思えないんだよな、もちろん根拠はない。あくまで俺の勘だがな」


 それを聞いたランディは嫌な表情になる。


「リンドウの勘か、外れないからな」


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