第75話 都市国家防衛隊 探索に出る

 しばらくしてハンター本部から支部経由で全てのハンターに蜘蛛型のマシンガン獣の挙動についての通知が出た。


 リンドウの端末にもその通知が流れてきたが元々本人が報告した内容だったので軽く読み流しただけで端末を閉じる。


 一方他のハンターにとっては挙動がクリアになって討伐が楽になった。基本は遠隔での対処だが万が一近づいてきてもその距離以外で撃てば身体を少々晒しても大丈夫であるとわかったからだ。発射の間隔が200メートルあればその間に乱射して倒せる。


 ハンター本部がマシンガン獣の挙動についてハンターに通知を出していた頃、1艘の古い漁船が3層の南にある入江から海に出ていった。


 よく見ると漁船とはいえ漁師の姿はなく、代わりにいかつい制服を着ている男が数名乗り込んでいた。都市防衛隊の兵士だ。


 彼らは借りた漁船で大海に出るとそのまま西の海岸線に沿って北上していく。そうして進行方向右手に4層の城壁が見えるとその近くの入江に止めて野営をし、翌日再び船を出して北上していく。そうしながら砂浜が見えるとその沖で船を止めてはドローンを飛ばして砂浜の奥の地形を撮影していった。


「ここはまだ巨大廃墟も越えていない場所だ。もっと北に進もう」


 司令官らしき男の指示でさらに船を北に進めていく都市防衛隊。途中で何度も停泊してはドローンを飛ばして調査を続け、この漁船は入江の港を出て2ヶ月ちょっとして戻ってきた。そして直ちに都市防衛本部にドローンの映像と海岸線をチェックした地図が提出される。


 都市防衛隊本部はそのデーターを情報分析本部、政府にも提出。それぞれで吟味することになった。


 そうして3週間後、集まった関係者で検討が行われ最終的に2箇所が上陸の候補地に絞られた。1箇所は発見された西にある巨大廃墟から北西に100Kmほどの地点。もう1箇所はそれより200Kmほど先にある地点。どちらも砂浜になっていて装甲車を陸揚げするには問題のない場所だ。


「先端工業工業団地にはいずれにしても北から回り込んで調査する様になる。となるとA地点よりB地点の方が良くないか?」


 A地点とは1箇所目でB地点が2箇所目だ、スクリーンの上の地図に赤いX点が付いている。


「A地点からも一旦北上してから迂回して行けますよ。それにA地点からの方がトータルの距離が短くなるので装甲車の燃料の消費も少ないのでは?」


「B地点だとおそらく機械獣の監視外からの接近になるので見つかるリスクはA地点よりも低くなって安全じゃないか?」


 さまざまな意見が出る。ドローンの映像ではA地点、B地点のどちらも砂浜から上がるとそこは真っ平らな荒野になっていた。飛ばしているドローンの画像では工業団地は映っていないが数カ所小さな廃墟が映っている。


 議論が出尽くしたところで政府から来ている担当者が、


「探索なので安全第一としたい。B地点から上陸して南下する方向で進めたいがどうだろうか?」


 結論が出た。


 政府の意向を尊重して上陸地点はB地点と決まった。


「装甲車を運ぶ船の製造はどうなっていますか?」


 都市防衛隊の担当者が質問をする。


「現在造船中だ。ただ乗せられる装甲車は1台のみとなりそうだ」


 その声に落胆の表情を見せる都市防衛隊の担当者、防衛隊としては装甲車2台を積載できる船の製造を希望していたがそれは通らなかった様だ。政府の担当者が言葉を続ける。


「ご存知の通り漁業組合からは以前から新しい漁船の製造依頼がずっと出されている。そんな中、装甲車を輸送する船を製造することは強い抵抗がある。政府としても漁業組合には探索の重要性については説明しているが、同時に可能な限り船のサイズを小さくして使用する金属の量を減らし、漁業組合の反発をできるだけ抑えたい意向だ。ついでに言うと今回探索用の船を製造すると同時に漁船も1隻製造することにした」


 そこまで言われては反論ができない。


 その後装甲車を輸送する新しい船はあと2ヶ月弱で完成するという報告があり、完成次第最終の打ち合わせをしてから都市防衛隊の探索部隊をB地点に送り込むことになった。


 ハンター本部は彼らの会議の後にこの報告を受けたがもとより探索は都市防衛本部の仕事であるとわかっていたので特に不満もなく報告を受け取り、それから各支部に2ヶ月以内を目処に都市防衛隊の探索部隊が調査に出るという通知を行なった。支部はその情報はハンターには流さずに支部内での情報に留めていた。



「最近まともな食事はしてるの?」


 キッチンからエリンが声をかけてくる。


「週に2、3回シモンズの店で食事してるぜ」


「それでも足りないでしょ?私たちが毎日来てあげようか?それとも一緒に住む?」


 同じ様にキッチンにいて作った料理をテーブルに並べながらルリが言う。ここはリンドウの自宅だ。


「一緒に住んだら身体がもたないな。遠慮しておこう」


「こんないい女2人と同棲するのを断るなんてリンドウくらいよ。他の男ならお金払ってでも一緒に住んでくれって言うのに」


 エリンの言葉に


「じゃあその男と住んだらいいじゃないかよ」


 そう言うと食事の準備をしていた2人がその手を止めて食事が置かれているテーブルに座っているリンドウに近づくと


「まさか本気で言ってないでしょうね?」


「冗談だよ」


「そう。ならいいわ。今度そんなこと言ったら1週間は離さないからね」


 エリンとルリの剣幕にタジタジになるリンドウ。2人は1ヶ月間の薬抜きの期間が終わって再び避妊の注射を打ったばかりだ。その間してなかったせいか相当に溜まってる様で普段よりもイライラしているのが見える。男なら酒がないと機嫌が悪くなる奴は多いが女性でセックスしてなくてここまで機嫌が悪くなるとは流石にエリンとルリだぜと感心するリンドウ。結局食事が終わると食器の片付けもそこそこにリンドウの寝室に3人で入るとしばらくして女2人の甘い声が寝室から聞こえてきた。


 翌日の昼間、ソファにぐったりとして座っているリンドウの左右では久しぶりのセックスで満足げな顔をしている2人がいた。


「そうそう聞いた話しだけど守備隊が調査部隊を船で送り込むそうよ」


 リンドウの右側で全裸に迷彩服の上だけを羽織っているルリが言うと同じ格好をしているエリンが左側から


「それ私も聞いてる。もうすぐらしいわよね。リンドウも聞いてる?」


「そういう話しは聞いてる。船に装甲車1台積んで半島を北上して西から上陸するって話しだろう?」


 支部から通知がなくてもハンターは皆それぞれ個人的に様々な情報収集ルートを持っている。知り合い経由だったり酒場で聞いたり、そしてその情報をすり合わせてハンター達は確実な事実を積み上げていく。


「そうそう。上手くいくかしらね?」


「どうだかな。探索だけだかやばくなったら引き返すだろうしな。どこまで情報が取れるか。もっとも持って帰ってきた情報は俺達には届かないだろうけどな」


 エリンの言葉に自分の思うところを言うリンドウ。


 その通りねと言ったルリはいつの間にかソファから降りていて、絨毯の上にしゃがみ込んでリンドウの足を広げるとその奥にあるリンドウの男に顔を近づけてしゃぶり始めた。エリンはそれを見てリンドウに顔を近づけると指先でリンドウの胸をなぞりながら


「キスして」


 そう言って自分から唇を押し付けてきた。


 結局2人はリンドウの家で2泊して本当にすっきりとした表情で帰っていった。対照的にリンドウはぐったりしてそれから丸一日寝ることになった。

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