第127話 偵察ミッション その3
支部のオフィスを出た4人は4層に戻ってから4層内にあるレストランに入る。ピークタイムは過ぎているとはいえそこそこの客、ハンターや非戦闘員がいる店内で壁際のテーブルに座った4人を周囲がチラチラと見ている。
その視線はエリンとルリと見る視線、そしてTVに出たNo.1ランクのリンドウを見る視線だ。ランディはそんな中注文したビールが先にくるとグラスに口をつける。うまそうに一口飲んでグラスをテーブルに置くと顔をリンドウに向ける。
「リンドウは相変わらず先を読んでるな」
「暇だからな」
「でも聞いていて十分あり得る話だと思ったわ」
「私も。言われるまでは考えもしなかったけど言われてみればなるほどって感じ。やっぱりリンドウは違うわね」
エリンが言い、ルリが感心する。具体的な言葉は出さなないまま会話をする4人。店員がテーブルに来たところでランディが話題を変えた。
「ところでリンドウ、テレビを見たけど格好良かったぜ」
水を飲む様にビールを飲んでいるランディが言うと
「ランディまで見ていたのか。一体何人が見てたんだよ」
こっちは本当の水を飲んでいるリンドウはもう勘弁してくれと言った表情だ。
「あのキャスターの番組は人気があるのさ」
「そうらしいな」
「それでな」
とランディが話しだした。リンドウのインタビューはBランク以下のハンターには結構衝撃的だったらしい。特に物陰に隠れながら5体倒した方が俺たちの中での評価が高いという話しが効いたらしいぜと言う。
「俺も普段からBランクの奴らとは酒場で飲んだ時に荒野では無理するなと言っているんだが奴らは聞いている様で聞いていなかったんだよ。というかAランクの奴らは無茶をしても生き残ってこられたからAランクにまで上がったんだと信じてた奴が多かったんだ。これには俺もびっくりしたけどな」
「そうなの?ちょっと考えたら無茶したら生き残れないって分かるんじゃない?」
「いや、エリン。そうじゃないんだ。Bランクの奴ら、多分Cランクの奴もそうだろう。今Aランクにいるハンターは無茶をしても生き残っている強運の持ち主の集まりだって思ってたみたいだぜ」
運ばれてきた料理には口を付けずにビールのおかわりを頼んだランディが話を続ける。
「ところがインタビューでこのリンドウがばっさりと言っちまっただろ?それでようやく奴らも今までの自分たちの考え方が間違っていたと気がついたんだよ」
「よくまぁそんな考えで今まで生き残ってたわね。そっちの方がびっくりよ」
ルリがパスタをフォークで綺麗に巻き取りながら言う。全くだと話をしたランディも同意する。
「とにかくリンドウのおかげで奴らの目が覚めた。最近じゃ安全マージンをしっかりと取っているらしい」
リンドウは聞きながらこれで死亡率も下がるだろうと、出たくもないTVだったがそれなりに効果はあったんだなと思っていた。ルリもそう言えば最近ハンターの死亡率が減ったとかいう通知が端末に入ってたわねと言っている。その言葉に頷く他の3人。
「ところでリンドウにインタビューをしていたあのキャスターがシモンズの店に顔を出したって話だが知ってるかい?」
2杯目のビールも飲んでようやく食事にとりかかったランディが言う。
「もちろん、ちょうどその時に私とエリンとリンドウもあのお店にいたの。私たちがお店に入ってしばらくしてから彼女が同僚のキャスター2人と一緒に入ってきたわ」
ルリの言葉に今度はランディがびっくりして顔をあげる。
「お前さん達その時いたのか。いや俺がシモンズの店に行ったらさ、店に入るなりあいつが俺の店にキャサリンが来たと言って自分の端末で撮った彼女との2ショットの写真とか見せてくるんだよ。参ったぜ。なんだよ、あの野郎その場にエリンやルリがいたなんて一言も言ってなかった。それだけ舞い上がってたのかよ」
「恐らくそうだろう。ローズが言ってた。シモンズはあのキャスターの出てる番組は全て録画してるらしいぞ。熱烈なファンだそうだ。その当人が店に来たんだそりゃ舞い上がるだろうよ」
リンドウの話に声をあげて笑う3人。あのシモンズがねぇとかローズ一筋だと思ってたのにとか口々に言ってから
「まぁそうやってシモンズの店が流行るんなら悪い話じゃないよね」
「その通りだ」
エリンとランディの話に頷くルリとリンドウ。その後はリンドウとエリン、ルリが来ている新しい迷彩服の話になり、いい物だからランディも使いなよと3人で勧める。
食事が終わって店を出ると
「早速これからサムの店にいって新しい迷彩服を買ってくる。他にもいろいろ準備しないといけないしな」
「私たちも買い出しに行って来る。2ヶ月だから女は色々と持っていかないといけないのよ」
そうして3人と別れたリンドウは自宅に戻るとソファに腰掛けて端末からマヤに連絡を入れる。スクリーンにマヤの顔が映ると
「今周囲には誰もいないか?」
「大丈夫よ、私の個室だから」
マヤの顔がスクリーンから違う方向を向いてまたスクリーンを見る。おそらく個室のドアが閉まっているのを確認したんだろう。
「マヤのところにグレネードランチャーと弾丸はあるかい?」
いきなり聞くリンドウ。
「ちょっと待ってね」
それに対してマヤは余計な質問はせずにそう言うとすぐPCのキーボードを叩く音がしてきた。
「射程距離が200メートルのならあるわよ。使いたいの?」
「ああ。借りたいんだができるか?」
「弾丸は実費請求になるけど」
「構わない。10発ほど撃ちたいんだ」
「わかったわ。届けに行くわ」
「悪いな」
「届けただけで帰れって言わないでしょ?」
「もちろんだ。サービスするぜ」
「いっぱいサービスして」
最後は掠れた声になっていたマヤ。通話を終えてそう言えばしばらく抱いてなかったな。その分たっぷりとサービスしてやらないとなとリンドウはソファから立ち上がると浴室に入っていった。
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