第78話 ミッションかもしれない
マヤが自宅に来た数日後、リンドウはツバキから呼び出しを受けてハンター支部に顔をだした。支部長室に入るとスーツ姿のツバキと支部の職員の2人がリンドウを待っていた。
「まだ確定じゃないんだけどリンドウ指名でミッションが入るかもしれないの」
支部長室のソファに座るなりツバキが言う。
「意味がわからないな。今までは確定したミッションの連絡だっただろ?確定じゃないけど俺が指名されるかもしれないというのはどういう事なんだ?」
リンドウは呼び出された時からこの面談の目的は想像できていたがマヤの手前もあり何も知らないという風に答える。
当然この質問も予想していただろう。ツバキはリンドウの顔をじっと見ると
「3,000メートル以上のスナイプが必要になりそうなのよ。もしそうなったらこのハンター本部所属のハンターで3,000メートル以上のスナイプができるのは貴方だけなのよ。他の地区のスナイパーはその距離のスナイプができないしまた実績もない」
「なるほど。スナイプのミッションの可能性があるってことだな。これはハンター本部からの依頼なんだな」
リンドウの言葉に職員と顔を見合わせるツバキ。そうして顔を再び正面に座っているリンドウに向けると顔をかすかに左右に振って
「ハンター本部からの依頼といえば依頼だけど今回はその上の政府からの依頼なの」
「政府からの依頼?それでミッションの内容は?」
「それもまだわからない。本当に分からないのよ。政府や情報分析本部、そして都市防衛本部とハンター本部、これらの機関が集まる会議の席上で出てきた話なの。そして3,000メートルを越える距離のスナイプになると都市防衛本部内では誰もいない。ハンター本部は1人だけいると答えているのね。その1人がリンドウ、貴方のことよ」
困惑した顔をしているツバキ。どうやら本当に全ては知らない様だ。ツバキの話を受けてその後を職員が続ける
「ハンター本部の本部長はその会議の席上、ハンターの中で3,200までなら正確に命中させることができるハンターが1人いるという説明をしている。リンドウの事だ。それと同時に本部長より、彼に対して詳しいミッションの内容を説明する必要があるのでミッションの詳細を教えて欲しいと依頼した。スナイプするターゲットやその距離だな。それに対して政府と情報分析本部の説明ではどんなミッションになるかはもう少し時間を欲しいとの事だ。彼らも現在まだ状況を完全に理解していない様だ。本部長によるとおそらくそのミッションは最近行われた守備隊の探索結果が絡んでいるだろうとの事だ。つまり情報本部が現在分析中でそういうミッションになりそうだという一報は出ているが詳細については情報分析本部の最終報告書待ちということだろう」
説明をしてきた職員の顔を見て、
「なるほど。そのミッションが本当に実行されるとなれば俺がスナイパーとして指名される可能性が高いってことはわかった」
その言葉に頷くツバキと職員。
「ただ俺もハンターだ。いくら上からご指名とは言ってもそのミッションの内容や報酬によっては受けないってこともあるぞ」
リンドウの言葉にツバキが直ぐに口を開くと、
「もちろん。仕事の受ける受けないはハンターに委ねられるのは知っている。だから今回ミッションをオファーしてくるとなるとリンドウには相当良い報酬を提示してくるでしょうね」
「その分危険度も相当高そうだけどな」
ツバキの言葉に皮肉で返すリンドウ。
「本部からの連絡では1ヶ月以内には詳細がわかるらしいから。まずはわかっているところだけでもリンドウに連絡しておこうと思ったの」
ツバキの言葉にありがとよと礼を言ってから、
「ただわかってると思うが俺の持っているロングレンジライフルの最大射程距離は3,200だ。その距離以内なら自分の銃で的を打ち抜ける自信はある。ただそれ以上の距離になると俺の銃では無理だし経験もない。もしスナイプする距離が3,200を越えるのなら銃やひょっとしたら弾丸も特注品になるぞ。そしてそれを自分のモノにする訓練の時間も必要だ。銃と弾丸を渡されてはいよろしくといきなり頼まれても無理だからな」
リンドウの言葉に頷く2人。
「状況が分かり次第すぐに連絡する」
リンドウが支部長室をでるとツバキはすぐにハンター本部にリンドウとの打ち合わせの結果を報告する。そしてできるだけ早くミッションの詳細をクリアにしてくれと本部に依頼をした。
ツバキはリンドウの様な根っからのスナイパーはこのミッションを受けるだろうとは思ってはいるが、とはいえ彼のいう通り何も情報のない中では判断ができない。
本部の報告には当人は前向きではあるが詳細の条件を提示しないとこれ以上は話を進められない。可能な限り詳細の入手をお願いするという内容の報告をした。
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