第129話 偵察ミッションスタート

 支部のビルを出て4人で4層の門を潜るとランディは用事があるんだよと手でグラスを持ち上げる仕草をしてそのまま夕方の4層の繁華街に消えていった。


 エリンとルリは当たり前の様にリンドウのマンションに向かって歩いていく。


「4日後か、ツバキも来るだろうから私たちは今日と明日の2日間だね」


「そっちが勝手に決めるのかよ」


「もちろん」


 涼しい顔で言うエリンとルリ。


 そうしてリンドウはその日と翌日の夜遅くまでエリンとルリの相手をし、1日開けてその次の朝から夜まではツバキの相手をさせられる羽目になった。


 クタクタになった4日目の朝支部のオフィスに行くとすっきりとした顔のエリン、ルリ、そしてツバキがリンドウを待っていた。すぐにランディも来て4人は銃と荷物を持つと支部が仕立てた車に乗り込んでで南の入江を目指す。


 車の中で思い思いに時間を潰して昼過ぎに南の入江に着くとそこには既に出港準備を整えた船といつものより一回り大きな装甲車が準備されていた。


 ランディが早速装甲車に乗り込んで車のチェックをする間リンドウは車の外を回ってタイヤやマシンガンの状態をチェック。それから積み込まれている燃料や食料、弾丸のチェックをルリと2人でする。エリンとルリ装甲車の中に入るとラップトップを起動させ動作を確認し、入江で3機のドローンを飛ばして動作確認、そしてラップトップへの画像のリンクなどをテキパキとこなしていく。


 1時間ほどですべてのチェックが終わると一旦装甲車から降りた4人。


「今回のミッションの周波数は200.8MHz 常時オープンでお願い。この周波数はハンター本部以外に情報分析本部、守備隊の関係者も共有しているわ」


「この前と同じだな」


 ランディが言いながらゴーグルの周波数をセットする。3人もセットして通話確認を終えるとランディがバックで装甲車を船に乗せて守備隊がすぐにシートを被せる。


「安全第一でお願いね」


「まかせといて」


 ルリの言葉で全員が船に乗り込むと装甲車を乗せた守備隊の船がゆっくりと離岸していった。


 入江を出て上陸ポイントまで2週間。シートは装甲車の屋根に被せてそれを船の船側で紐で結んであるのでいつでもシートの中にもぐりこんで装甲車に乗ることが可能だ。

 

 エリンは装甲車に乗り込んで備え付けのPCを稼働させてハンター本部と連絡を取る。


『感度良好だ』


 本部から職員の声が聞こえてくる。通信を確認すると後部座席に座っている他の3人の端末にデーターを送ってから打ち合わせを始めた。


「工業団地へは前回のルートでいくつもり。起伏もわかってるし途中で大きな障害物もなかったでしょ?」


「あのルートなら俺も覚えている。一度走っている道なら任せとけ」


 ランディが任せとけというなら問題ないということは全員が知っているのでとりあえず工業団地の往復のルートについての話はこれで終わりだ。


「それで次は電波塔なんだけど」


 エリンがそう言うと端末に新しいラインが現れた


「これが前回守備隊の進んだルートなの」


「上陸地点から一直線に電波塔を目指してるな」


 端末に現れたマップを見てランディが言う。


「そうなのよ。最短距離で移動しているんだけど、今回は少し遠回りで近づいた方がいいんじゃないかと思ってる」


「俺もそれがいいと思う。この守備隊のルートより南側を走って西に移動して最後に北上して近づいていくのはどうだろうか?」


 リンドウが言ってからランディを見る。じっとマップを見ていたランディ。顔を上げると、


「俺もエリンとリンドウの案に賛成だ。しかも速度を落として進んだ方がいいだろう。そして適宜ドローンを飛ばしてくれ」


 ランディの言葉に頷く他の3人。


 20日間の海の上、海岸沿いの比較的穏やかな海を船は進んでいく。ハンター4人は思い思いに時間を過ごしていた。


 この日ルリとエリンは船側でドローンの操縦訓練をしていた。2機のドローンが2人のコントローラーの指示通りに上昇、下降、そして急降下に急上昇と自由自在に操っているのを感心した表情で見ているリンドウとランディ。


「見事なものだな」


「俺じゃああはいかない。操縦ミスで海に落としてしまうのがオチだ」


 俺もだとランディの言葉に同意するリンドウ。そして飛んでいるドローンを見ながら


「2人があれだけ操縦できれば問題はないだろう。2機同時に飛ばすことも問題なさそうだ」


 操船をしている守備隊の兵士は6人、3人1組で交代で休むことなく船を目的地に進める。今回のミッションについては守秘義務を負わされた上で参加しているが物資の引き渡しやハンターから依頼、質問がこない限り極力ハンターとは接触しない様にと指示が出ているので彼らはほとんど船首から出てこない。


 リンドウらのハンターは装甲車の中にいることが多いが、たまに船尾に出ては海岸線を眺めたりしていた。ミッション前の緊張は感じられない。


 修羅場をいくつも潜り抜けてきた4人、そして普段から厳しい鍛錬を自分に課している4人は普段と同じテンションで船旅を楽しんでいる。


 上陸地点の到着3日前の夕食でランディが自分のリュックから酒瓶を取り出した。


「仕事前の最後の酒だ。次は一旦戻ってきた時だな」


 酒好きだが酒に溺れない。自制できるランディだからこそ他の3人も何も言わずにランディの飲酒を認めている。


「まぁ、ランディのことだから持ってきてるだろうとは思ってたけどね」


「船に乗ったらすぐに飲むのかと思ってた。結構真面目じゃん」


 エリンとルリがひやかすと、


「一応Aランクだしな。その辺の自制力はあるんだよ」


 美味そうにグラスに2杯の酒を飲むと、これでよし、と酒瓶をリュックにしまう。

 リンドウもランディの性格を知っているので何も心配していない。


「普段通りにしていた方がリラックスできるしな」


「そういうことだ」

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