第77話 3,500メートル
Aランクのハンター達も他のハンターと同じで都市防衛隊の仕事をいちいち気にすることもなく彼らのペースで生きている。時に荒野に出、そうでない時は都市国家内で時間を潰す。
武器製造会社に勤務しているマヤから連絡があったのはリンドウが午前中の鍛錬を終えて昼食を済ませてから自宅に戻った時だった。
「逢いたいの。抱いて欲しいのはもちろんだけど、それとは別にお話しもあるの」
その日の夕方、リンドウの自宅を訪ねてきたマヤは伊達メガネにピンで止めた髪型といういつもの勤務中のスタイルだが服装はピンクのボタンシャツに紺のタイトミニスカートだ。部屋に入ってきてそのはちきれそうな胸を見ているリンドウに
「一旦家に戻って服だけ着替えてきたの。明日は有給休暇を取ったの。だから今晩は時間を気にせずに一晩中抱いて」
そう言いながらピンを外して伊達眼鏡を取るとリンドウの好みのマヤが現れる。そうしてその格好のまま抱きついてきたマヤを寝室に連れ込んでリンドウは一晩中ほとんど寝かせずにマヤを責めたてた。
明け方に何度目かの絶頂を迎えて完全に失神したマヤが目を覚ましたのはもう昼前だった。力が抜けていたマヤがようやくベッドから立つとリンドウの部屋にある材料を使って食事を作る。
「簡単な料理で御免なさいね」
「いや、食材を置いていない俺が悪い。むしろあの食材でこれほどの料理を作れるとはびっくりだよ」
目の前にはリンドウの乏しい食材で作ったとは思えないほどの凝った料理が並んでいる。
ダイニングテーブルで全裸で向かい合って食事をしながらマヤが昨日言っていた話しというのはねと言って話しだした。
「3,500メートル先の直径5センチ程の標的を射抜ける銃と弾丸を作って欲しい」
会社で仕事をしていると技術部の部長がマヤのところに来て出し抜けに言う。
「3,500メートル先の5センチの標的を射抜くライフルですか?」
「そうだ。銃と弾丸は特注のモノで構わない」
「そんな銃を作っても撃てるスナイパーはいないんじゃ?」
マヤはすぐにリンドウを思い出したがそれを口には出さずに言うと部長が
「実は私もそう言ったんだが会社のトップからはスナイパーの事はとりあえず考え無くても良い。銃と弾丸を大至急作って欲しいとさ。悪いが至急検討してくれないか」
「わかりました」
そうしてマヤは技術部の他の部員を集めて緊急ミーティングを行い今の部長の言葉を部員に伝えてスナイパー銃と弾丸の製造作業に入った。
そんな社内の会話を目の前に座っているリンドウに話をするマヤ
「何か大きなスナイプの仕事があるみたいなの。それで3,000メートル以上のスナイプができる人って守備隊にはいなくてハンターの中でもリンドウだけなのよ。ひょっとしたら貴方にミッションが来るかもしれないと思って」
相当厳しいミッションが貴方に来るかも…マヤはそう思っていたがそれは口にしなかった。
「本当に俺以外にその距離のスナイプをできる奴はいないのか?」
黙って聞いていたリンドウがマヤに逆に聞く。聞かれて顔を左右に振り、
「私は仕事柄全地区のAランクのハンターの持っている銃や得意な武器を全て知っている。狙撃、スナイプをメインにしているハンターはそれなりの数がいるけれども3,000メートルを越えるスナイプをできるのはリンドウだけよ。あのロングレンジライフルを持っている現役のハンターも貴方だけだもの」
なるほどと言いながら頭の中で3,500メートルのスナイプかと考えているリンドウ。3,200ならあの銃で対応できる。銃を替えてあと300距離を伸ばして命中させられるのか。
スナイプの世界は狙撃距離を100メートル伸ばすために皆必死になって訓練をする。肉体的にも精神的にも相当鍛えないと厳しい世界だ。リンドウは今のスナイパー銃の最大が3,200メートル故にその距離のスナイプについては絶対の自信を持っているが自分の実力の余力があとどれだけあるかはわからない。果たして3,500は俺が撃てる距離なのか。
リンドウが黙っているのを見ていたマヤは
「ごめんなさいね。まだリンドウにミッションが来た訳じゃないのにこんなことを言っちゃって」
「いやそれはいいんだ。今のマヤの話を聞いている限りそのスナイプが本当に必要となったら俺に話がくるだろうということは分かったからな。考えていたんだよ。3,500の距離が俺に取って撃てる距離なのかどうか。未知の距離だからな」
そう言ってからマヤをじっと見て
「銃と弾丸の製造の目処はついたのか?」
「コンピュータによるシミュレーションではどちらも可能と言う結論が出ているの。それで今はプロトタイプの製造に入っているところ」
なるほどと頷くリンドウ。3,500メートル先の5センチの標的か。きついミッションになりそうだ。
その後食事を終えて再びベッドで熱く交わり、仰向けに寝ているリンドウに横から抱きついてきているマヤを腕枕しながら
「その銃だが、できれば俺が今使っているライフルに似せて作ってもらいたい。持った時の感じが近い方が銃の感覚を身につけるのが早いからな」
分かったわと言って抱きついてきたマヤをベッドに仰向けに寝かせてリンドウはその上からマヤに覆い被さっていった。
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