第74話  1人で検証する

 翌日リンドウは支部で四輪駆動車を借りると1人で荒野に飛び出した。助手席にはロングレンジライフルと狙撃銃を置いている。D3地区で小型2体を発見すると車を止めて狙撃銃で1,600の距離で2体を倒してさらに奥に進みD4地区の奥にある廃墟に車を停めてその廃墟の中でロングレンジライフルを構える。


 しばらくするとスコープにこちらに近づいて来る大型機械獣1体と小型3体の姿が映った。背中にはマシンガンを装着していないのを見て、3,200で銃を発射して大型を1発で倒す。そして狙撃銃に持ち替えると1,600から狙撃を開始して3体の小型を倒した。


 その後もその廃墟を動かずにじっと待つリンドウ。スナイプをメイン武器にしているハンターは皆気が長い。1箇所にじっとしているのが苦痛になるのならスナイパーには向いておらず、そう言う奴は大抵が乱射タイプの銃を選んで荒野を移動しながら狩りをする。


 リュックに入っている水や軽食を食べて時間を潰していると視界の先でキラッと光ったのが目に入りロングレンジライフルを構えてスコープを覗く。


 背中にマシンガンを背負っている蜘蛛型の大型機械獣だ。その周囲には小型の機械獣が3体いる。リンドウは思うところがありまずは小型の3体から処理をする。3発の銃弾で3体を綺麗に倒すと残った大型のマシンガン獣が廃墟を目指して近づいてくる。ロングレンジライフルを構えて発射したリンドウ。その弾丸は綺麗に背中のマシンガンを弾き飛ばした。これで大型の背中には何もない。


 そうして今度は狙撃銃を構えるが攻撃せずにじっとそれが近づいてくるのを待つ。

距離1,000でも撃たない。700、600、そして500になった時マシンガン獣はその場で動きを止めた。じっとその挙動を見ているリンドウ。300でも同じ様に一旦動きを止める。100でもしかりだ。そうして100で動きを止めて再び動き出したマシンガン獣を狙撃銃で倒したリンドウ。


 1人で頷いて納得すると両手に銃を持って車に戻りそのまま都市国家に戻っていった。



「嬉しいわ。貴方から誘ってくれて」


「街に戻ったらもう日が暮れていたからな。それに俺だってやりたい日はあるさ」


「その時に私に声を掛けてくれたのが嬉しいの」


 リンドウの部屋にはツバキがきている。街に戻るなりリンドウはツバキの端末に連絡を入れて報告したいことがあるから今から逢えるか?と言うと自宅にいたツバキがすぐにやってきた。自宅からきたツバキはめったに見ない私服姿だ。ダークブラウンのタイトスカートにやや薄めの同色のボタンシャツ、それにジャケットと茶系でコーディネイトした格好で手には自宅で作っていた料理も持ってきていた。


「私服のセンスもいいな」


「そう?ありがと」


 今はジャケットは脱いでいる。ボタンシャツの胸の盛り上がりを見ているリンドウ。


 そうしてツバキが用意してくれた食事をしながら今日の荒野でのマシンガン獣の挙動を説明する。フォークとナイフを動かしながら黙って聞いていたツバキはリンドウの話が終わると、


「つまり事前に目標に対して何メートルで攻撃するかをプログラムされていて、ターゲットを捉えるとあとはそのプログラムに沿って自動で発射する仕様になってるってこと?」


「おそらく。最初に組んでいるプログラムの変更はできないのだろう。人間の様に臨機応変には対応してこない、複雑なプログラムではなさそうだな」


 リンドウの言葉を頭の中で咀嚼するツバキ。


「マシンガン銃には有線ではなくて無線で指示を飛ばしているからマシンガンがあろうがなかろうがその距離に来ると指示を飛ばす様になっているのね」


頷くリンドウ。


「情報本部で分析しているマシンガンを見たらわかるだろう。まだあっちから報告は来てないのか?」


「まだよ。お役所仕事は時間がかかるのよ。差し迫った脅威でない場合は特にね」


「悠長なことだな」


 報告が終わり食事が済みキッチンで食器を洗っているリンドウにツバキが


「先にシャワーを借りていい?」


 その言葉を聞いたリンドウは食器を洗っている手を止めるとツバキに近づいてその手を掴み


「私服のツバキなんて滅多に見られない。その格好のまま後ろから犯らせてくれよ」


 その言葉を聞いてツバキの表情が淫蕩になる。


「いいわ。このまま好きに犯して」


 掠れた声でリンドウを見つめ返しながら言うツバキを部屋の壁に両手をつかせて立たせるとその背後に立って一気にタイトスカートを腰まで捲り上げた。




 結局その日はほぼ一晩中抱き合っていた2人。明け方に少し眠って今はキッチンで朝食を食べた後のコーヒーを飲んでいる。


「リンドウはこれから眠れるでしょ?私は仕事なのよ、いやだな」


「嫌なら休んじゃえよ」


「そうしたいところだけど昨日聞いた話も本部に報告しないといけないし。おそらく今日はオフィスでコーヒーばかり飲みそうよ」


 ツバキは一旦自宅に戻って着替えるとオフィスに顔をだし、すぐにレポートを作成してハンター本部に送信する。


 しばらくしてハンター本部からもう少し話を聞きたいとのことでツバキと本部とでオンライン会議となった。その会議で再度ツバキがリンドウから聞いた内容を説明する。


「つまりマシンガン獣については決められたプログラムでの攻撃、あのタイプだと500、300、100メートル。それ以外では攻撃してこないということだな」


 PCの画面の向こうには本部の担当者数名が座っていてその中の1人が聞いてくる。


「ええ。リンドウの話しだとその距離になると背中にマシンガンがなくてもその場で止まってそしてまた動き出したと言うことだから」


「パターンが決まっているとなると対応は楽になる。1体しか検証してないが、それでもわかった情報はハンターで共有した方が良いだろう。本部から通達を出そう」


 その言葉に頷くツバキ。そして別の本部の担当者が


「それにしても3,000メートルで大型機械獣の背中のマシンガンの台座を狙い撃ちして吹き飛ばしたか。流石にリンドウだな」


「本人はマシンガン獣は動きが遅いから楽だったと言ってましたけどね」


 ツバキのその言葉にやっぱり規格外だとかハンターの中でも奴はトップ中のトップだろうしなという声が聞こえてくる。


「そしてわざと近づけさせて挙動を見て検証する。リンドウは超がつく一流のハンターに相応しい男だ」


「おっしゃる通りです」


 自分が惚れている男が本部から褒められて嬉しいがそれを顔に出さない様に注意しながらツバキが簡単に答える。

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